2014年11月12日

◆「ヴェルサイユ便り」A

寺田 輝介
(安保政策研究会常務理事・元メキシコ駐在大使  元韓国駐在大使)

―フランス外交注目点― 
 
当地でフランス外交を見守っていて気が付いたことは、フランスがドイツに並々ならぬ注意と関心を払っている姿である。

ヴェルサイユ滞在中筆者が読み続けた「ル・モンド」紙を例にとっても、ドイツについてはよく記事がでるものの、英国或いはイタリア、スペイン等に関する記事は少ない。

同紙を通しても、フランスはドイツに「経済大国」の地位を不承不承認めつつも、EU内では「外交大国」、「軍事大国」の座を死守するとのメセージが伝わってくる。

7月22日付「ル・モンド」が報じたEU委の主要ポストをめぐる仏独の利害対立を報じた記事は興味深いものであった。

簡単に紹介すると、フランス政府がEU委員長の交代に伴い、モスコヴィチ元蔵相をEU委経済金融委員に推薦し、EU内の地歩を固めようとしたところ、ドイツ政府がオランド政権の蔵相として「GDP比3%」への財政赤字圧縮目標を達成で出来なかった政治家にEUの経済・金融を任せられるかと、強硬に反対していると報じた記事であった。

さて、フランスが「外交巧者」であることは、既に見てきたところであるが、「軍事大国」ぶりは何処で見られるのであろうか。

7月17日から19日までオランド大統領は駆け足で象牙海岸、ニジェール、チャドの三ヵ国を訪問した。

日本では話題にのぼらなかった訪問であったと思われるが、この訪問は、実はフランスのアフリカにおける戦略的展開、具体的には、アフリカ・サハラ以南の五カ国を中核とし、イスラム過激派の南下を阻止することを目的とする集団安保体制の構築を目指すものであった

アフリカの地図を広げてみると、北アフリカのアルジェリア、リビアの南部からサハラ砂漠が拡がり、旧仏領モーリタニア、マリ、ニジェール、チャドに繋がっていることが分かる。

リビアのカダフィ独裁政権の崩壊後、南部リビアからサハラ砂漠を抜け、大西洋に向かう「砂漠ハイウエー」が出現、武器、麻薬、不法移民、イスラム過激派の通り道になったと言われている。

オランド政権は、イスラム過激派がこの「砂漠ハイウエー」を使い、旧フランス領アフリカに浸透することを防ぐため、サハラ以南の旧仏領五ヵ国(モーリタニア、マリ、ニジェール、チャド、ブルキナ・ファソ)を取り込み、フランスも総兵員3,000名のテロ対策部隊を現地に分散常駐せしめ、以てアフリカ版「マジノ・ライン」とも称すべきサハラ以南防衛線の構築を決定したのである。

この決定の背景には、旧植民地に埋蔵されている地下鉱物資源、特にウラニウムをフランスのために確保するとの思惑が秘められていることは言うまでもない。

フランスの対アフリカ戦略的展開は、EUの「経済大国」を自任するドイツが到底執りえない戦略であるが、フランスの軍事力には国力から見て物理的限界がある。

7月14日付「フィガロ」紙が、陸軍参謀長は「国軍は120%の能力を出し切っている」旨発言したと報じていることは、フランスの「軍事大国」の限界を示す一例である。<続く>
(2014/9月8日 記)

この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック