2014年08月16日

◆オスプレイ佐賀配備の意義

原慎平奥

 
防衛省は7月22日、陸上自衛隊が導入する垂直離着陸輸送機MV22オスプレイ全17機を佐賀空港(佐賀市川副町)に配備すると正式に表明し、佐賀県側との協議に入った。

南西諸島防衛で抑止力を高める効果だけでなく、台風や豪雨などの被害が多い九州地方における災害派遣での活躍も期待されるが、地方紙は懐疑的な見方に力点を置く論調が目立った。

陸自は平成30年度までに離島防衛・奪還作戦の主軸となる「水陸機動団」を新設し、長崎県佐世保市の相浦駐屯地に配備する。オスプレイは、水陸機動団の人員と物資の輸送という重要任務を担うことになる。

産経は社説にあたる7月25日付「主張」で、「『安保』と『災害』に有益だ」との見出しで、佐賀空港へのオスプレイ配備の意義を安全保障上の観点からこう評価した。

「自衛隊の離島防衛能力が格段に高まり、紛争を未然に防ぐ抑止力を大幅に向上させることになる」

「『水陸機動団』と連携する態勢が整えば、尖閣など南西諸島防衛に大きく貢献し、朝鮮半島有事で米軍を支援することもできる」

佐賀空港は、相浦駐屯地と距離にして55キロ、オスプレイで飛行すればわずか7分間の場所に位置する。九州・沖縄の防衛、警備を担う陸自西部方面総監部のある熊本市の健軍駐屯地も近い。有事の際の即応性が発揮される場所だ。

産経は安全保障だけでなく「災害派遣上も重要なものだ」と指摘した。昨年11月、大型台風の被害を受けたフィリピンへ、普天間飛行場(沖縄県宜野湾=ぎのわん=市)の米海兵隊がオスプレイで支援物資や避難民輸送に活躍した事例を紹介した。

オスプレイは巡航速度が速く、離着陸に滑走路を必要としない。九州は数多くの離島を抱えており、本土への救患輸送や災害救助に大きな役割を果たすと期待されている。

東アジアの緊張高める?

九州の主要地方紙は、佐賀空港へのオスプレイ配備問題をどう論じたのか。西日本、佐賀、南日本、熊本日日、長崎の5紙が社説で取り上げた。

なぜ佐賀空港を選んだのか安全性・騒音への懸念はないのか、国は地元に対して詳しく説明すべきだ−。5紙の社説はおおむね、こうした疑問と主張を展開した。

ただ、ずさんな調査で作成された慰安婦に関する政府の河野談話の検証や、集団的自衛権行使を限定的に容認した政府の閣議決定に猛然と反対した姿勢とは異なる対応も見せた。

「選挙目当ての負担軽減か」(熊本日日)と11月の沖縄県知事選と絡める地方紙もあったが、「『沖縄の基地負担軽減』と言われてむげに断ることもできない」(佐賀)と、頭から反対できない苦しい胸の内を明かすところもあった。

西日本は、「なぜ佐賀か説明を尽くせ」との見出しで、佐賀空港について「県・市が軍事利用に否定的な見解を表明してきた経緯も見逃せない。地元に方針転換を迫るのなら、政府は空港の将来像をもっと具体的に語るべきだろう」と注文をつけた。

武田良太防衛副大臣は7月22日、佐賀県庁を訪れ古川康知事にオスプレイの佐賀空港への配備に理解を求めた。産経も同じ視点で「地元側には唐突な印象もあるようだ。なぜ佐賀空港なのかや、国民の生命財産や領土を守るためにオスプレイが果たす役割について、政府は丁寧に説明すべきだ」とした。


しかし、産経と比べ、九州の地方紙が大きく異なるのは、オスプレイが安全保障や災害派遣で果たす役割よりも、オスプレイ配備が東アジアの緊張を高めるとの論調や、事故の危険性に力点を置いている点だ。

5紙の中で、オスプレイ配備に最も強い懸念を示したのは長崎だ。

森永玲氏の署名入り論説で、オスプレイが、水陸機動の部隊輸送を担うことについて「西九州が“有事の出撃基地”と位置付けられていくようだ」とし、「安倍政権の打つ手がことごとく、東アジアの緊張を高める方向に働いている」「隣国との関係回復の道筋を示せない政府が、“勇ましい”態勢づくりだけは着々と進める現状に不安を禁じ得ない」と批判した。


しかし、「中国が地域を不安定化させている」(ヘーゲル米国防長官)との見方が国際的な共通認識であり、東アジアの緊張を高めているのは、領海侵犯を繰り返し、一方的な防空識別圏を設定した中国だ。

長崎の論調は、安倍首相を「軍国主義の道に進む」(中国人民解放軍の王冠中副総参謀長)と批判する中国軍部の発言と重なって映る。ホワイトハウスも導入

長崎と西日本は、オスプレイの安全性についても懸念や疑問を表明した。

西日本「開発段階から事故やトラブルがあり、実戦配備後も安全性が懸念されている。この解消を政府は最優先にすべきだ」

長崎「日本で目立った事故は起きていないが、この機種の安全問題が決着しないまま、導入することに対する疑問は消えない」

確かに開発段階から導入初期にかけて操縦ミスを含めた事故が相次いだ。

長崎は、「安全問題が決着しないまま自衛隊が導入することに対する疑問は今も消えない」とする。

しかし、防衛省作成の資料(平成24年9月時点)によると、陸自が導入するオスプレイ(MV22)の10万飛行時間当たりの事故件数を示す事故率は1・93。米海兵隊航空機全体の平均2・45と、自衛隊の大型輸送ヘリCH47の事故率3を大幅に下回る。

米首都ワシントンでは大統領同行の補佐官や警護官が移動の際にオスプレイを使用する。米大手シンクタンクでオスプレイの専門家であるウィトル上級専門員は、「危険な航空機をホワイトハウスが導入するはずがない。軍用機に100%の安全性を求める方がナンセンス」と語った。


西日本、熊本日日、南日本の3紙は、政府の狙いは11月の沖縄県知事選にあるとの見方を示し、政治問題と絡めて報道した。

西日本は「もし選挙絡みで沖縄の基地負担軽減に努力する姿をアピールする狙いがあるとすれば浅慮との批判は免れまい」と主張した。熊本日日は「安倍政権が知事選をにらんでいることは明らか」などとした。

九州の地方紙は、おしなべてオスプレイ配備に強い懸念を抱いている実態が浮かび上がる。

ただ、佐賀県に寄せられた県民の意見は「南西防衛に有効」「沖縄の負担軽減に役立つ」など賛成が99件で、反対は95件と賛成派がわずかに上回っている(7月31日時点)。

米軍普天間飛行場の移設先である辺野古沖(名護市)の埋め立て申請について、仲井真弘多知事は「国際情勢は県民の意思に関係なく緊張している」ことを承認した理由に挙げた。佐賀と隣接の福岡県も同様に、大所高所の判断が求められる。
    
               ◇

【オスプレイ】 ベル社とボーイング社が共同開発した米軍輸送機の通称。空軍の特殊作戦用のCV22と、米海兵隊の人員・物資の輸送を目的とするMV22の2機種がある。

主翼両端に回転翼があり、その角度を変えることでヘリコプターのような垂直離着陸や空中停止と、飛行機のような水平方向への高速飛行の両方が可能。時速約500キロ、戦闘行動半径約600キロで、それぞれ従来型輸送用ヘリの2倍と4倍の能力を誇る。
            産経ニュース2014.8.15


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