2014年09月30日

◆安倍は安保・消費税国会に逡巡するな

杉浦 正章




「地方創生」への誘導は無理筋だ
 


何事にも真っ正面から取り組むのが首相・安倍晋三の持ち味だと思っていたが、最近はなにやら“びびり”が目立つようになってきた。


集団的自衛権の閣議決定を通常国会の後にし、同関連法案は来年の通常国会後半に先送り。有志連合のシリア爆撃を「理解」にとどめ、開幕した臨時国会を激動する世界情勢を尻目に、具体策に乏しい「地方創生国会」と位置づける。


所信表明演説では集団的自衛権や10%消費増税への言及がない。再増税の判断も臨時国会後へと先送りしようとしている。首相就任後2年になろうとしているが、外交内政に渡る激務を休み返上でこなす希有な首相であることは確かだが、最近の「マイナス志向」は疲れが出てきたのか気がかりである。
 

安倍は自民党両員議員総会で今国会の位置づけを「地方創生国会」として、そのための法案も提出した。しかし法案はいわば観念論で理念を述べるにとどまっており、地方創生担当相・石破茂が自ら「何をやるかの具体策がまだ出てこない」と言うようでは、語るに落ちた。


要するに安倍は臨時国会の論議を無理矢理地方創生と女性の活用に誘導しようとしているのだ。これにはみんなの党幹事長の水野賢一が「地方創生とか女性の活用とか誰も異論のないものばかりをテーマとしている。安保とか消費税とかが先送りされるのは問題だ」と述べたが、至極もっともだ。


緊張する極東情勢、激動の中東・ウクライナ情勢など世界は大波乱時代に突入している。国内は消費増税を2年で倍増するのか、出来るのかという難問に直面。どう見ても国会は安倍の意図・思惑とは逆に、所信表明で触れなかった外交・安保、消費増税論争が焦点とならざるを得ないのだ。


その議論の動向を見定めれば、まず野党は消費増税では民主党がヌエ的な立場であるほかは全野党が10%への引き上げ反対である。


民主党は首相・野田佳彦が増税に踏み切り、2段階で10%を決めた張本人だから対応を決めかねているのだ。その中で、このところ左傾化して対決色をあらわにしている幹事長・枝野幸男は、安倍追い込みの奇策を思いついたようだ。


それは「増税延期」を「アベノミクスの失敗」と決めつけることだ。決めつけることで再増税を延期をさせずに10%への増税に踏み切らせ、その上で政権を支持率急落で失速させようとする作戦だ。統一地方選や総選挙を考えたら民主党は安倍が増税してくれることを祈るような気持ちでいることがよく分かる。


しかし筆者に見破られてはどうしようもない。もっとも枝野の“小細工”に対しては「増税延期はアベノミクスを成功に導くため」という反論の方が説得力がある。


その他の野党は共産党を除けば極めて常識的な反対論である。総じて現在の景気状況から見て10%への増税は税収増加につながらないとみている。


維新の党幹事長・小沢鋭仁は「今のタイミングでは反対だ。今のマクロ経済の状況では税率を上げても税収にはつながらない」と言明。次世代の党幹事長の山田宏は「これから高齢者が増えていくなかで、中期的な財源確保は必要だが、コストの削減や経済を温めるための成長戦略を進めることが優先だ。経済を冷え込ませてしまったら、仮に消費税率を引き上げても税収は上がらない」と述べている。


いずれもまっとうな物の見方をしている。みんなの党の水野も「今いちばん大切なのはデフレからの脱却であり、景気に悪影響を与えることはすべきではない。景気の指標を見ると、消費税率を3%から5%に引き上げたときと比べても経済へのダメージがあり、増税は間違いだ」と強調している。


これらの主張は首相側近の再増税慎重論とも一致する様相を呈している。一部に「増税延期は政治的なエネルギーが大変だ」というもっともらしい意見があるが、延期は消費税法付則に書かれており、民主党以外の党が賛成ならそれほどのエネルギーは必要としない。


一方、自民党幹事長・谷垣禎一は、理論武装不足の感が濃厚だ。増税に当たっては景気対策の補正予算を組むとしているが、公共事業は人手不足もあってこれまでの予算が使い切れていない。未執行予算が13兆円もあるというのだ。補正など組んでもまさにぬかに釘となるだけだ。


谷垣は「社会保障の安定財源のためにも必要」と訴えるが、8%に増税しても年金が減額されている現実を知らない。「だまされた」という意識の強い国民に、もう消費税の社会保障財源論は効かなくなっていることを知るべきだ。おまけに再増税して法人税減税では、枝野の絶好の追求テーマになってしまう。


やがては谷垣も期限を区切った増税延期あたりを落としどころとせざるを得ないのではないか。谷垣は再増税で党内根回しをしていると言うが、それにしては反対論者が減らない。なにやら腰が入っていないのだ。安倍と手を握ったポーズだけなら世上を惑わすだけだと心得るべきだ。


外交・安保も論戦の焦点となることは間違いない。とりわけ国会の最中11月9,10の両日に北京でのアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が開催され、日中、日露首脳会談、場合によっては日韓首脳会談もあり得る情勢だ。極東安保情勢がデタントに入るかどうかの正念場を迎えようとしている。


集団的自衛権問題も閣議決定後予算委の閉会中審査を行っただけで、十分な審議は行われていない。議論のないまま既成事実化しようとしていると勘ぐられても無理はない。


おりから中東ではイスラム国爆撃で長期戦の様相が生じており、集団的自衛権の行使絡みでの論戦は避けられない。安倍ははっきり言って具体策のない地方創生にうつつを抜かすひまはないだろう。地方創生は内容が整ってから来年の通常国会で行えばよい。

       <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)
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