2014年10月06日

◆円安 良い?悪い?

塩原永久・藤原章
 


〇膨らむ所得収支 ×燃料輸入増え貿易赤字

外国為替市場で円安ドル高の動きが強まっている。1日に一時1ドル=110円台まで下落した円は、その後やや買い戻されたが、3日ニューヨーク外為市場では、米雇用統計の改善を受けて大幅反落し109円台後半と再び大台突破をうかがう動きとなった。これまで円安は日本経済にプラスとの見方が支配的だったが、輸入物価の上昇などマイナス面も指摘されはじめており、専門家の間でも見解は分かれている。

「円安が一気に進むのは望ましくない」

日本総合研究所の山田久チーフエコノミストはこう指摘する。海外への生産移転や原発停止に伴う化石燃料の輸入増加で、日本は「輸入が輸出を上回るようになった」という。輸出から輸入を差し引いた貿易収支は8月まで26カ月連続の赤字を記録している。

山田氏は貿易構造の変化と円相場の株価への影響を分析し、「かつてのように『円安=景気にプラス』とはいえなくなっている」と説明する。その上で、1ドル=120円台半ばを超える水準となった場合、日本経済に明らかにマイナスとなると試算した。

これに対し、SMBC日興証券の牧野潤一チーフエコノミストは、「円安は115円でも130円でも日本経済にはプラス」と強調する。貿易収支は赤字でも、所得収支(海外から受け取る利子や配当)の黒字が膨らんでいるため、「円安は海外から日本への所得流入をかさ上げする」という理屈だ。

JPモルガン・チェース銀行によると日本の対外純資産は外貨建てで469兆円にのぼる。佐々木融・債券為替調査部長は「1%の円安で、国富は約4・7兆円増える」と試算する。

また、米国の緩和マネーが投機的に原油などの資源価格をつり上げたため、エネルギー資源の大半を輸入に頼る日本の貿易赤字が膨らんだとの見方もある。

SMBC日興証券の牧野氏は「米国金融政策の正常化に伴って、日本の貿易赤字の悪化も収まる」と見込む。実際、アジア市場の指標となる中東産ドバイ原油価格は下がりつつある。

ただ、リーマン・ショックと東日本大震災を経て、製造業を中心に日本の産業構造が変わったとの見方は根強い。

第一生命経済研究所の熊野英生・首席エコノミストは、製造業の大半の業種で輸入比率が拡大したと分析する。「企業が円高対応を進めたことが、逆に円安への対応を難しくしている」と指摘する。

                   ◇

 ■10円の円安で… 上場企業2兆円増益 中小は1.3兆円減益

みずほ銀行産業調査部の推計では、10円の円安で上場企業は約2兆円の増益になる。だが、中小を含む非上場企業は約1兆3千億円の減益になるという。8月からの円は対ドルで約8円円安に振れた。市場では、急速な円安が実体経済に与える影響を見極めようとする動きも予想される。

みずほ証券の鈴木健吾・チーフFXストラテジストは「年末に向けての円相場は107〜112円」と110円を挟んでもみ合う展開を予想する。

今回の景気回復は「非製造業を中心とした内需主導型」(日銀幹部)と特徴づけられるだけに、円安による輸入物価の上昇が「個人消費に悪影響を及ぼす」との見方もある。今後の円安進行がもたらす影響は予断を許さない。
産経新聞 10月5日(日)7時55分配信


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