石岡 荘十
「芸術の秋」だから---というわけではないが、いつもこのシーズンになると座右の愛読書の一つ、「チャイコフスキー・コンクール」(中村紘子 中公文庫)を読み返しながら、YouTubeを逍遥、新たにアップされたクラシック新譜を渉猟するのが楽しみだ。
著者中村紘子さんは1965年、21歳の時、世界3大国際音楽コンクールの一つショパン国際ピアノコンクールで、最年少で4位に入選して以来、日本のピアニストの代名詞のように言われてきた。
それだけでなく、ショパンやチャイコフスキーの国際コンクールの審査員として国際的にもよく知られている。その一方で、1989年「チャイコフスキー・コンクール」で第20回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞している。「文武両道」のスーパーレディだ。
初版(1991年)以来、クラシックの入門書として重宝しているが、流石に最近は著書に出てくる名前の演奏者は”歴史上”の演奏家となりYouTube音源のなかには聞くに耐えないものも、ちらほら。
が、この10数年ほど前からだろうか、YouTubeにアップ(公開)されるクラシックのプログラムが飛躍的に充実してきた。お陰で昔のようにCDを買いに走ることはほとんどなくなった。
最近は、中村さんは毎月「音楽の友」に連載しているエッセイを愛読し、有望な若手を漁っている。その中で異彩を放つのが、アリス・沙良・オット(Alice Sara Otto)だ。
彼女は1988年、日本人の母とドイツ人の父の間に、ミュンヘンで生まれた。3歳の時母親と聞きに行った演奏会で、既にピアニストになろうと決心したと語っている。言葉ではよく表現できない自分の思いをピアノでなら言い表せると感じたからだという。
独語、英語、それに日本語を自在に駆使するだけでなく、玄人はだしのイラストで多彩な才能を表現する。中村さんが2004年、目をつけて日本に招いた。はじめて来日してから今年で10年。筆者は5年ほど前、初めてYouTubeを見て以来、追っかけをやっている。
まずは、2010年、4年前のインタビューをどうぞ。
http://www.youtube.com/watch?v=sATEI35U_Fg
そのチャイコフスキーを聞いてみよう。2005年11月録画・2012年公開 ウクライナ国立交響楽団)
http://www.youtube.com/watch?v=3ZA_Vt3SQRE (37分40秒)
アリスはピアノ界のジャンヌダルクと評される超絶技巧のピアニストで、ドイツのグラモフォンから「超絶技巧練習曲集」が出ているほどだ。その実力を遺憾なく発揮した1曲、2012年デンマーク、ラジオコンサートホールでの演奏がある。曲はリストのカンパネラ(La Campanella 2012.05公開)。
http://www.youtube.com/watch?v=-lmFh_jVX0A
先週17日はフレデリック・ショパンの命日である。1849年、40歳の若さで死去。アリス・オットのワルツを聴いてみよう。
http://www.youtube.com/watch?v=GfqqjlIqpt8&list=UU34DbNyD_0t8tnOc5V38Big
アリスは、今年1月から月刊誌「音楽の友」に連載エッセイ「ピアニスト世界を巡る」を日本語で掲載している。軽妙な文才とイラストを楽しむことが出来る。今が旬である。