2014年12月07日

◆拍子抜けした再生の意気込み

阿比留 瑠比


拍子抜けした再生の意気込み 慰安婦問題具体論語らず 「開かれた言論」はどこに

5日の朝日新聞の渡辺雅隆新社長の就任記者会見には、少々拍子抜けがした。朝日新聞による一連の慰安婦誤報と、東電福島第1原発事故をめぐる「吉田調書」に関する重大な過ちを受けて人事を刷新し、再生への道筋を示すための記者会見にしては質疑はかみ合わず、新社長による踏み込んだ答弁もなかった。

「これまでの手法や意識を根本的に見直す」「根底から朝日新聞社を作りかえる」「創業以来の危機」

渡辺新社長は冒頭、このように力強く語った。ところが質疑に入り、慰安婦問題の各論について聞かれると、具体的なことはほとんど語らず、「(社外の)第三者委員会の結論が出る前に話すのは差し控えたい」と言及を避けた。

平成3年8月、母親にキーセン(朝鮮半島の娼婦、芸妓(げいぎ))に売られた韓国人元慰安婦を「女子挺身隊の名で戦場に連行」と書いた元朝日新聞記者、植村隆氏に関する対応も不可解だ。

朝日新聞を取材窓口としている植村氏が産経新聞の取材申し込みを拒否する一方、米紙のインタビューは受けて「(右派が)われわれをいじめて黙らせようとしている」などと語っていることをただすと、高田覚(さとる)社長室長は部下に事実関係を確認の上、こう答えた。

「植村氏は本人の意向で取材を受けるかどうか意思決定している。私どもは取り次ぎだけをしている」

それならば朝日新聞がOB記者の取材窓口となっている意味がない。渡辺新社長が社内改革の指針として掲げた「開かれた言論」が疑わしくなる。

朝日新聞が慰安婦問題で16本の記事を取り消し、後に謝罪した吉田清治氏の証言についてもいまだ腰が定まっていない。
 
朝鮮半島で女性を強制連行して慰安婦にしたという吉田証言を虚偽と判断したにもかかわらず、同じ吉田氏が男性を6千人弱も強制連行したとする記事はなぜ取り消さないのかと問うと、高田室長の回答はまたしてもこうだった。

「第三者委員会の詳細な検証を待っている」

だが、男性強制連行証言を残すと決めたのは朝日新聞であって第三者委員会ではない。客観的であろうとするのはいいとしても、丸投げにもほどがある。

朝日新聞の第三者機関「報道と人権委員会」(PRC)は11月12日、朝日新聞の吉田調書報道について「重大な誤りがあった」との見解を発表した。ただ、執筆した記者らの「意図」に踏み込んでいないため、今後も同様の問題が再発する懸念を指摘すると、高田室長は強い反応を示した。

「本社としては、意図的に捏造(ねつぞう)したわけではない」

とはいえ、当事者が否定したからといって疑念が晴れるとはかぎるまい。

そんな中で、すとんと腑に落ちたのが、読者の批判が大きくなった理由に対する販売畑出身の飯田真也新会長の次の意見だった。

「危機管理の上でも、紙面作りの上でも、社会からどう考えられるかという視点が十分でなかった」

同業者として、他山の石としなくてはならないと感じた。
産経ニュース2014.12.6

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