平尾 孝
日本マクドナルドが悪循環にはまり込んでいる。売り上げ減少に見舞われている中、7月下旬にチキンナゲットを調達していた中国・上海の食肉加工会社が期限切れ鶏肉を使っていた問題が発生。8月には代金の過剰徴収も発覚した。
こうした問題の影響もあって、8月の既存店売上高は前年 同月比25.7%減と、平成13年の上場以来最大の落ち込みとなった。
市場では業績悪化に伴い、「リストラに乗り出すのでは」との観測もささ やかれており、「デフレの勝ち組」と呼ばれたかつての面影を完全に失 い、苦境からいつ抜け出せるかも見通せない状況にある。
「こんなにトラブルが続くのはどうしてなのか。おはらいでもしてもらわないといけないのかも」
日本マクドナルドのある幹部は、先月20日に発表した代金の過剰徴収 について、こう感想を漏らす。期限切れ鶏肉使用問題に続くトラブルだけに、苦難の連続だ。
ただ、「おはらい」という言葉出てくるように、社内では過剰徴収と鶏肉問題は因果関係はなく、たまたま重なったという認識が大半を占めるようだ。
だが、過大請求問題は、鶏肉問題やそれ以前の売り上げ減少など、 現在の日本マクドナルドが陥る悪循環の中で、「起きるべくして起きた事件」とみる外食業界関係者は少なくない。
過剰徴収の背景に、マクドナルド本部の焦りがある。期限切れ鶏肉使用問題で鶏肉を使った商品の売り上げが急減したため、同社は挽回(ばんかい)策として、豆腐などを材料とした「豆腐しんじょナゲット」と、鶏肉を使った「マックウィング」のサイドメニュー2アイテム、計6商品の値下げを決めた。
ただ、改定価格は150円案と、120円案の2つがあり、これがなか なか決まらなかった。そのため、レジシステムの変更作業を考慮し、2つ の価格を本部から各店舗のレジに送り込んだ。
最終的に値引き幅の大きい120円に決まったのが、値下げする8月 18日の3日前の15日。15日は金曜日で、18日の月曜まで週末を挟 むことを考えれば、異例の短期間での価格改定となった。このため、バイ トを含めたスタッフに120円での販売を徹底できなかった。
8月20日に会見した日本マクドナルドホールディングス(HD)の青 木岳彦上席執行役員は、「本部と店舗の連携やコミュニケーションが不足した」として、単なるミスだと強調した。ただ、価格改定の決定があまりにも急だった本部の対応の悪さがトラブルの背景にあることは間違いない。
過剰徴収は、全国のマクドナルド3150店舗の約8割にあたる2583店で発生、総件数は1万391件だった。過剰徴収の総額は約73万円と 大きくはないが、期限切れ鶏肉使用問題で客離れを起こす中、さらなるイ メージダウンを招いた。
このところ打つ手打つ手が、裏目に出ているのは、偶然というよりはいずれも、現在の経営陣の意思決定に問題があるというのが、外食産業界の認識だ。
例えば、期限切れ鶏肉使用問題も発覚から、サラ・カサノバ社長 が会見するまで1週間以上かかった。ある外食大手役員は「食品の安全問 題が起きたら、日本の外食はまず社長が出てきてわびるのが当たり前。社 長の最も大きな役割だ」と日本マクドナルドの対応に疑問を投げかける。
また、「カサノバ社長の打つ手は値下げやキャンペーンなど、平時のてこ入れ策レベル。今回のマクドナルドは極めて危険な状況にあるという危機意識が足りないともみえる」(外食大手経営企画担当者)といった指摘もある。
事実、9日に同社が発表した日本マクドナルドの8月の既存店売上高は前年同月比25.7%減と目を覆うばかりの状態に陥った。特に客数が16.9%減と、客離れが顕著で緊急事態となっている。
このペースが続 けば鶏肉問題の影響で「10億円規模」(財務担当役員)としてきた今年 度通期の営業損益の減少がこのレベルではすまない状況も想定される。そ れでも、同社はこの数値にも「客離れは底を打った」(広報)との認識を 示し、記者や業界関係者をあきれさせている。
かつて経験したことのない悪循環の連鎖をどう断ち切るのか。同社のリストラが市場でささやかれる中、経営陣の真価が問われている。
産経ニュース【エコノミックX】2014.9.13