2014年09月18日

◆首相は“ギャンブル”に手を染めるな

杉浦 正章




カジノ法案は政権のアキレス腱になる
 

驚いた。自民党筋によると首相・安倍晋三の臨時国会での最大の狙いは「カジノ法案」成立にあるというのだ。これまで大ニュースの影に隠れていたが、確実に同法案が浮上して年末までに成立する流れだという。


しかもこともあろうに一国の首相が、日本史上初めて「賭場・鉄火場」を公認する法案の旗振り役なのだ。だらしがないことに止める者は1人も居ない。安倍政権は戦後まれに見る一強体制を維持してきたが、ようやくアキレス腱が見えてきた。


兆候はあった。5月にはシンガポールで、 カジノやホテルがある統合型リゾート施設を見学「カジノを成長戦略の目玉にしたい」と意気込んでいた。先の内閣改造では太田昭宏を何で国交相に留任させたかと思っていたが、カジノ対策であった。公明党の反対をにらんで太田を取り込んだのだ。


太田はカジノ法案を担当するよう指示されている。もともと安倍は「国際観光産業振興議員連盟」(通称カジノ議連)の最高顧問だ。古くからあるパチンコ議連の別動隊のような組織である。


もとよりパチンコ業界はカジノ推進論であり、政治資金もそのために政界に注入してきた。安倍とパチンコ業界の接近ぶりは有名だが、それが秋の臨時国会でベールを脱いで法案成立に走るのだ。


カジノ法案については自民党は古くから推進論があった。石原慎太郎などはその筆頭であった。しかし歴代首相は自ら旗を振るようなことはしてこなかった。なぜなら首相には高い倫理観が求められていることを知っているからだ。


米国ではカジノがマフィアの巣であり続けているし、世界各地の賭場もやくざ絡みのものが多い。日本も昔から賭場はやくざの仕事場と相場が決まっていた。首相ほど高い倫理観を求められるポジションはないのに、安倍はそれをなげうつのか。


加えて日本人の特性がある。賭博に対する精神的弱さだ。


厚労相の最近の調査では日本には「病的なギャンブラー」が536万人存際する。成人の4.8%であり、諸外国は1%にとどまっている。男性の8.7%、女性の1.8%が賭博中毒になっているのだ。日本では首相が旗を振ってこれらの“患者”を増大させるのだろうか。昔から博打で泣くのは家族と相場が決まっていた。


現在認められているギャンブルだけでも社会に深刻な問題を起こしている。毎日新聞の記事によると、金銭的困窮や配偶者への暴力、児童虐待をするケースが多いだけでなく、中には無差別殺人事件を起こした容疑者にギャンブルによる借金苦の親から幼少期に捨てられた経験があった例もある。


さらに毎日は女性の中毒患者も多いと指摘する。「20歳前後でギャンブルを始め、7〜9年たつと借金に手を出す。治療を受けたりやめるためのグループ療法を始めたりするのにさらに10〜15年かかる。この間に1000万〜2000万円をつぎ込む。大多数は家庭で盗みをはたらき、子どものお年玉や親の葬儀の香典にも手をつける。借金とうそを重ね、家族を精神的な病気に追い込むこともある」のだそうだ。
 

馬鹿な自民党の推進論者は「競馬、競艇など公営ギャンブルやパチンコがあってなぜカジノが駄目なのか」というが、現在あるものだけでも社会的な問題を引き起こしているのに、さらに加速させるのがまっとうな政治かと言いたい。「世界120か国で合法化されている」と主張するが、日本は数少ない合法化しない立派な国なのだ。


既にカジノ推進法案は国会に議員立法で提案されており、自民党と維新、生活の党が賛成だ。通常国会では継続審議になっているが臨時国会では成立の可能性が強い。公明党は反対しているが、公明党抜きでも成立を図ろうと思えば出来る。


しかし、これほどの重要法案をめぐって、反対の国論が巻き起こらないことはあり得ない。既に朝日と毎日は反対の社説を展開している。


安倍が強硬に推し進めようとするなら、反対論者は支持から離反する。高支持率を維持できると思ったら甘い。また、同法案処理は安倍自身がギャンブル的な危うい橋を渡ることを物語っている。


万が一にも業界との癒着が新聞によって公になれば、政権を直撃する問題になりかねないからだ。いずれにしても悪いことは言わない。今からでも遅くはない。首相が瓜田(かでん)に履(くつ)を納(い)れ、李下に冠を正してはならない。

     <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)
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