2014年07月01日

◆成長のボールは民間のコートに

〜東京大学大学院教授・伊藤元重〜

<2014.7.1 03:15 [産經新聞:正論]

 政府の成長戦略が発表された。法人税率の引き下げ、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の運用見直し、農業改革、混合診療の拡大、労働時間規制の緩和など、過去の政権の成長戦略に比べると多くの分野で踏み込んだ改革案が盛り込まれている。

過去の多くの政権でも規制緩和や成長戦略が行われてきたが、大きな成果を上げることができなかった。今回もまた同じことの繰り返しなのかそれとも今回は違うのか。

 ≪1年半で様変わりした経済≫
 
成長戦略や規制改革が経済成長に及ぼす影響を考える際には少なくとも3つのポイントがある。

 (1)日本経済を動かすのは政府ではなく民間部門である。政府の政策の中身もさることながら民間部門が動くかどうかが鍵となる。

 (2)政策にマジック(魔法)はない。何か画期的な政策によって経済が見違えるように変わるということを期待してはいけない。重要なことは、必要な改革や政策の手数を着実に打っていくことだ。

 (3)成長戦略が有効に働くかどうかは、その時のマクロ経済の状況に大きく依存する。デフレ下ではどのような成長戦略も経済を大きく動かすことにはなりにくい。

 まず、3番目のポイントから説明しよう。アベノミクスの成長戦略で重要なことは、最初の2つの矢である金融政策と財政政策でデフレ脱却の道筋をつけたうえでの成長戦略であるということだ。

 安倍晋三政権の1年半で、成長率、企業収益、失業率、物価や賃金の上昇率などで、経済状況は様変わりしている。こうしたマクロ経済環境の中でこそ成長戦略が有効に働くことになる。例えば、デフレの下で法人税率を下げても、残った利益は企業の内部留保にとどまる可能性が高い。

しかし、経済の拡大期の今であれば、法人税減税は賃金引き上げや投資拡大などにつながる可能性が大きい。
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック