2014年07月28日

◆ビーフステーキの思い出

前田 正晶


アメリカでは確かにビーフステーキ(=beef steak)は良く食べた。これは必ずしも「それが美味である」とか「好みであるから」という理由ではなかった。

では何でかと言えば、カイロプラクティックの野路秀樹先生に「牛肉は人を奮い立たせる要素がある食べ物だから、長期の出張中に疲労感が出てきたら食べると良い」と教えられていたからだった。

既に述べたように私は「アメリカのステーキが美味くない」というのは必ずしも正しい説だとは思っていない。勿論、人にはそれぞれの好みがあり、我が国で一般的な綺麗なサシが入った軟らかい肉が良い人もいれば、アメリカ風の量が多くて少し噛み応えがある肉を良しとする人もいるものだ。

1975年だったかに、都内で時間の関係で今となっては懐かしき"Volks"に何の事前の説明もせずに、ボスを案内したことがあった。彼はそのステーキにたれをかけて食べていた私に「何という無駄なことをするのか。これほど柔らかくて美味い肉はそのまま食べてこそ価値が解るのだ」と言って賞味していた。これぞ毎度お馴染みの(食の)文化の違いだと痛感した。

アメリカではヒレ(fillet)よりも脂身があって噛みやすいと思っていたサーロイン(sirloin)を多く食べていた。量は黙っていれば概ね1ポンド(0.4536キロ)だと思っている。これは我々にとってはかなり多めで、馴れないうちは食べきるのに苦労したものだった。しかし、気力を回復する効果があったと信じている。

Tボーン・ステーキ(T-bone steak)も時偶楽しんだ。これはT字型の骨の両側にサーロインとテンダーロインが付いているもので、1人で食べきるのはかなり大変だった。しかし、これらのステーキの値段は先ず我が国で食べるもものの50〜60%であるから、その数量からすれば割安だと思っている。

アメリカのステーキでも「これは美味だ」と味わったのが「シャトーブリアン」(chateaubriand steak)で、確か2人以上いないと注文出来ないと記憶する。初めてその機会を得たのが、ワシントン州にある軍隊の基地内の将校以上専用のOfficers Clubだった。その威容にも圧倒されたが、「ナルホド勧められただけのことはある」と味わった。

次ぎはステーキ関連の話しであるが、味のことではない。1980年代に入った頃にカリフォルニア州のナパヴァレーにサンフランシスコ営業所長の別宅に案内された後で、その地方のレストランに食事に行こうとなった。そこは予約無しに訪れたのだったが、「幸運にも丁度テーブルが空いたところだ」と何故か所長夫妻は感激していた。そこは石焼きステーキのレストランで、結構美味いステーキと(当時は少しは飲めたので)カリフォルニアワインを堪能した。

しかしながら、夜だったので自分がどのような建物にいたのか知らないままに食事の後でサンフランシスコ市内に向かった。すると、そこには空港があって多くの小型機が離着陸していた。ナパヴァレーのローカル空港だった。所長夫妻は「あの飛行機は石焼きステーキを食べに来る人たちのもので、飛行機で来るほど価値があると言うほどの人気だ」と説明してくれた。矢張りアメリカはスケールが大きいのだとひたすら感心させられた。しかし、このレストランは今や廃業したと聞いている。惜しいことをしたものだ。

イタリアに話しを移そう。1999年にたった一度だけ訪れたイタリアだが、出発前にイタリア駐在経験がある商社マンに「何処で何を食べれば良いか」と教えて貰った。その時に貰ったメモに "Bistecca allaFiorentina" とあった。即ち、「フィレンツエに行ったらお試しを」ということだった。パック旅行で、フィレンツエではホテルの外に食べに行く時間の余裕がなく、ダイニングルームでそのメモを見せて注文した。

この「ビステカ・アッラ・フィオレンティーナは言うなれば T-bonesteak のイタリア版で、肩ロースのステーキのことだった。その量は家内と二人に丁度適量(大量?)で味は流石と思わせてくれた。貴重な経験だった。

最後に、アメリカのステーキの悪用法(?)をご紹介しよう。それは(ここだけの話だが)アメリカをご案内して差し上げるお客様の中には我々アテンド(attend)即ち「お世話する」側を苦労させて下さる方がおられることがある。そのような場合に最後の夜などに「折角お出でになったのだからアメリカのステーキを賞味されては如何」とお薦めする。

さらにその前に私は通常「ハーフ・サイズ」を注文するシーザーサラダ(Caesar salad)や、大きなバケツが出てきたかと思わせられる「アサリの酒蒸し」(steamed clams)を前菜に注文して差し上げるのだ。ここまでで先ず100%以上の満腹となる。そこで500グラムのステーキが出てくるのだ。しかもその前に「アメリカでは食べ残しは非礼である」などと申し上げておく。

そしてお客様が全部食べきるために悪戦苦闘される様子を横目に見て、自分の適量のステーキを楽しんでいたものだった。これは決して意地悪ではなく、これらの三品はどれをとってもアメリカならではの美味い食べ物で、我が国では味わえないものだと確信している。もし問題があるならば、一寸分量が多いことくらいかな。

この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック