2014年09月25日

◆日米の統合能力が中国を封じる

湯浅 博
  


今月半ば、日本の国家基本問題研究所(櫻井よしこ理事長)の訪米チームは、ワシントンで十数人の研究者たちと相次いで会談をした。同行した私のテーマは、「米国はライジング・チャイナをどう封じようとしているのか」との答えを探すことだった。

米国の戦略家から聞こえてきたのは、現在のオバマ政権が対中戦略を欠き、バランス・オブ・パワー観が欠如し、政策に一貫性がない−という厳しいものだった。そのオバマ政権が打ち出すアジア・リバランス(再均衡)は、4月の日米首脳会談で同盟関係が立て直され、ようやく軸ができたというのが共通認識だったように思う。

気がかりはシリアからイラクで増殖する「イスラム国」への空爆による介入と、ウクライナ東部でのロシアの介入が払拭されていないことである。専門家たちは、中東への介入は米空軍を中心とした限定的なものであり、国防費でやや影響を受けるものの、対中リバランスは変わらないとの見立てであった。

オバマ政権がこれまで、習近平国家主席が繰り返す「新型の大国関係」という政治コピーを安易に受け入れていた件も、退けられつつあるとの見解だ。当時、国家安全保障会議のアジア上級部長だったジェフリー・ベーダー氏は、この概念に大した価値を置かずに、「中国との競争を管理し、中国の協力を引き出す手段」としか考えていなかったと語る。

しかし、ブッシュ政権で同ポストにいたマイケル・グリーン氏は、この「大国関係」には台湾や南シナ海など中国の核心的利益を尊重するという含みがあり、「米国が日本をセカンド・パワーに位置づけたと触れ回る根拠」にするとみた。

さすがに、中国の誇大宣伝に危機感を抱いた現アジア上級部長のエバン・メデイロス氏がこの3月、「今後は核心的利益には言及しない」と反省の弁を述べた。ただ、グリーン氏はバイデン副大統領とライス大統領補佐官はいまだシッポが切れていないと語る。

したがって、4月の大統領訪日時に日米両首脳がアジア太平洋の安定に「日米が主導的な役割を果たす」ことを表明し「新型の大国関係」を退けた意義は大きいとみる。これを確かなものにするのは、安倍晋三政権が閣議決定した集団的自衛権の行使容認と、日米の役割分担を決める年末の日米ガイドラインであろう。

元国防次官補のウォレス・グレグソン氏はこの閣議決定に物足りなさがあるとしながらも、「米国は日本の協力なくして日本を防衛できないし、日本は米国の支援なしに中国や北朝鮮に防衛対処できない」との厳しい指摘をした。それでも海空自衛隊が米海空軍とのデータを交換できるようになると歓迎する。

グレグソン氏はさらに、グアム周辺で日米が合同訓練を繰り返し、日米統合の能力を中国に見せつければ格好の抑止になると指摘した。その上で、日米が中国を遠方から攻撃制御する戦術「エア・シー・バトル」構想や、経済封鎖で抑止する戦略「オフショア・コントロール」構想などを協議すべきだという。

今回、会った専門家の多くが、中国の拡張主義を阻止するため日米を軸にアジア太平洋の沿岸国との協調を前提にしていることを強く感じた。国防大学国家戦略研究所上級研究員トーマス・ハメス氏は中国による南、東シナ海での暴力的な振る舞いが、日本、ベトナム、フィリピン、豪州、インドまでも自然に結束させているとみる。(東京特派員)

産経ニュース【湯浅博の世界読解】2014.9.24
       
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