2014年07月17日

◆岸田はケリーに「釈明」する必要無い

杉浦 正章




朴の対中軍事傾斜の危険を指摘せよ
 


韓国による対米宣伝が利いたと見えて、米国務長官ケリーが日朝接近におかんむりである。来週急きょ外相・岸田文男が訪米して釈明することになったが、よい機会である。


岸田は日米韓の結束を乱しているのは、習近平の手のひらで踊っている大統領・朴槿恵であることを指摘すべきである。


とりわけ習・朴会談で日本が行おうとしている集団的自衛権の行使容認に一致して反対した点を取り上げ、朝鮮半島有事が日本の後方支援なしでは絶対になり立たない構図にあることを強調すべきだ。そして、朴の中国への軍事的接近に歯止めをかけるべきである。


米国は拉致問題について国務省のサキ報道官が5月の段階で、日本政府から事前に連絡があったことを明らかにしたうえで、「透明性のある方法で拉致問題を解決するため、日本の取り組みを支援していく」と好意的な発言をしていた。


外務省が連絡を密にしていた証拠である。ところが15日になって、さる7日の岸田とケリーの電話会談でケリーが「日本だけが前に出るのは望ましくない。北朝鮮の核やミサイルの問題を巡る日本とアメリカ、韓国、3か国の足並みが乱れかねない」などと懸念を表明したことが明らかになった。


ケリーはさらに「日米は同盟国だ。北朝鮮との交渉については透明性をもって、事前にきちんと相談してほしい」「首相が訪朝することを検討する場合についても、事前通告ではなく、相談してほしい」とクギを刺したという。


この米側の急変はどう見てもつじつまが合わない。どうも背景には韓国の対米工作、朴得意の「言いつけ外交」があったと見られている。


岸田は、拉致問題の解決が日本の悲願であり、国務省とも連絡を取った上で拉致問題を進展させてきたことや、「拉致、核、ミサイル一括解決」の方向に変わりがないことを説明することになろう。制裁解除も日本独自のものに限られていることを強調する。


首相・安倍晋三の訪朝についても未定であることを説明することになろう。さらに加えて説明すべき点は、2008年以来中国主導で行われてきた6か国協議が、中朝関係の冷却化で実現が不可能である点を指摘し、拉致問題解決が朝鮮半島の緊張緩和の突破口となり得ることを強調すべきである。


さらに加えて最重要の問題は、朴槿恵の対中接近で中国が日米、日米韓分断に成功しつつある点を指摘すべきであろう。


とりわけ集団的自衛権行使容認の閣議決定に関して、中韓首脳会談で「一致して憂慮を表明した」と大統領府が発表したことを看過すべきではない。これは経済関係で切っても切れない関係にある中韓が、安保問題での協調に踏み込んだことを意味するからである。


中韓は共同軍事演習まで行う予定であると言われ、明らかに北東アジアの安保構造が変化の兆しを見せていることに他ならない。


北との関係が悪化しているとはいえ、中国が北を見捨てることはあり得ない。中国は国境まで米国の影響が来ることは避ける戦略を基本としている。金正恩もできるできないは別として、核ミサイルの開発で米国をどう喝しつつ、朝鮮半島を北のペースで統一する機会をうかがうのが基本戦略だ。


従ってミサイル発射も、核開発もやめないだろう。こうした中で朴が、集団的自衛権の行使という「日米同盟の強化」を批判する限り、韓国は対中軍事接近しか道がなくなることに思いが到らないのだ。集団的自衛権の行使容認を習と一緒になって批判することの危険性が分かっていないのだ。


日本は、朝鮮半島有事の際には、決定的に重要な戦略上のポジションを占める。国連軍の後方司令部は座間にあり、米海軍、空軍は日本の基地から発進するしかないのだ。その日本の集団的自衛権の行使を批判するのは、たこが自分の足を食らうのに等しい愚挙なのだ。


このような安保構造は朴槿恵の理解能力の範疇(はんちゅう)を越えるのだろう。


おそらくケリーもこの構図への深い理解に到っていない可能性がある。言われているように韓国の“工作”に乗って、拉致問題での懸念を表明したとすれば、余りに発言が軽い。


岸田は釈明に追われるのではなく、北東アジアにおける米戦略が、朴の対中軍事接近で危機的状況にあることを強調して、米国が対韓圧力を強めるときであることに思い至らしめる必要がある。

    <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)
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