2014年11月04日

◆演歌はヨナ抜き音階

渡部 亮次郎



フランスで教育を受け、102歳まで生きた高木 東六(たかぎ とうろく)という作曲家は終始、演歌や童謡を「ヨナ抜き音階」だと非難して死んだ。

勿論、私は作曲のことはからきし知らないが、「ウィキペディア」によればヨナ抜き音階(ヨナぬきおんかい)は近代以降の日本固有の音階(五音音階)だそうである。

ヨナ抜き音階とニロ抜き音階には以下のものがある。

音階名     音階       備考
ヨナ抜き長音階 C, D, E, G, A, C 呂音階と同じ

ヨナ抜き短音階 A, B, C, E, F, A 陰音階の主音をAに変更

ニロ抜き短音階 D, F, G, A, C, D 陽音階と同じ

ニロ抜き長音階 C, E, F, G, B, C 琉球音階と同じ

「四七抜き音階」とも表記し、ヨナ抜き長音階を西洋音楽の長音階に当てはめたときに主音(ド)から4つ目のファと、7つ目のシがない音階(ドレミソラ)のことである。

雅楽の呂旋法がこれに当たり、西洋音楽関係者が日本音階の特徴として名付けた物である。なお、ピアノなどにおける黒鍵部分の5音にも相当する。

明治以前から伝わる日本の童歌や民謡のうち、陽旋法の物はすべてヨナ抜き長音階と同じ音程を使う音階である。

東北の童歌「どんじょこ・ふなっこ」(教科書に載っている「どじょっこ・ふなっこ」ではない)や、木曾節、稗搗き節、田原坂などが該当する。

なお、民謡と古い童歌は、西洋音楽の影響がないのでドで終止するという考え方はなく、ラ(陽音階)かレ(律音階)で終わる曲が多い。

現在叙情歌として親しまれている唱歌や童謡などが作曲され始めるのは明治の中頃からである。但し、ファやシが入っている洋音階のものもある。

例えば「村祭り」や「ふるさと」などは、ヨナ抜きではない。文部省唱歌は、西洋音楽の理論で作られたため、長調の曲はすべてドで終わっている。

スコットランド民謡で使われる五音音階はヨナ抜き音階と同じ音階の曲が多い。“Long long ago”のようなヨナ抜き音階でない曲も例外的にはある。

明治以降に作られた日本の唱歌には、外国の曲に詞をつけた物がかなりある。そのうち、「螢の光」や「故郷の空」は、スコットランドの民謡のヨナ抜き長音階(と同じもの)である。また、ラテンアメリカのフォルクローレでも同様の音階が一般的であるほか、世界各地に同様の音階が見られる。

演歌は現在でもヨナ抜き音階が主流である。「北国の春」、「夢追い酒」や、21世紀になってから登場した氷川きよしの「箱根八里の半次郎」、「星空の秋子」まで、ヨナ抜き長音階のものも多い。

また、「リンゴ追分」、「りんとう峠」、「達者でナ」、「津軽平野」などの民謡調演歌には、ニロ抜き短音階のものがある。これらはコード進行で、VIm(ラドミ)や IIm(レファラ)などマイナーコードを多く使ってあるが、短調ではほとんど使われないソが多く使われている。

アイドル歌謡、フォーク、ニューミュージック、J-POPのなかにも曲の一部、あるいは全体がヨナ抜き長音階でできているもの少なくない。「上を向いて歩こう」(坂本九)、「夏祭り」(JITTERIN'JINN) 「木綿のハンカチーフ」(太田裕美)、「昴」(谷村新司)等が該当する。

しかしヨナ抜き短音階やニロ抜き短音階でできた楽曲で目立った作品はない。なお「島唄」(THE BOOM)は珍しくニロ抜き長音階(ベース)による楽曲である。

高木は演歌や歌謡曲に関しては、「喜びや笑い、ユーモアがない」や「メロディーが暗くて絶望的。歌詞も星、涙、港と百年一日である」と公言するほど、批判的な意見で有名だった(しかし、演歌歌手の島津亜矢が少女時代にデビューした際に、藤山一郎とともに絶賛したという逸話も伝えられている)。

現在の鳥取県米子市に正教会の神父(司祭)の子として生まれる(本籍地は岡山市)。幼い頃より音楽教育を受ける。1924年に東京音楽学校(現・東京藝術大学音楽学部)ピアノ科に入学。

しかし1928年に学内の事情で中退を余儀なくされフランスに留学し、パリ音楽院教授アルマン・フェルテにピアノを師事した後、スコラ・カントルムでヴァンサン・ダンディに作曲を学び、またガブリエル・ピエルネからも多くの教示を受けた。

1932(昭和7)年に卒業して帰国。フランス滞在中に知り合った山田耕筰の勧めで作曲家に転向した。

2006年8月25日、肺炎のため埼玉県内の病院で死去、102歳没。高木は日本ハリストス正教会に所属する正教徒であったため、埋葬式は8月28日に、ニコライ堂で行われた。聖名はアファナシイ。これはギリシャ語語源で「不死の者」を意味する。

高木が作曲した曲 のうち歌謡曲・歌曲には以下のものがある。

「空の神兵」(作詞:梅木三郎、歌:鳴海信輔・四家文子、灰田勝彦・大谷冽子)

「水色のワルツ」(作詞:藤浦洸、歌:二葉あき子)(ピアノ用変奏曲もある)

「あまんじゃくの歌」(作詞:深尾須磨子、歌:美空ひばり)

「浅き春に寄せて」(詩: 立原道造)

「夢見たものは」(詩: 立原道造)

「テラス」(詩: 高木東六)


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