2014年08月31日

◆“石破騒動”に思うこと

佐々木 美恵


「網を打つには潮時がある、という言葉があるのを知っているか。石破は時機を見誤った。空振った網をうまく仕舞えるかだな」

石破茂幹事長の処遇をめぐる一連の騒動に対し、あるベテラン議員がこう、つぶやていました(ちなみに「網を打つには〜」というの発言のもともとの主は、岸信介内閣で官房長官を務め、「椎名裁定」の“故事”で知られる椎名悦三郎氏だそうです)。

 石破氏は29日、安倍晋三首相との昼食会で自身の処遇について「組織人としてトップの決定に従うのは当然」と述べて、首相の判断に委ねる考えを示しました。

 首相も、安全保障担当相を固辞して幹事長続投を希望した石破氏を無役にしたりせず、新設の地方創生相などの重要閣僚に起用する意向です。ひとまず対決モードは避けられたようです。

 ところで、石破氏は、党役員人事や内閣改造を行っている今のタイミングを、本当に「網を打つ潮時」だと考えていたのでしょうか。

 いたにせよ、いなかったのせよ、トップの人事権に異を唱えるような発言をすれば、勝負を仕掛けたと受け止められても仕方ありません。産経新聞のコラム「政論」にも書きましたが、石破氏はかねてから、来春の地方統一選で勝利することで、自民党の政権奪還は完成するとして強調してきました。

 政権交代を仕上げるまで「驕(おご)るな、緩むな」とたびたび党内を戒めていました。

 自民党が今度、政権運営に失敗したら「自民党だけでなく日本の終わりだ」と訴え、しっかり政権を支えようとも呼びかけてきました。

 いろいろ不平不満があっても結束し、選挙区を回って有権者の信頼を得ようと党内を指導してきたのです。なのに、なぜ自身で亀裂を生み発展かねない発言をしてしまったのでしょうか。

 また、石破氏からは安保相を固辞する理由として会審議で迷惑を掛けたくないといった趣旨の説明がありました。

 集団的自衛権の問題で国家安全保障基本法の制定を優先すべきだという持論を持ち、憲法観で首相と相違点があるからというわけです。石破氏は25日のTBSラジオで次のように話しています。

「仮に、総理と大臣は同じ考え方って一緒ですかときかれたときに、総理を百パーセント一緒ですって答えることが一番良いことなんですよ、違いますって一言でもいっちゃったら、それでそこで国会は止まっちゃいますよ」

 石破氏の発言はもっともなのですが、それだけに石破氏が入閣した後、野党から「首相と百パーセント一致しているか」と質問されたとき、うまくかわす答弁を用意できるでしょうか。予算委員会では全閣僚が出席を要求され、所管外の課題についても問われるのは珍しいことではありません。

 また、基本法の制定について、石破氏は次のように発言しています。

 「私(=石破氏)個人でいっているわけでなく、安全保障基本法はもう10年以上、自民党のなかで議論してきた。(中略)その条文を侃々諤々の議論をして、決めたのが総選挙、一昨年の自民党が与党に戻るときの総選挙の前に自民党として決定した。だから石破さんの持論ですよね、とよく言われるんですけど、自民党の党議決定なわけですよね」(25日のTBSラジオで)

 確かに安保基本法の制定は、自民党の公約でした。その一方で、現状で基本法制定を進めていけば、公明党との与党協議がパンクするという政治判断をしたのは、石破幹事長を含めた現在の政府・自民党だったはずです。

 石破氏の発言は、それぞれ個別に聞けば全て間違いなく正しいのですが、合わせると齟齬が生じています。

 騒動も収束に向かっていますし、理論家で知られる石破氏とはいえ神ならぬ身仕方ないし、石破氏は今後、自身の発言の矛盾を解消していかなければならないのではないでしょうか。

産経ニュース【佐々木美恵の青眼・白眼】2014.8.30


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