2014年12月15日

◆トイレット・ペーパー

渡部 亮次郎



昔、モスクワの迎賓館で、トイレット・ペーパーにはボールペンで字が書けるほど硬かった。そんな話をメイル・マガジンに書いたら、記者の先輩古澤襄さん(元共同通信社常務理事)が、今はそんな事はなくなった、と教えてくださった。

<新聞紙のようなトイレット・ペーパーは古い話。8年前にはブリヤート共和国でお目にかかったのですが、イルクーツク、ハバロフスク、ウラジオストックでも柔らかい紙。ただ、幅が狭い。

3年前に行ったら日本と同じトイレット・ペーパーでした。幅も広くなっていた。韓国から輸入しているとの話。モスクワは、それ以前から柔らかいペーパー。ドイツあたりから輸入しています。何しろ石油や天然ガスを売って、ユーロやドルをふんだんに持っていますから・・・。>

古澤さんは父親をシベリア抑留で失っているので、ロシアへ度々鎮魂の旅をされるから、私の周囲では最もロシア事情に詳しい方である。庶民のトイレがそうならば、迎賓館だもの、字は書けなくなって、目出度し、目出度しでした。

ロシア人は社会主義を放棄して初めて尻の平和を得たと言うわけか。とにかく「紙」と言うものは、扱いが厄介だ。大事、無くてはならない品にして、しかし必ず捨てなければならない物だからだ。社会主義のうちは尻まで面倒みられない? いな、技術が無かった、或いは軍備に追われて、尻に手が回らなかった。

最近の日本では、トイレット・ペーパーなど話題にもならないが、私がNHK大阪放送局に赴任したときだから、昭和48(1973)年夏、田中角栄内閣の下で大阪から「トイレット・ペーパー騒動」が始まった。知らない方も多いだろう。

<日本国内でもっとも広範に広まった流言に、オイルショックによるトイレット・ペーパー騒動がある。

1973年、あるスーパーの宣伝用の広告用紙に(激安の販売によって)「紙が無くなる!」と書いたところから始まった。(確か大阪が初)石油ショックという背景もあり、紙がなくなってしまうことは本当かもしれないということから連鎖的に広まり、マスコミにもとりあげられて全国的に広まった。パニックの火付け役は新聞の投書だとする説もある。

ただこの当時、日本の紙生産は安定しており、実際には生産量自体は同流言飛語が全国的に広まるまで、ほとんど変っておらず、パニックが発生した後は、むしろ生産量増加も行っていた模様である。

マスコミ報道や流言飛語によって不安に駆られ、高値でたくさんのトイレットペーパを買った消費者は、トイレに山積み保管していた。

それまでトイレット・ペーパーは主に特売用商品(消費者を商店に足を向けさせ、客足の増加を見込む)として扱われていたが、この当時は一変して定価どころか倍の値段をつけても売れる程だったという。このため商店は在庫確保に奔走し、結果として問屋在庫すら空になる程だったとされている。

このような連鎖的現象により、最初の内こそ楽観視していた人までもが実際に店頭からトイレット・ペーパーが消えたため確保に走ったといい、小売店では店頭にトイレット・ペーパーが並ぶや否や客が押し掛け、商品を奪い合って殴る蹴るの喧嘩を始める人すら見られた。デパートでは余りの混雑振りにトイレット・ペーパー販売のたびに迷子も多数発生した。>
(ウィキペディア)

この頃はまだウォシュレットが全く普及していなかった。某社が試作を始め、高名な女流作家に使ってもらったところ、吹き出したのが熱湯。作家が火傷をして大怒り、という話が記者仲間に膾炙していたものだ。

<トイレット・ペーパーは14世紀に中国で最初に生産されたとされている。その当時は皇帝用であった。(非水洗)。

便所用につくられた初めての工業製品は1857年にアメリカ合衆国のジョセフ・カエティによってつくられた。カエティの名前はすべての紙に印刷された。

トイレット・ペーパーやちり紙が普及する前は、裕福な人は羊毛、レース、麻を用いていた。そうでない人は、直接手を用いていたか、川で排便したか、ぼろ布、かんなくず、草、干し草、石、砂、苔、水、雪、トウモロコシの皮、貝殻などを用いて拭いていた。古代ローマでは海綿を用いていた。

帝政ロシアでは、部下が皇帝の用いるトイレット・ペーパーに皇帝の刻印を押した。ヘンリー8世の宮廷では、その手で王族の臀部を清潔にする便所担当の廷臣がいた。

安全上の理由のため、特に信頼された廷臣のみが選ばれた。また、王と毎日2人っきりになる好機であるので、影響力を得たいために部下にこの仕事は望まれた。>(ウィキペディア)

地球上のある地域では屋外で用便後、尻に砂を巻き上げて終わり、というところがある。その際使う手は「左手」。だから左手は不浄の手。遊牧を止めて鉄筋のアパートで水洗トイレをどうぞ、と政府が言ってもなかなか入らない、と某産油国の役人がこぼしていたっけ。

<日本ではどれもほぼ一定の大きさであって、便所の各個室備え付けのホルダーにとりつけてある。国によってはロールがかなり大きく、その場合はホルダーもそれに対応したものとなっている。また、これが個室の入口に設置され、必要分を取ってから個室に入るようになっている場合もある。

各国の紙資源の状況、下水道の状況により、用いられている紙は違いがある。一般的には柔らかい紙が使われるが、硬い紙が一般的に用いられている場合には同時に処理せず、別に汚物入れに捨てるように指示されている。

日本では、昔はB5版サイズ程度の大きさの、通称ちり紙が利用されていたが、水洗便所の発達に伴って巻き取り式の物が普及した。その用途のために次の条件を満たす必要がある。

1..肌に触れて不快感がないこと。最近では2枚重ねのものが増えてきている。

 2.強度があること。使用中に崩れてしまうと不快である。

 3.吸水性に優れていること。

 4.水に濡れると繊維がほぐれること。下水処理が行いやすくする必要がある。また、下水処理を行うバクテリアなどにとって害のある物質が含まれないようにしなければならない。

 5.コストが安いこと。消耗品であるので、低コストである必要がある。また再生紙がよく使われる。

この他にも使用者の利便性のためにミシン目などがいれられていたり、芳香を放つような物も作られている。

トイレット・ペーパーには、厚紙で芯を作ってある物と、芯が無く最後まで使いきれるものがある。 芯の無い物は特にコアノンロール等と呼ばれ、環境問題や資源問題などの点から注目されている。

が、芯のあるものにしか対応していないペーパーホルダーも多い。(芯なしの場合、中心一杯まで紙を巻いたものが多く、中心の小さい穴に細い鉛筆のような軸を入れてからホルダーに装着するが、中心部の穴を芯の太さ程度まで大きくして、通常の芯ありホルダーに装着可能なものもある)

静岡県富士市で32%を占める。(2002年)>(ウィキペディア参照)

このところ大変な原油高のためトイレット・ペーパーもティッシュ・ペーパーもかなり値上がりしているが、騒動にはなっていない。大衆が賢くなったせいもあるが、何しろ33年前のオイル・ショックというものが、日本人にとって初めて経験するものだったからだ。(2006執筆)

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