2014年11月05日

◆政局の象を有識者の「群盲」が評する

杉浦 正章



延期反対論はTVコメンテーターと同じ


世に言う有識者なる人々は、政治の専門家であろうか。政局を理解している人なのであろうか。否、紛れもなく素人である。


一方で消費再増税は、経済マターであろうか。それとも政局であろうか。紛れもなく政局である。


なぜなら過去の首相は竹下登も橋本龍太郎も消費税でつぶれた。その政局の「象」を、言っては悪いが「群盲」がなでて評するようなものが4日始まった有識者点検会合である。


政局を知り尽くした首相・安倍晋三が「政局運営をどうしましょう」と聞いているのと同じだ。政治度外視のご意見を拝聴して、それを判断材料にするのだから、民主主義は手間暇かかる。もっとも実態は12月の首相判断までの時間稼ぎだから、仕方がないと言えば仕方がない。


そこで初会合における延期反対の発言を見れば、テレビのコメンテーターの域を出ない。8人中5人が反対したが「政治コストが高い」はコメンテーターが毎日しゃべっていること。引き上げ実施で解散・総選挙に追い込まれる方が政治コストは格段に高いことを知らない。


「先延ばしのリスクの方が引き上げのリスクより高い」は、引き上げがアベノミクスを直撃して政権基盤そのものを揺るがすことを知らない。「3党合意で粛々と」は思考停止。「実施して経済対策を」は、5兆円の税収で5兆円の補正を組むなら先延ばししても同じ。今後、この種のひらめきのない主張を安倍が延々と聞くのかと思うと可哀想になる。


それにつけても日銀総裁の黒田東彦は「おぬしも悪よノウ」と言いたい。何としてでも増税延期を阻止しようと、際どさ極まりない金融追加緩和に打って出た。


このまま株高を定着させるほど、海外の投資家も甘くはあるまい。「劇薬」が逆効果となるリスクを日銀が抱え込んだのだ。おそらく円安、株高も一過性で、実態経済には反映していかないだろう。


昔竹下登は消費増税に際して「歌手1年、総理2年の使い捨て」と述べたものだが、消費税とはそれほど政権にとって負担の重いものであるのだ。要するに首相にとって政治生命をかけたものである。


だから竹下は「1内閣1仕事」とも述べた。1回増税するだけで首相としての役目は終わると言うことだ。それにもかかわらず安倍は2回の増税を強いられている。それも当時の首相・野田佳彦と自民党総裁・谷垣禎一が1内閣で2度にわたって増税という制度設計上の大誤算をしたのが原因である。


谷垣は自分は次には首相になれそうもないから、次の首相に全てを負わせて、そのダメージの上に首相を狙うという長期迂回作戦を取ったのかと勘ぐりたくなる。


だいたい世論調査では、最初の8%への増税で5割が理解を示した国民も、10%への増税は「悪乗りしないでくれ」と言っているのに等しい。7〜8割が再増税反対なのである。7〜8割という数字は国民の全てが反対と言っているのと同じだ。


その反対を押し切って増税したらどうなる。竹下は3%まで支持率が落ち、政権を手放した。安倍の高支持率は中国と韓国の「理不尽」に支えられているところが大きいが、これも長続きする話ではない。いずれは隣国との関係を良好なものにしなければならないのである。
 

要するに増税判断は支持率を急速に下げる可能性が高いのだ。支持率が下がって総選挙になれば、まさに僥倖(ぎょうこう)であった衆院294の議席を大幅に減らさなければならないのだ。それでは今後の政局展望との絡みで消費増税を見るとどうなるかだ。


まず最初にダメージを受けるのがデフレ脱却を目指すアベノミクスの崩壊である。安倍政権にとって何より重要なのは、表看板のアベノミクスの成功であるが、再増税判断は消費の低迷と実質所得の減少、税収の大幅減で、デフレ経済への逆行がほぼ確実である。


安倍の言う「税収が減少しては元も子もなくなる」という状態を招くのだ。あらゆる経済指標が判断材料の7−9月のGDPの悪化を予想させるものである。当初の予想通り4%の回復などは夢のまた夢であり、プラスは確実でもせいぜい1%程度がいいところだと見られている。
 

さらに、日程的に政局を見るとまず再増税した場合は15年10月1日が実施となる。1年半延期した場合は17年4月1日の実施だ。この1年半の延期は政権運営にとって決定的な要因として作用する。


まず12年暮れの衆院選後2年も経過すれば政局運営の最大のカギは解散をいつにするかである。解散をほのめかしつつ、主導権を握るのが首相の役目だ。それが握れなくなる。野党は「再増税選挙」となれば願ってもないことであり、15年は焦点が解散に追い込むか追い込まれるかに移行してしまうのだ。


再増税しなければ総選挙の可能性は春の地方選挙との同日選挙、通常国会会期末の解散、夏の選挙。秋の臨時国会の解散、年末解散など大きなチャンスがあるが、15年10月の再増税実施はこの選択肢を極めて困難なものにする。


本来ならば16年の参院選挙とのダブル選挙を狙うのがベストの選択だが、この選択肢すら危ういものにする。要するに「アベノミクス失敗」の旗印を野党に与えてしまったら終わりなのだ。安倍の人気急落は15年9月の自民党総裁選挙までも流動化させかねない。対立候補が乱立し得るからだ。
 

これに対して1年半の延期、つまり17年4月の実施なら、それまで政局選択の自由を安倍が獲得できることになる。安倍はアベノミクスを成功させ、16年夏にはデフレ脱却を宣言できる可能性がある。デフレ脱却を旗印に衆参ダブル選挙を断行すれば長期政権は確実となる。1年半の延期で政局の舞台は暗転を避け、希望が見えてくるのだ。


今政局をやっているときではない。国民の期待は好むと好まざるとにかかわらず、アベノミクスの成功しかないのだ。

   <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)
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