2015年01月19日

◆難民来襲という恐怖に備えよ

平井 修一



川口マーン 惠美氏の論考「大型化した密航船は大晦日も元旦もEUを目指す 暴利をむさぼる密航あっせん業者、後を絶たない難民の対策で対立が深まるEU諸国」(JBプレス1/14)から。

<12月30日、モルドバ船籍のボロ貨物船「ブルースカイM」号のSOSを受けたとき、ちょうどイタリアの沿岸警備隊は大わらわだった。28日にアドリア海で火災を起こしたフェリー「ノーマン・アトランティック」号の乗客の救助が、荒海の中で40時間にもわたって続けられていたのだ。

*シリア難民を満載して地中海を暴走した貨物船

しかし、ブルースカイM号の方も、放っては置けなかった。最初の情報では、その貨物船には1000人近くの難民が乗っているばかりか、船の舵は自動操縦モードに設定され、船員なしで、アドリア海をイタリア東海岸の岸壁に向かって突き進んでいるということだった。船を止めなくては岩礁に激突する。

沿岸警備隊は慌てて駆けつけたものの、時化ていたため、救助は困難を極めた。ブルースカイM号に船を寄せることができず、ヘリコプターで空から6人の隊員を甲板に下ろした。

そして船のエンジンを停止し、固定されていた舵を解除し、航路を変更し、ようやくエンジンを再スタートすることができたときには、すでに岩礁まで8キロという地点だったというから、まさに危機一髪であった。31日の朝3時半に、ブルースカイM号は、無事にガリポリ港に入港した。

後の調べによると、乗っていた人の数は768人で、ほとんどがシリアからの難民だった。彼らは密航業者に1人当たり4500から6000ユーロ(約63万〜84万円)ものお金を払って、シリア国境からほど近いトルコの港で老朽貨物船に乗り込んだ。雇われ船長はやはりシリア人で、1万5000ドル(約177万円)の報酬と、家族を乗船させるという条件で操縦を引き受けた。

最終的に、船長も家族とともに難民としてイタリアに逃れるつもりだったらしく、密航業者との打ち合わせ通り、沖合で船の操縦を放棄し、自動操縦をセットして難民の中に紛れ込んだ。その瞬間から全員が、荒海を勝手に突き進む船と運命を共にすることになったのだった。

実は、その前日の午後、不安を覚えた難民の1人がギリシャ警察にSOSを送り、船が重武装した人間に操縦されていると報告したという。それが本当なら、最初は、密航あっせん業者の一味が同乗していたのだ。

港湾警察の発表では、通報を受けた後、ヘリコプター1台と巡視船2隻、フリゲート艦1隻を派遣し、コルフ島沖でブルースカイMを点検したが、何も異常はなかったので、航行を継続させたとのこと。しかも、公海に出るまで、フリゲート艦で護送までしたという。

ただ、難民が無事救助されたあと、船長がつかまり、事情聴取をしたところ、話はだいぶ違ってきた。

船長によれば、嵐を避けるため船をコルフ島の近くに避難させていたとき、ギリシャの港湾警察から無線が入った。しかし、船長が「何も異常はない」と言ったら、嵐にもかかわらず、すぐにイタリア方面に進路を取るように促されたという。

いずれが正しいにせよ、このニュースにドイツ人を始め、EUの住人はメチャクチャ腹を立てた。貨物船が768人もの人間を積んでいたのに、何も異常はなかったとするのは、ギリシャの警察が密航あっせんの犯罪組織とグルになっているとしか考えられない。

ギリシャは賄賂の横行する国として名高いが、経済の破綻でこれだけEUの他の国に迷惑をかけ、援助を受けているのだから、少しは規律が締まってきたかと思っていたのに、「何も変わっていないではないか!」

*押し寄せる難民を助けざるを得ないイタリア

ところが、厄介はこれだけでは終わらなかった。そのあくる日の元旦、イタリアの沿岸警備隊にまた通報があった。今度はシエラレオネ船籍の「Ezaleen」号が、難民450人(実際は360人だった)を乗せたまま、イオニア海で漂流しているという。難民の1人が、船員が逃走したとSOSを発信したらしい。

スカイブルーM号とは違い、Ezadeen号は動いていなかった。燃料切れか、故障かはわからないが、まるで幽霊船のようにただ流されていた。同船は3日の日、イタリア沿岸警備隊の手によって、ようやくカラブリア州(長靴の先っぽ)の港に到達した。

この立て続けに起こった2件の遭難騒ぎで、EUの難民問題は新たな局面を迎えた。船でアフリカからやってくる難民は、今までもほぼ全員、密航をあっせんする違法業者によって、危険な船で危険な海に送り出されてきたが、その手法が急激に変わったことが確認されたのだ。

これまでは主に、漁船や、大きなゴムボートが使われていたが、まず、去年の秋ごろより船が巨大化した。

今回のスカイブルーM号もEzaleen号も、築4、50年のボロ船で、しかもEzaleen号は家畜運搬用の船だったが、ともあれ、今までは、リビアからイタリア領としては最短のランベドゥーサ島へ向かうぐらいしかできなかった難民船が、シリアからイタリアへ直接人を運べるようになった。

しかも、一度に何百人も積めるのだから収入が莫大。そのうえ、冬でも航行が可能だ。1人5000ユーロというのは、東京ドイツ間のビジネスクラス往復の飛行機代よりも高い。いまや巨大ビジネスだ。

そこで、たいていのあっせん業者は、沖合に出たところで、自分たちだけ小型のモーターボートなどで逃走し、遭難のSOSを出し、あとはイタリア海軍に救助させるという方法を取るようになった。

安い老朽貨物船なので、船など放棄しても暴利は残る。ひどい業者になると、船を故意に壊したり、乗客を海に飛び込ませたりして、イタリア海軍が難民船を追い返せないようにしていたという。

EUのジレンマは、イタリア軍が救助をするから、それを当てにしたこういう手法が成り立つという事実だ。とはいえ、イタリアとしてはもちろん、助けないわけにはいかない。

EUでは、難民の保護や、その後の審査は、難民が入国した国の管轄であると決められている。ただ、地中海を渡ってくる難民のほとんどがイタリアに流れ着くのだ。結局、難民救助が、そうでなくてもお金のないイタリアの手に負えなくなってしまって、すでに久しい。

また、努力しても救助の追い付かないときもある。一昨年10月、難民船が火災を起こして沈没し、360人もの人間がランペドゥーサ島の近くで溺れ死んだとき、EU市民のショックは大きかった。イタリアはそれ以来、前にもまして、救助に力を入れなければならなくなった。探して助けるという状態が、常に続いた。

それから14カ月、イタリア当局が遭難から救った難民の数は、17万人に達する。難民収容所は、すでにパンクし、イタリア当局は途方に暮れている。しようがないから、どんどん、イタリアを通過させて、北に送り込む。難民の希望国はどのみちイタリアではなく、ドイツやスウェーデンなのだ。

もちろん、ドイツとスウェーデンはそれが気に入らない。結局、EUの間では、難民支援とその経費の分担を巡って、ずっと激しい対立が続いていた。いずれにしても、密航者は後を絶たない。

*巨大なビジネスになった密航あっせん

これほど遭難の危険が大きいのに船に乗り込むということは、祖国に留まる危険がそれに拮抗して大きいという証拠だ。もちろん、海の藻屑となった人たちも相当数に上るだろう。今、シリア人の命は、恐ろしいほど軽い。

一方、密航のあっせんは巨大な黒いビジネスだ。なぜ、こちらの方を取り締まれないのかというと、おそらく世界の麻薬の取引や、売春目的の人身売買を取り締まれないのと同じ理由だ。すでに大きな国際犯罪組織に成長しているからだろう。

とにかく、どうにかしなければならないということで、去年の10月31日、EUの欧州対外国境管理協力機関が重い腰を上げて、あたらしい難民救助プログラム(Triton)をスタートさせた。欧州対外国境管理協力機関とは、EUの国境警備を司る機関で、20の加盟国が装備と人員を持ち寄って運営している。

Triton作戦をスタートする本当の原因は、イタリア海軍があまりにもたくさんの難民を救い過ぎ、密航あっせんの犯罪者たちのモチベーションを異常なまで高めてしまったから、それを是正するためだと言われている。

とはいえ、ブルースカイM号やEzaleen号のように、SOSが入れば放っておくわけにはいかないから、欧州対外国境管理協力機関の希望は達成できるかどうかわからない。

大きな貨物船に乗っている難民は、食い詰めた人々というより、かつては財産を持ち、豊かに暮らしていた人たちも多い。そうでないと、1人5000ユーロなど払えるわけがない。

彼らの祖国は荒れ果て、安全に生きていける場所がなくなってしまった。
だから、この寒空に、身一つでボロ船に乗り、未知のおぼろげな陸地に向かって荒海に乗り出す。この悲劇が、ヨーロッパの目と鼻の先でしょっちゅう起こっている。

しかし、そこまで追い詰められた人の感情や苦悩を、私はうまく想像することができない。助けられた人々の、険しく、絶望的な表情を見ると、ふと、思考が麻痺したようになってしまう。特に幼い子供たちの姿には、私をも含めた全世界のすべての大人が彼らを裏切ったように思えて、ただ情けない。

2015年が、少しでも良い年になってほしいという願いが、年の初めから萎んでいくのは悲しいが、EUとその周辺の状況は、決して楽観できない状態だ>(以上)

中東やアフリカの少なからぬ国がイスラム原理主義者により破壊されている→ 危険な祖国から逃れる難民が欧州に上陸する→ 移民一世はともかくも二世、三世は欧州社会に同化できずに苛立ちを募らせる→ 原理主義テロリストに賛同してテロや戦闘で欧州のみならず世界を破壊する。

残念ながら世界はこういう流れになっている。

中共の国土の荒廃は著しい。土壌、河川、海洋、空気は回復不能なほど汚染された。政治は野蛮な独裁で、「習近平の24字」、すなわち「富強、民主、文明、和諧、自由、平等、公正、法治、愛国、敬業、誠信、友善」とは裏腹の状態だ。経済も下降し始めた。

中共は亡国に向かっている。

中共の権力闘争が武力闘争に転じれば、難民と化した多くの人々が海を渡ってくるだろう。どこに向かうのか。まずは日本しかない。それから米国、カナダ、豪州などへ向かうかもしれないが、欧州でのイタリアの役割をアジアで演じるのは日本である。イタリア、欧州の今日の苦悩は明日の日本の苦悩である。対策を講じる必要がある。(2015/1/16)
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