2014年11月10日

◆資本主義をリセットしよう

平井 修一



「ノーベル経済学賞は仏ティロール教授に」(日経10/13)から。

<【ロンドン=小滝麻理子】スウェーデンの王立科学アカデミーは13日、2014年のノーベル経済学賞を仏トゥールーズ第1大学のジャン・ティロール教授(61)に授与すると発表した。同アカデミーは「市場の力や規制についての分析」を授賞理由と発表。同氏の産業組織論や規制理論での研究を高く評価した。同氏は1953年フランス生まれ>

どんな研究なのか、あまり情報がないので調べたら、ブルームバーグ・ニュース10/13にコラムニストのマーク・ギルバート氏が「ボーナスは悪になり得るとティロール教授」の見出しで以下を寄稿している。

<ジャン・ティロール教授は、授賞理由となった「市場と規制」だけでなく、「経営幹部の報酬とボーナスのカルチャー」に関する分析も過去に発表している。業績連動型の報酬は短期主義に陥りやすく、言い換えれば、バンカーの賞与は悪になり得るというのがティロール氏の結論だ。

「ボーナスカルチャー:競争的な報酬、スクリーニングとマルチタスキング」と題するプリンストン大学教授との共同論文(12年4月公表、13年3月改訂)は、奨励金が勤労者の仕事への取り組み方をゆがめ、望ましくない結果をもたらす危険があると分析している。

「最も有能な人材の獲得競争の結果、成果主義に基づく報酬や他の強力なインセンティブへの依存がエスカレートし、長期的投資やリスク管理、社内協力といった容易に達成できない仕事を避ける傾向が助長される。最も利益を生む人材の獲得競争とインセンティブ報酬の体系が相互作用し、職場の倫理観が損なわれる恐れがある」という>

小生は資本主義市場経済をあまり好きではないが、これに代わるシステムがないから支持してはいる。自由放任すると米国のようにトップとボトムの所得格差がどうしようもないほどに広がってしまうから、ある程度の規制とかルールは必要だと常々思っていた。ティロール教授はそれを学術的に説いたのだろう。

戦前の日本では、部長は平社員の10倍、社長は100倍の給料だった。平が月給30万円なら、部長は300万円、社長は3000万円。接待交際費なんていう概念はなかったから、ポケットマネーで部長は部下におごり、社長はさらに運転手、女中を雇い、書生やらお妾さんの面倒も見た。山本夏彦翁がそう書いていた。

米国では大企業のトップは平の1万倍の30億円とかの月収をとる人も珍しくないのではないか。セレブはノブレス・オブリージュで慈善事業に拠出をするそうだが、それでも1万倍というのはインモラルだ。公序良俗を毀損する。ティロール教授は、そうした資本主義の“行き過ぎ”とか“暴走”に警鐘を鳴らしているのかもしれない。

カミサンによると精神病に治療において重要な役割を担っているのは臨床心理士なのだそうだ。

「普通の病気は血圧とか心電図とか血糖値とかMRIとかのいろいろなデータをもとに病名を判断する。ところが精神病はね、データが何もないの。そこで臨床心理士が患者に問診したり、家族などから話を聞いて、この患者は統合失調症、あの患者は発達障害などと判断するのよ。

そうなれば医師や看護師が病名に従って適切な治療をしていくわけ。あいつら物凄い記憶力で、患者の名前と何を言ったかを全部記憶している。記憶術を身に付けているのよ」

臨床心理士をカミサンが「あいつら」と呼ぶのは、同僚だし、さらに月1回ほどカミサンが講師を務める患者向けの勉強会(データがない世界だから暗中模索、患者とともに病院も学ぶ場)にお目付けのように同席するから、不気味であり、かつプレッシャーになっているからだ。抜群の記憶力のある臨床心理士が苦手なのだ。

経済分析には各種データがあるけれど、市場に吹く風とかマインドに左右される部分は結構大きいのではないか。いわゆる「街角景気」とかの庶民感覚(特にタクシー運転手)が正確に「今」と「これから」を語っていることがある。

経済学者はマクロ、臨床心理士のような経済評論家、エコノミストはミクロの分析、判断という大雑把な区分はあるかもしれないが、大筋、戦略に影響するのは病名を決めるマクロ経済論だ。ところが有効な理論を打ち出した経済学者はどうも少ないようで、欧州は経済不振から脱却できずにいる。

代々のノーベル経済学賞受賞者やエコノミストを集めて「資本主義をリセットしよう 今、世界は何をなすべきか」の提言なり理論構築ができればいいのだが。(2014/10/15)

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