2014年12月21日

◆中国製造業の「ゲンバの凋落」

平井 修一



松本晋一・安田製作所代表取締役の論考「実力よりも高給なのになぜかワーキングプアの中国 現地で目にした『ゲンバの凋落』は我が身を映す鏡」(ダイヤモンドオンライン11/26)から。

<中国の製造業には、戦略の転換が迫られている。(金型設計について)純粋に設計スキルや製造のレベルを日中で比較してみると、どうだろうか?

双方の技術者同士の意見も加味した上での筆者の所感をお伝えすると、日本の金型設計者の実力を10とした場合、5から6くらいの実力はありそうだ。この数値を高いと捉えるか低いと捉えるかだが、筆者はこの点数以上に悲観的な見方をしている。

それは、日本に対してではなく中国に対してだ。同一形状であれば、CADのテンプレートを活用して超高速で設計可能だが、実態は設計をしているのではなく、「作業」をしているに過ぎない。

「なぜ、この寸法になるのかわかってクリックしていますか?」と尋ねると、「それは必要ない。システムが計算してくれる」と中国人設計者は答えた。彼は、設計の論拠や中身を知らなくても、CADの操作やテンプレートの中味を理解していれば、設計できると考えている。

これは設計ではない!?だが、彼はこれが設計だと思っている。彼の評価は、設計の中味を理解して難しい金型の設計ができるようになるかではない。何型設計したか、何枚出図したかだ。中国でも、行き過ぎた成果主義が設計力の低下を招いている。

にもかかわらず、彼らの報酬は年々上がり続ける。実力相当の上昇ではない。中国政府の所得倍増計画に準じた最低賃金上昇政策の影響や、過度な人材の奪い合いによる売り手市場の影響などにより、人件費が向上している。

グローバル化とは、それほど甘いものではない。そう遠くない将来、「中国人の給料は実力のわりには高い。同等レベルであれば、タイ人の方が安い」と言われるような過当競争の輪に、彼らも巻き込まれていくだろう。そう、ソニーやパナソニックを苦しめたサムスンが、小米に苦しめられている構図と同様に。中国も「明日は我が身」だ。

工作機械の発達により、職人にしかできなかった加工が機械さえ導入すれば可能となった。日本と中国の差は縮まる一方だ。一見すると確かにそうだ。しかし、見誤ってはならない。

一発目の加工の差は、確かに急激に縮まりつつある。しかし、問題は「玉成」と呼ばれる変更対応だ。最終形状が固まってから、成形トライを実施するのではない。成形トライ品を確認しながらトライ1、トライ2と徐々に完成度を上げていく。

最初の金型の完成度が高くないと、その後の追加工に耐えれなくなってしまう。思いのほか、量産の途中で型が壊れてしまうような現象が増えている。「ラインが止まるくらいならば、型費が1割2割、高くでもペイする」と話すメーカーも増えてきている。

なかなか中国で技術が育たない理由の1つに、答えをすぐに求めたがることも関係していると思う。トラブルが発生すると、「どうすればいいか教えてほしい」と熱心に質問をする。その答えを教えるとすぐに実行するので、「案外、中国人は素直だ」と思う。

しかし、「なぜ、その解決策になるのか?」と技術的根拠は聞いてこない。そう、問題が生じる度に、答えを知り解決できさえすればよいと思っている。これでは、技術は育たない>(以上)

中共がハイテク工業分野の技術に触れてから30年ほどしかたっていない。技術は名人により何代にもわたって引き継がれていく。日本の場合、近代工業では100年以上の技術の蓄積がある。1543年に鉄砲が伝わると、瞬く間に世界最大の生産国になってしまったから、それからなら400年以上の蓄積だ。

デンソーという会社のサイトから。

<株式会社デンソーと、デンソーの技術・技能研修を担当する株式会社デンソー技研センターは、(2013年)7月2日から7月7日までドイツのライプツィヒで開催された第42回技能五輪国際大会において、「プラスチック金型」「CNC旋盤」の2職種で金メダルを獲得しました。

デンソー・タイランドに所属するタイ代表は、カナダ・カルガリー、イギリス・ロンドンで行われた国際大会でも「CNC旋盤」職種で金メダルを獲得しており、3大会連続の金メダルとなりました。

デンソーは、1971年の第20回大会に初めて国際大会に出場し、これまでの通算成績は金メダル28個、銀メダル15個、銅メダル13個です。

デンソーは、技術を形にする高度熟練技能とノウハウを、技術開発とともにものづくりの両輪と考え、デンソー技研センターの技能者育成部門の前身となる技能者養成所を1954年に開設して以来、技能者育成と技能の伝承に力を入れています。

技能五輪の参加目的は、優秀な成績を挙げるだけでなく、技能五輪の訓練を通じて、若い技能者の心・技・体を磨き、将来の高度熟練技能者になりうる人材の計画的な特別訓練により、技能を伝承することです。

デンソーは今後も、技能五輪への取り組みを通じて、若手技能者育成と技能の伝承を継続していきます>

金メダリストは誇らしげだ。

「これまで支えてくれた方々への感謝の気持ちでいっぱいです。特に、ずっと指導してくれた3人のコーチへの感謝は言葉にできません。この金メダルは、みんなの力で獲ったものです。本当にありがとうございました」

「目標を高く立てて訓練してきたことが実を結び、とてもうれしいです。特にスピードには力を置いて練習してきました。タイでの基礎的な訓練や日本で研修の積み重ねを通して自信を持つことができ、金メダルにつながったと思います」

トップクラスの技術力があれば高くても世界で売れる。日本は価格競争から抜け出している。中共は30年で経済が失速し、おそらく不況の長いトンネルに入ることになる。一流の技術を蓄積する前にブレーキがかかってしまった。中共製=安いだけが取り柄の粗悪品のイメージは10年、20年ではとても払拭できないだろう。(2014/12/19)

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