2014年08月30日

◆ハンケチはどこへ行った

渡部 亮次郎


昭和29(1954)年の流行歌に岡本敦郎(おかもと あつお、1924年12月25日- 2012年12月28日))の歌う「高原列車は行く」というのがあるが、ここで歌はいきなり「汽車の窓からハンケチ振れば・・・」と歌っているもんだから、いまどきの人から「なんでハンカチをハンケチと歌うんだ」という疑問が呈せられている。

私は、これは日本人にいかに英語が影響しているかの社会現象だと思う。戦前生まれの日本人はハンカチなんか知らないし、仮に知っている人でも、これがハンカチーフという英語の略だとは知らなかった。

ただ高原列車の歌より4年も前の昭和24年に二葉あき子が歌ったのは「水色のハンカチ」となっている。藤浦は長崎県平戸、丘は福島県の生まれ。「ケ」か「カ」か、出身地の違いからではなさそうだ。

なるほど、なんでも取り上げて解説してみせるフリー百科事典『ウイキペディア』は「ハンカチ」を取り上げ、ハンカチ王子も取り上げている。

<ハンカチとは、ハンカチーフの省略形。ハンケチと称されることもある。手を拭く、汗を拭う等に使う、通常は四辺を一にする正方形の布。欧米では鼻をかむことに使われている>。

これではなぜ「ケ」ができたかがわからない。広辞苑は「ハンカチに同じとそっけない。ただ、1936年生まれの私は少年時代はハンカチを持とうにも戦争中の物資不足のため生産されておらず、言葉すら知らないで育った。

野球をやるときはベンチのタオルで拭いたし、高校に入ってからは日本手拭を小さく畳んで腰にぶら下げているのが普通だった。その昔、旧制の高等学校の生徒は、その手拭が常に汚く「醤油で煮染めたような」と表現された、とものの本で読んだ。

再びハンカチ。

<素材は綿、絹及び麻(リンネル)などが多い。近年の清潔志向を反映し、抗菌加工を施した素材も広く出回っている。ズボンやジャケットのポケットなどに入れたり、鞄に入れて持ち歩く。マジックにおける重要な小物の一つである。

2004年(平成16年)から2006年(平成18年)にかけてのイラク復興支援群などの派遣に際して、派遣自衛隊員の安全を願って黄色いハンカチを身につける運動が見られた。

2006年、第88回全国高等学校野球選手権大会の優勝校早稲田実業のエース斎藤佑樹が青いタオルハンカチで汗を拭くことから電子掲示板やマスコミから「ハンカチ王子」と呼ばれ青いハンカチが全国でブームになった。>

かまやつの歌にも出てくる。吉田拓郎作の『我が良き友よ』のよき友は腰に手拭をぶら下げてやってくる。決してハンカチで顔など拭かない。

戦前のサラリーマン(その頃は勤め人といった)がポケットに忍ばせたのは「ハンケチ」であって「ハンカチ」ではない。昭和30年ごろになってようやく英語教育が普及するようになると「ハンケチ」が実は「ハンカチーフ」という英語の略称と知るようになる。するともう「ハンケチ」とは発音できなくなった。

しかし「汽車の窓からハンケチ」と謳いあげた作詞家の丘 灯至夫(2009年11月24日、腎不全のために東京都内の病院にて永眠。92歳没)がこの歌を作詞する頃はハンケチがハンカチである事は知らなかったのではなかろうか。

それまでの日本人はハンケチすら持たずに手拭を常用としていたのである。

<手拭(てぬぐい、江戸弁・博多弁では、てのごい)は、手を拭いたり洗顔、入浴時に体を洗ったりするための木綿の平織りの布である。日よけや汗拭いなどの目的で頭にかぶることもある。

各種のものがあるが約90cm x 35cm程度の大きさで、白地に藍染による柄がある場合が多い。本来、日本古来のものを指すが明治時代に西欧からももたらされたタオルを含むこともある。特に区別する場合、日本手拭という言い方をする。

起源は明らかではないが、古くは手巾、江戸時代頃に手拭という言葉が使われるようになり庶民にも普及した。

現代日本での日常生活ではタオルあるいはハンカチの使用が多いが手拭が廃れたわけではない。

粗い平織りで長さのある手ぬぐいは吸湿性は劣るがタオル地の製品にはない利点があり、農作業、伝統芸能、祭、剣道などでのかぶり物、鉢巻、目隠し、汗ぬぐいなどとして、あるいは布巾として今なお利用されており、商店などの贈答品やイベントの際の記念品としての需要も少なくない。

近年、見直されいろいろな柄を和小物の店や手芸店で見ることができるようになった>(フリー百科事典『ウイキペディア』)ハンケチは死語になったがハンカチは盛んである。だが死んだと思われていた手拭も盛んである。

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