2014年10月31日

◆「土豪」が横行する国

石 平



中国では今、「土豪」という新造語がはやっている。日本語に意訳すれば、「泥臭い成り金」、あるいは「あか抜けていない成り金」といった意味合いになる。

何らかのはずみで大金持ちとなった人が、金のあることを露骨に誇示して世間の注目を集めようとしている。こうした連中が、軽蔑と嘲笑の意をこめて「土豪」と呼ばれているのである。

それでは、土豪たちは一体、どのような行いで世間を騒がせているのか。

たとえば先月6日、江蘇省塩城地区の大豊市で人々が仰天するような出来事が文字通り「天から降ってきた」。この町で生まれ育った土豪の一人が「中秋の名月」の帰省のため、自家用のヘリコプターで町の真ん中に降り立ったからである。

彼の生家がそこにあったわけでもない。町の真ん中にヘリコプターを着陸させた唯一の目的は「自家用ヘリを持つほどの大金持ちとなったこと」を多くの市民に知らせることであろう。

よそで成功し郷里に帰って自己顕示する土豪は別にもいる。昨年11月、重慶市栄昌県で老婦人が亡くなると、企業家の息子は帰郷して盛大なお葬式を執り行った。

その際、この「大土豪」の息子は何と500卓の食卓を設置して数千人参加の大宴会を催した。生前の故人と縁があるかどうかはいっさい関係なく、町の人なら誰でも、あるいはそこを通りかかった人なら誰でも自由に参加して飲み食いすることができた。

宴会は空前のにぎやかさの中で大いに盛り上がったが、それはどう考えても、亡くなった母親のためというよりも、まさに土豪息子による、土豪息子のための、単なる「見えっ張り大会」だったのではなかろうか。

お葬式が土豪たちの「金持ち自慢」の場となることがあれば、結婚式も同様だ。今年8月、浙江省台州市では、地元の土豪が高級ホテルで自分のめの結婚披露宴を催した。

そのとき、会場の真ん中にピカピカの金色に塗られた机が置かれ、金や銀や宝石の装飾品の類と一緒に、新札の山が「展示」されていた。

それらは全部、新郎から新婦への贈り物だというが、決して、「新婦のため」でないのは誰にでも分かっているはずである。

札束の「展示」で驚くのはまだ早い。今年3月、福建省長楽市で、ある地元土豪の結婚披露宴が盛大に開催された。宴会の最後、大皿に盛られて出された圧巻の「料理」を目にしたとき、賓客たちは酔いがいっぺんにさめ、驚愕(きょうがく)の声を上げた。

それは別に「料理」でも何でもない。大皿に載せられているのは実物の札束だった。

このように、今の中国では、カネというもの以外に自分の存在価値を見だすことのできない成り金の「土豪」たちが横行している。彼らの存在はまた、この国のこの時代における精神の貧困と堕落の象徴なのであろう。

その一方で、人々が彼らの行いを軽蔑のまなざしで捉えて嘲笑していることはまた、拝金一辺倒の風潮に中国人が嫌気がさし、より洗練されたものを志向し始めたことの証拠ではないか。

「カネを手に入れたとしてもあの連中のようになりたくない」と思う人は今でも多くいるはずだ。

おそらく今後、バブルの崩壊に伴って土豪たちのよりどころとなる経済繁栄の「邯鄲(かんたん)の夢(人の世の栄枯盛衰は、はかないものであることのたとえ)」が一度破れた後、中国人は自分たちの身丈のほどをきちんと認識して、より堅実にして節度のある生き方を求めることになろう。

そういう意味では、中国人自身のためにも、一度の経済破綻はやはり必要ではないだろうか。

                ◇
【プロフィル】石平
せき・へい 1962年中国四川省生まれ。北京大学哲学部卒。88年来日し、神戸大学大学院文化学研究科博士課程修了。民間研究機関を経て、評論活動に入る。『謀略家たちの中国』など著書多数。平成19年、日本国籍を取得。
産経ニュース【石平のChina Wtch】 2014.10.30

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