平井 修一
軍事ブロガーのdragonerさんのレポート「元艦長に聞く、潜水艦の世界」講演要旨(8/9)から。小生のまったく知らない世界。マスコミも同様。陸、空の防衛を紹介してきたので今回は海の防衛。とても興味津々、勉強になった。
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7月19日、神保町の書泉グランデで、「中国の海上権力 海軍・商船隊・造船〜その戦略と発展状況」の出版を記念して、著者の山内敏秀氏の講演会が開かれました。
山内氏は海上自衛隊入隊以降、潜水艦畑を歩まれてきた方で、潜水艦についての著書も出されていますが、今回は中国の海上権力についての本を出版されました。その出版記念で、著書の内容とはいささか異なりますが、御自身が艦長まで経験された潜水艦について語って頂くという企画です。
潜水艦の情報は限られているだけに、またとない機会だと行ってきました。潜水艦の運用から、最近話題のオーストラリアとの潜水艦協業、あるいは中国海軍の潜水艦という話もあり、中々耳にしない情報なだけにこちらにレポを残したいと思います。
【講演要旨】
潜水艦乗りが共通して持つ感性は何か。それは音に敏感な事。(dragoner注:音の話ばかりです。これ重要)
*P-3C導入時のエピソード
P-3C(平井:ターボプロップ哨戒機、日本では1981年から運用)が導入されて間もない頃の訓練で、敵役の潜水艦1隻が4回くらい訓練で撃沈判定を受けた。あまりに悔しかったので、P-3C乗員を飲み屋で酔い潰して聞き出した所、原因が判明した。
無音潜航にも種類があって、それ以前も無音潜航、哨戒無音潜航等があったが、P-3Cの一件以後は「特別無音潜航別報」(なんでもかんでも停止)という無音潜航を作った。
*同じモーターでも違う音がする
同じメーカーが作った、同じモーターでも駆動音が違う。音の違いで艦が分かってしまう。特別無音潜航別報が発令されたらなんでもかんでも止める。潜水艦で特別無音潜航すると、食事係まで連絡がいく。無音潜航する間に食べる量の食材を出して、あとは倉庫・冷蔵庫・冷凍庫を密封する。
*特別無音潜航で開けっ放しになるドア
艦内の床には無音シートが敷き詰められている。そして、艦内の部屋のドアは開けっ放しにして、動かない様にロックする事で開け閉めの音を出さないようにする。乗員の私物なども皆固定する。
スイムダイブ(出港後、一番最初のダイブ。「スリム」かもしれない)で急速に潜航し、一番深いところまで入る。水圧により船体の軋む音が聴こえるが、水圧により船体が弾性変形している音なので、聴くと安心する。急速に潜航するので船体が大きく傾くが、私物でコーヒー缶を持ち込んだ隊員がいて、固定不足で転がり、ガランゴロンと船内中に響いた。
*音でどこまで分かるか
マンガでシャーシャーというスクリュー音の擬音があるが、あれは意外と正確。1分間に何回音を聞くかで、商船か軍艦かを推測できる。3枚スクリューの商船の場合、1分間に聴こえた音の数を3で割ると軸の回転数になる。
ソナー員によれば、この船はプロペラの先が欠けている、この船はエンジンの調子が悪い、という事まで分かる。
*「マダイが愛を囁いている」
海には魚鳴音(ぎょめいおん)が多い。魚の鳴き声のことで、海ではいろんな魚が鳴いている。ソナー員がある時こう報告した事がある。「マダイが愛を囁いている」。
魚は敵がいる時の鳴き声、エサがいる時の鳴き声で違う声を出している。
「カーペンターフィッシュ」と潜水艦乗りに呼ばれる魚鳴音があるが、何の魚なのか判らない。カーペンター(大工)なのは、大工がカナヅチを叩いているような音から。アメリカの潜水艦乗りに聞いても、「あれはカーペンターフィッシュだ」という答えだった。
*トランジェントノイズ
音の分析にはある程度の長さの時間が必要だった。1分間の中に音が入ってくれないと分析できないので、突発的な音の分析手法に悩んでいたが、ある分析手法を考えて解決した。
この時期(7月)の対馬海峡でよく聴く音があり、正体が判らないのでDAT(平井:デジタル・オーディオ・テープ)に録音して分析した。正体はハゼの仲間が浮袋をふくらませて、メスをおびき寄せる音だった。
*中国の潜水艦の音
本に中国の潜水艦のことも書いた。中国の潜水艦も止まる時は静かになる。走っている時は「闇夜に金太鼓鳴らしている」くらいの音。
漢級潜水艦が領海に侵入した事件があったが、あれは漢級が母港を出港した時点で日米は分かっている。
2009年にアメリカの音響観測艦インペッカブルに中国船が接近して妨害した事件があったが、あれはインペッカブルによる中国の晋級弾道ミサイル潜水艦の音紋調査だった。
晋級の音は隠し切れないので、中国船が近くで騒いで周囲雑音を作り出す事で音紋調査を妨害していた。(平井:インペッカブルに中共がなぜ拒絶反応したのか、少なくとも日本のマスコミはまったく報じなかった)
商級の攻撃型潜水艦が配備された頃、横浜のノースドックに短い期間で33回、米海軍の音響観測艦が来た事があったが、ある日突然全艦いなくなった。(平井:音紋調査が終わったのだろう)
夏級の音は160db(デシベル)もある。鉄道橋の下で100dbなのだから、これはものすごい音。(平井:中共海軍が何を潜水艦に期待しているのか全く分からない。暴走族みたいに賑やかに存在を誇示したいのだろうか)
*海上自衛隊の潜水艦の低騒音化
海自でも潜水艦の雑音低減対策をしてい。ハード的な低減法は幾何級数的に費用がかかってしまい、あるレベルを超えると1db減らすだけでとんでもない費用がかかる。
音を海中に伝播しないようにするということは、船体と海の間を切ってしまう事だ。
音の研究について、少なくとも2000年前後は自動車業界が一番進んでいた。協力を求めようとしたが、トヨタは敷居(平井:ハードル)が高いので見せてくれない。ゴーンが来る前の日産はおおらかで、同じ横須賀同士という事で見せてくれて、音の収集・分析ノウハウを頂いた。(平井:日産は名前どおり愛国的?)
潜水艦の音の出処を調査したところ、通風器を固定するボルトが長すぎて船体にあたり、通風器が回転するとボルトを伝って音が艦体から水中に出ていた。これは建造した造船所に行って、修繕工事をさせた。
今の海自の潜水艦はフローティングデッキ(音的に宙に浮いてしまった、船体と切り離された構造)を採用しており音は小さい。今はいかに海中に雑音を放射しないかが焦点。
水上艦も含め、ある一定の期間を過ぎるとどういう音が出ているかを検査する。1000ヘルツ以下の音が遠くまで伝播するので、調べられている。
*艦長になっていいこと
艦長になると自分の都合で艦橋に降りたり出たりする事が出来た。しかし、艦長は寝れない。艦長は潜水艦でたった1人の1段ベッドだけど、それでも寝れない。
水上艦と違い、潜水艦では艦長が戦術単位の指揮官。今は衛星電話があるので、直接司令部から命令がくる。昔は電報を受信出来なかった事にすることもあった。(平井:知らんぷりして眠れた、ということか)
【質疑応答】
質問:帝国海軍の潜水艦には軍医が乗艦していたが、海上自衛隊ではどうなのか?
医者はいないが、看護長はいる。看護長が薬事法違反だが、薬を出している。薬事法違反になるので麻酔は使えなかったので、指を裂傷した人を4人で押さえつけて縫った事がある。
ただし、アメリカでの訓練等の長期航海に出る時は、医官が臨時勤務で乗艦する。
冬場には風疹で困る事があった。艦内に感染症を持ち込まれるとすぐに広まる。酷い時は半分がインフルエンザでやられた。風疹で副長がヘリで運ばれた事もある。
質問:オーストラリアへの潜水艦輸出が最近言われているが、(豪州は)どういった所を魅力に感じているのか。
海上自衛隊の潜水艦より静かな潜水艦は原則ない。外に(平井:音響が?)伝搬する通路を全て切ってある。
また、ヨーロッパの潜水艦は北大西洋の冷たい海で活動しているが、日本の潜水艦は寒い所から温かい所まで活動している。南の海でシュノーケルで外気を入れると、室温が42、3度、湿度100%。コンピュータがダウンしたこともあった。今は改善している。(平井:それらが豪州から評価されているのだろう)
質問:原子力潜水艦を持つべきだと思いますか。
潜水艦である程度秘匿性を保ちつつ推進出来るのは15ノット以下。原子力潜水艦は機関を止めても、高温高圧蒸気のパイプの音は決して消す事が出来ず、通常潜に比べ静音性に劣る。
フォークランド紛争でイギリス海軍が費やしたリソースの大部分は、アルゼンチン海軍の通常動力潜水艦を警戒した膨大な対潜努力。このロス(投資)が測りきれない効果を持つ。(平井:対潜を含めた対艦努力の主役は潜水艦だった。この詳細は次回に)
質問:(防衛省の)潜水艦の増勢の方針についてどう思われますか。
元潜水艦乗りにも喜んでいる人がいるが、喜べない。潜水艦要員養成の事を考えていない。
潜水艦16隻は重要海峡に3ローテーションで貼り付ける為という理由付けがされているが、今回の増勢でもそうなのか。
防大60年の歴史で、潜水艦適性があるのを優先して採ったのは私がいた防大14期のみ。潜水艦教育訓練隊の物理的な能力拡充無しに潜水艦拡充が決まっている。(平井:整合性がない、ということか。適性というのは、気圧や酸素濃度変化への耐性、狭い世界での他者との融和性などのようだ)
質問:中国の潜水艦について。
中国の潜水艦は海底のドロ巻き上げながら高速で動いている。黄海の水深4、50メートルのところを、海底から10メートルで高速で突っ走っているので、潜水艦が通ると、海底のドロを巻き上げ黄色い帯が出て空から分かる。
潜水艦に関しては中国海軍のやっていることが分からない。何の脈絡もない。(平井:武器を持てさえすればいい、という鎮遠、定遠的なままなのか、理解しがたい)
中国では「上に政策あり、下に対策あり」という言葉があるが、上のベストチームがやったものは素晴らしいが、下の造船所に降りると同じ潜水艦でも悪くなるという事があるのではないか。
しかしながら、要員養成は間違いなく中国の方が日本よりちゃんとやっている。
また、中国PKOやリビアからの自国民避難など、これまで独立して動いていた中国海軍が、外交部や交通運輸部、商務部と連携をとるようになった事は注目される。(以上)
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ウィキで調べたところ、海自の通常動力型潜水艦は16隻(約4万5000トン)。潜水艦隊隷下の呉基地と横須賀基地の2基地に配備されている。通常は海上自衛隊の対潜水艦戦の訓練目標として、作戦行動中は戦争抑止力として活動している。
通常動力型潜水艦は、原子力潜水艦と比較して、静粛性に優れ、建造費及び運用費及び廃艦の処分費が安く、放射能関連の事故や汚染の心配も無く安全で、取り扱いや処分も容易である。
このように原子力潜水艦とは異なった点で数々のメリットがあり、原子力潜水艦の登場以降も世界各国で建造され、運用されている。
哨戒機は、航空集団隷下の基地で哨戒任務に就いており、機動力を生かして広大な日本周辺海域を哨戒している。諸外国の潜水艦、艦艇の領海侵犯、排他的経済水域における日本国の主権の侵害行為に対して常時警戒体制を敷いている。4箇所各約20機の飛行群を配備している。
日本の対潜水艦戦の能力は米国に次ぐ世界第2位の規模と能力を持っており、また、活動面積に対する対機雷戦能力は世界最高水準にあるとされる。
平井思うに、敗戦から70年の今は、米国の助っ人として友好国に安保支援をする時代になったのではないか。日はまた昇る、昇らないと中共にやられる、そんな危機感を持っている。(2014/8/14)