2014年08月25日

◆日韓関係、新たな50年を

黒田 勝弘


“みそぎ”終えた朴大統領 

韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領が8月15日の「光復節記念演説」で日韓関係について初めて未来志向的な話をした。来年が日本との国交正常化50周年になるため、それに向け日本との関係を改善し「新しい50年」をめざそうというわけだ。

それには「日本の政治指導者の知恵と決断を期待する」といういつもの日本への注文はついていたが、それでもどこかホッとさせられた。大統領就任から1年半、個人的には期待が大きかったこともあって「彼女が反日であるはずはない、ここにきてやっと心がほぐれたか…」との思いだ。

朴大統領は国内ではいろいろな場面で国政のあり方として「非正常の正常化」を国民に約束し、訴えてきた。大統領就任後、これほど長期間、日本の首脳と会談しないというのは異例中の異例の「非正常」だ。一日も早く正常化してほしい。

1965年の日韓国交正常化は父・朴正煕(チョンヒ)大統領が心血を注ぎ、政治生命をかけて決断した。実現に際しては国民の強い反対を戒厳令で押さえている。過去の恨みは棚上げしたのだ。朴正煕は当時の心情を自著『民族の底力』(日本語版、1973年、サンケイ新聞社刊)でこう書いている。

「われわれとしては簡単には反日感情をぬぐい去ることができなかったし、解放以来ずっと反日教育および反日思想が強調されてきただけに、親日外交に対し一般国民、有識者、学生から強い反対がでてくることは十分にありうることであった。(略)そのようななかでもわれわれは、ただ遠い将来に目を向けて、国家の永遠の発展のためだとの信念の下に、日本との国交回復を進めていった」


余談だが、この本が出た当時、日本の多くのメディアは朴正煕政権に対し「暗黒の軍事独裁政権」として否定的だった。産経新聞がほぼ唯一、その経済発展と近代化を高く評価していた。朴正煕の著書など見向きもされない時代に、産経新聞社から出版されたのはそのせいである。筆者は他社(共同通信)の記者だったので当時の雰囲気をよく覚えている。

あれから40年、日本ではまた韓国に対する否定的見方が広がっている。今回は日本との関係悪化からだ。産経新聞も韓国の過剰かつ執拗(しつよう)な反日には批判的だ。しかし歴史認識の違いというすぐには解けない難題はしばし棚上げし、反日が目的ではない女性の人権、人道問題としての慰安婦問題ということなら、日本は韓国と手を握り、肩を組めると思う。

今回、韓国側で「日韓国交正常化50周年」の話が公式に出されたのは初めてだ。「日本との協力」という父の決断は、その後の韓国50年の発展の基礎になった。娘・朴槿恵大統領もまた、父のように将来を見つめた決断で、新たな韓国および日韓関係発展の50年を切り開くチャンスである。

朴槿恵大統領は中国での抗日義士・安重根記念館実現などで愛国者としての“みそぎ”は終わったと思う。父が受けたような「親日外交」という誤解の矢が飛んでくる恐れはもうない。躊躇(ちゅうちょ)せず一歩踏み出してほしい。(ソウル駐在客員論説委員)
産経【から(韓)くに便り】2014.8.24

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