2014年08月20日

◆「核」が日中開戦を抑止する(68)

平井修一


「中国の挑発は先手を打って食い止めよ」という論考が米国で話題になっていると古森義久氏が報告している(JBプレス8/13)。以下は要約。
         
            ・・・

アジアでの米中関係のこうした(サラミ戦術による中国の進出拡大の)現状に対し、オバマ政権の発想の根本を変える新提案が、7月末にワシントンで公表された。提案したのは、中国研究者のロバート・サター氏である。

サター氏は国務省、中央情報局(CIA)、国家情報会議、議会調査局などの中国関連部門で専門官として中国の動向を調べ、その意味を分析し、米側の対応策の決定に関与してきた。

しかも、民主、共和両党の政権に加わり、政治的にも党派性の薄い専門家として知られる。退官後はジョージタウン大学教授を経て、現在はジョージワシントン大学の教授を務める。

米国政府の各機関で30年以上も中国研究に基づく対中政策の形成に関わってきたサター氏は、米側の中国研究者たちの間でその名を知らない人はいない著名な研究者である。

そのサター氏が今回発表したのは「米国にとってのアジアでの中国問題への対処――中国の弱点を標的とせよ」と題する論文だった。この政策提言はインターネットでまず公表され、まもなく同氏が出版する著書の中で詳述されるという。

*中国の弱点を突いて膨張主義に歯止めを

サター氏は論文の冒頭でまず以下の諸点を強調していた。

・中国は近年、軍事力を背景に、アジアで海洋領有権を少しずつ確実に広げ、米国の信頼性や影響力をサラミを削ぐように低下させ、同盟関係を弱めている。しかしオバマ政権は、日本など米国の同盟諸国の独立、主権、安定への懸念が深まる状況に対して、実効性のある政策をほとんど取っていない。


・中国の「サラミ戦術」の挑発的な行動にただ単に対応するという現在のオバマ政権のパターンは危険かつ不毛だとする意見が、デニス・ブレア元太平洋統合軍司令官、連邦議会の国家安全保障関連の議員たち、他の官民の中国関連専門家たちなどの間で、非常に強くなった。

・これらの識者たちは、米国はこれまでの受け身の対応型の政策を止めて、中国に膨張政策の代償や危険を悟らせるための積極果敢な新政策を採用すべきだとしている。米国のアジアでの影響力を削ごうとすれば必ず反撃や反発を受けることを、中国に自覚させなければならない、という主張が広まってきた。


・中国のこれまでの膨張政策は、米国の弱点を巧みに突くというケースが多かった。それに対して米国側も中国の弱点や欠点を突き、中国の膨張能力を削ぎ、しかもその種の膨張に対して米国から強固な反撃を受けることを中国側に知らしめねばならない。

・米国は中国の弱点を標的とする積極果敢な措置を取る一方、従来の対中関与政策は継続する。中国が米国のアジア態勢を侵害する措置を取った場合、中国にとっての損失や代償、リスクも高くなることを自覚させ、抑止とする。つまり米国も中国同様にポジティブとネガティブをミックスした政策を取るべきである。


*新たな対中戦略の5つのポイント

サター氏はこうした前提を明らかにしたうえで、新たな対中戦略として以下の5つの具体策を提唱していた。いずれの策も大幅な予算増や米国の安全への大きな危険を伴わずに実行できるという。

(1)東シナ海と南シナ海の紛争海域で、米軍の攻撃型潜水艦と弾道ミサイル搭載潜水艦を増強し、頻繁に浮上させて、中国側の艦艇や地上基地への攻撃能力を誇示する。

これら米軍潜水艦は紛争海域で中国軍に探知されずに航行することが可能であり、しかも同海域での有事の際に、中国側の艦艇を一気に壊滅できる破壊力を有している。中国側は潜水艦戦力や対潜能力が米側より大きく劣ることを十二分に認識しており、対応策に苦慮する。

(2)台湾への安全保障関連支援を強化する。例えば、オバマ政権はこれまで拒んできたが、台湾政府が切望するF16戦闘機66機を新たに供与する。

中国は近年、台湾への軍事的優位を強め、国民党政権の親中路線により、台湾問題の比重を減らしてきた。米国が軍事支援を再強化することで、中国は台湾制圧の軍事能力がまだ不十分であることを実感させられる。

同時に米国は、国民党政権の親中姿勢に反対する台湾国内の「ひまわり運動」への支持を表明する。中国に台湾への懸念を抱かせることは、海洋拡張を抑える効果があり得る。

(3)表現の自由などを求める香港での反中抗議運動への強い支持を明示する。香港問題は中国共産党指導部が神経を過敏にする対象である。

香港では、中国の主権を受け入れながらも、共産党独裁による言論の自由、結社の自由などへの抑圧に反対する動きが絶えない。米国政府がその反対運動を強く支援し、ハイライトを当てれば、中国政府は国際的にも不利な立場となる。

香港問題での米国との摩擦は、アジアで挑発的な行動を取ることの代償や危険性を改めて中国指導部に意識させることになる。

(4)危険な軍事挑発を続ける北朝鮮政権を中国が支援し続けることへの非難を強める。北朝鮮の好戦的な言動がアジア全体への脅威となっていることは周知の事実だが、北朝鮮のそうした言動を可能にする基盤として中国の支援が存在する。

中国と北朝鮮の不仲も最近は伝えられるが、基本的な絆は揺らいでいない。この点で中国の「共犯者」としての責任を追及することが、東シナ海と南シナ海での中国の強引な拡張主義を抑制する効果を生み出し得る。 

(5)中国は、在日米軍基地や周辺地域の拠点を標的として、非核の中距離弾道ミサイルを配備している。米国はそのミサイルへの具体的な対応策を取るべきである。

過去20年余、アジアでの中距離ミサイル戦力に関して、中国は米国よりも優位を保ってきた。米国はその状態を放置してきたが、中国のその種のミサイルを破壊する能力を新たに確保する。

米国はそのために、多弾頭の弾道ミサイルを本土、あるいは中国周辺地域に配備する。米側によるこの不均衡の是正は、ミサイル防衛能力の弱い中国への抑止となる。

以上、「潜水艦」「台湾」「香港」「北朝鮮」「中距離ミサイル」と、中国側にとっての欠点や弱点を選び、それらを標的として照準を合わせる攻撃型の戦略である。

これまでの消極的な戦略を積極的な戦略へと変えるという発想であり、こうした発想が表面に出てくること自体が米中関係が新たな局面を迎えた現実の反映だとも言える。 

これらの提案がいずれも日本の安全保障にも密接に絡んでいることは明白である。(以上)

             ・・・

中共・習近平はいつ暴発するか分からない。周辺諸国は準戦時体制で警戒すべきだ。(2014/8/18)
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック