2014年11月17日

◆勃興中国に日米豪包囲網でストップ

杉浦 正章




孤立化で限界露呈の習近平路線
  


一連の首脳会議を俯瞰・分析する


中南海に米大統領・オバマを招き入れての“大歓待”とこれに先立つAPECでの「朝貢外交」は、国内向けに中国国家主席・習近平の地位を確立するための演出であった側面が濃厚だ。


外交・安保面では「中華民族の偉大なる復交」という習近平の大国主義に、米国が日米豪同盟を基軸に対峙し、これを封じ込める姿がより一層鮮明となった。


APEC、ASEAN、G20という一連の首脳会議を俯瞰・分析すれば、中国孤立化・封じ込めの流れが一段と鮮明化し、中国が国際社会からその膨張路線の“修正”を迫られている姿が浮かび上がった。


オバマのブリスベン演説は、勃興する大国・中国に対し既存の大国米国が明確にストップをかけたものに他ならない。一見緊張緩和に見える極東情勢も、力による米中対峙の上に成り立っている姿を露呈させた。


APEC史上見たこともないけばけばしい朝貢外交的な演出、オバマだけを特別扱いして米中2大国を見せつける演出、首相・安倍晋三と会って靴下の匂いを嗅いだような顔をする演出、これら全ては一体何であったかと言えば、国内対策である。


中国国家主席・習近平は国内基盤確立の総仕上げにAPEC首脳会議をフル活用したのだ。まだそれだけのことをしなければ国内的な支配の構図が確立できない脆弱な一面があることを意味する。しかしその戦略が中国外交で成果をおさめたかと言えば、限界を露呈したと言わざるを得まい。
 

その証拠にAPECで米中首脳が一致したのは地球温暖化対策での新目標の設定と偶発的軍事衝突防止策くらいのものであり、あとは齟齬(そご)が目立った。習はその口癖である「太平洋は米中両国を受け入れる十分な空間がある」と、日本などは歯牙にもかけない新型大国関係論を繰り返したが、オバマは乗らなかった。


香港の民主化デモを巡って透明な選挙を主張するオバマと、これを内政干渉として排除する習の主張は平行線をたどった。オバマは東・南シナ海への中国進出を意識して「航行の自由」を主張、中国の挑発的行動を強くけん制した。


東シナ海では日米との偶発的衝突防止のメカニズム設立へと動いたが、南シナ海では具体化は足踏みしている。中国は明らかにフィリピン近海での滑走路建設など実効支配の確立までの時間稼ぎをしているのだ。


一方で中国は豊富な資金を背景に経済対策でASEAN分断への動きを強めた。アジア・インフラ投資銀行の設立で、日米主導のアジア開発銀行に対抗、ミャンマーなどへの経済援助でASEANを切り崩す動きを露骨に示した。


これに対してオバマは、北京、ミャンマーでは鳴りを潜めるかのようであったが、ブリスベンで習の「供応接待」を全て忘れたかのごとき演説をした。重心をアジア・太平洋地域に移す再均衡(リバランス)の維持を明言するとともに、感情的な表現を使ってまでも、太平洋国家としての立場を明確にさせた。


感情的表現とは「太平洋国家として米国は人命と財産を捧げてきた。誰も我々の決意を疑うべきではない。米国のアジア太平洋地域における指導力発揮は私の外交政策の基盤だ」とするくだりである。


また「アジアの安全保障の秩序は、大国の小国に対する威嚇などではなく、国際法や同盟による安全保障に基づかなければならない。米国は同盟国との協力を強化し続ける」と言明、露骨な中国の海洋進出をけん制した。


これらの発言は習の太平洋2分割論への明確なる反論を意味するものであった。また日本、韓国、フィリピン、豪州の各同盟国を列挙し、その重要性を指摘。とりわけ日豪両国に関して「日本とは日米防衛協力の指針(ガイドライン)を見直し、米軍を再編する。豪州では、地域安定のため米海兵隊員が駐留する」と軍事協力の推進を強調した。


根底には中国の対日軟化などは「一時的な調整」とみなして信用せず、中長期的には膨張路線に戻るとの確信がある。


オバマのアジア回帰路線は明らかに口先だけではなく本気であることを物語っている。その締めくくりが日米豪首脳会談であろう。


同会談では中国の軍事的な台頭によるアジア太平洋地域情勢の変化に対応し、安全保障分野を含めた連携を強化する方針を確認した。三か国は合同軍事演習などで安全保障上の結びつきを強める。日豪は潜水艦共同開発など準同盟的な色彩を一層強めた。


米国はウクライナ問題、イスラム国対策など中東・ヨーロッパでの対応を迫られており、二正面、三正面作戦を強いられているが、基本はリバランスにあることが鮮明となった。


オバマは首相・安倍晋三の対中関係、日韓関係是正の動きを歓迎しているが、これは日中が「予期せぬ軍事衝突」を起こして、介入せざるを得なくなることを危惧(きぐ)したものであろう。


基本はリバランスにあり、その路線を推進するためにも、同盟国には「コントロールされた中国との対峙」の維持を求めたいのであろう。安倍にとっては、外交・経済で対中緊張緩和を取りつつ、安保では米・豪との結びつきを強め、フィリピン、ベトナムへの軍事支援などを推進してゆくことになろう。


オバマ発言は安倍の地球儀俯瞰外交の路線とも合致することが証明され、今後も継続が期待されるところであろう。

     <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)
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