2015年02月12日

◆今年も世界は憂鬱そう

平井 修一



2014年はひどい年だったが、今年も憂鬱な一年になりそうだ。川口マーン惠美氏の論考「ユーロが欧州にもたらしたのは統一よりも分裂か ギリシャの怨嗟、ドイツの憂鬱・・・統一通貨を待ち受ける茨の道」(JBプレス2/4)から。

<財政再建の進まないギリシャを見て、EUの人々はギリシャ人に怠惰の烙印を押した。ギリシャ人は絶望し、不満がこれ以上にないほど高まった。そして、緊縮政策の先導役であるドイツを、とりわけ憎んだ。

そんな状況の下、国会解散、総選挙と進み、反緊縮を唱えたツィプラス氏が、あれよ、あれよと言う間に突出した人気を得て、ギリシャの首相に収まってしまった。

SYRIZA党のツィプラス党首の圧勝を見ていくと、選挙前のギリシャの国状とヒトラーが台頭した時のワイマール共和国の国状とが、あまりにも似通っていたように感じる。

1933年、ヒトラーが政権を獲った時、ドイツ国民は疲弊のただなかにいた。第一次世界大戦の敗北で大きな痛手を受けていたドイツ国民を襲ったのが、ベルサイユ条約で決められた過酷な賠償金だった。第一次世界大戦の責任は、なぜかドイツ一国に押し付けられた格好になっていた。

当時、ドイツ国民は経済的に追い詰められただけでなく、ひどい屈辱を感じていた。貧困が人々の心の中までしみ込み、欲求不満と絶望が国全体を覆った。最終的に国民を動かすものは、この屈辱の感情であると思う。ヒトラーは、ドイツ国民の屈辱を怒りに変え、怒った国民を自分の機動力にした。

それとまったく同じ状況が、図らずもギリシャで作られていた。EUとIMFと欧州中央銀行の管理下に置かれ、緊縮財政を押し付けられ、息も絶え絶えになったギリシャの没落は早かった。

当時のドイツ人がヒトラーに魅せられたように、現在のギリシャ人もツィプラス氏に魔法のように惹きつけられた。絶望した人々が、怒り、突破口を探すうちに、破滅と紙一重のところに望みを託すことは、往々にしてあるものなのだ。

ツィプラス党首は40歳。彼の導く道は、しかし、破滅ではないかもしれない。彼は人々に希望を与える。彼は、「貧乏人がこれ以上苦しむことはない。国の復興は、金持ちのお金でやろう」と言っているのだ。彼は生粋の社会主義者だ。資本家に支配された世界を変えようとしている。

ツィプラス氏は、ギリシャが援助として受け取った多額の借款も、返すかどうかはもう一度最初から交渉するつもりらしい。民営化はまた国営に戻し、首を切った公務員も再雇用する。とにかく、お金が回るようにする。外国から押し付けられた屈辱の緊縮財政には終止符を打つ。

国民がこの言葉に希望を見出したことは疑う余地がない。どのみち、これ以上悪くはならないだろうと、皆が思っている。ギリシャ人は、今、強い。

ギリシャの新しい財務大臣は、経済学者のバルファキス氏。大学教授だ。しかし、その精悍な容貌は闘士に近い。53歳。

目標は、ギリシャに艱難をもたらしたEU、IMF、欧州中央銀行の独裁制からの自国の解放であると言っている。制度改革、オリガルヒ(新興財閥)の絶滅、そして、国民が貧しくとも幸せに暮らせる国を作る。彼も生粋の社会主義者である。

バルファキス財相は、30日、慌てて飛んできたEUの財務相グループ(ユーログループ)のデイセルブルーム議長と、初の話し合いを持った。

しかし、債務減免や緊縮策見直しを要求するバルファキス財相と、従来の方針の延長を求めるデイセルブルーム氏の意見は、平行線をたどっただけでなく、別れるときに握手するのさえ嫌だというのが傍目にも顕著なほど険悪な雰囲気を醸し出していた。道は険しい。

いずれにしても、EUは今、新しい作戦を練り直す必要に迫られている。交渉が暗礁に乗り上げれば、金融市場に不安が広がる。それは、あっという間にEUを超えて世界へ広がっていくだろう。EUはどうにかして、ユーロという通貨の信用を守らなければならない。

しかし、何のために?

おそらく、今、多くのEUの市民の頭の中で、ユーロを守る大義がわからなくなっているに違いない。共通通貨を持つことの矛盾も噴出し始めた。

ユーロ移行10周年の2012年、それはEUのサクセス物語として称賛された。
ドイツはおそらく、その冥利を一番多く授かった幸運な国だったかもしれない。

しかし今、ユーロは構造的に成り立たないアイデアだったと、皆が思い始めたようだ。しかし、ユーロを壊すには、どれほどの犠牲と痛手を甘受しなくてはいけないことになるのか、その後に何が来るのか、それを考えると俄かに空恐ろしくなってくる>(以上)

社会主義者というのは「共産主義者」のソフトな表現で、基本的にマルクスを信奉している。経済政策は国家統制経済で、ヒトラーは「国家社会主義」を標榜していた。ギリシャの首相と財務相は「生粋の共産主義者」だとするのなら、ギリシャはアカに国家を乗っ取られたのである。

中共は地主や金持ちを殺し、さらに農地を含め全土を自分のものとした。産業と言えるものは農業くらいしかないから、農民を集めて人民公社を作り、集団営農を始めた。一所懸命に働いてもサボっても賃金は一緒だから、皆やる気をなくした。結局、農民の犠牲の上に無謀な工業化を進めたことを契機に餓死者が続出した。

ギリシャの主要産業はサービス業(観光)、鉱工業、農林水産業である。メインは観光業だが、遺跡とエーゲ海、オリーブしか売り物がないということだろう。ツィプラス政権はどうやって国民を食べさせてゆくのだろう。

どうせ踏み倒されるだけだから、もう誰も(多分EUも)ギリシャに金を貸さない。全ての土地や生産設備を国有化される可能性があるから、誰も投資しない。失業者や乞食ばかりの観光地には誰もいかなくなるだろう。

かくしてギリシャ国民は飢えるのである。ドイツはヒトラーに引きずられて敗戦し、国家分断の悲哀を体験したが、教育レベルと技術力があったから再起した。ギリシャ国民はアカをリーダーに選んで「俺を殺せるものなら殺してみやがれ、世界は目茶目茶になるぞ」と起死回生に望みをかけたが、この居直り、あるいは恫喝に西側諸国が応じなければ亡国となる。

地政学的にはロシアあたりが救済に名乗りを上げてもよさそうだが、今のプーチンにはそんな余裕はない。欧州は今年も悩ましい試練の連続だろう。世界はますます憂鬱になりそうだ。(2015/2/8)
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