2015年02月21日

「尖閣諸島の戦略的な価値」

平井 修一

自衛隊出身の軍事ライターの方がこう書いていた。

<尖閣は日中双方にとって価値ある島とは言えない。今の平和的睨みあい状態は、日中にとってそれほど悪いものではない。もともと争うほどの資源もない島である。自国のものとする利益よりも、相手国との軍事的対立や交易混乱といった不利益のほうが大きい。

日本としては、尖閣に日本の力を吸い取られないようにしたほうがよい。その意味では、現状の固定化を図り、平和的に安定させるのは悪い話ではない。中国は尖閣での安定を確信できれば、より核心的な利益である南シナ海での権益確保に向かう。そうなれば、東シナ海での対中対峙は穏やかにもなるためである>

小生は素人ながら「中共海軍が太平洋へ出るためには尖閣のそばを通らなければならない。尖閣を突破すると深海になり、中共の潜水艦を補足しづらくなって日米は制海権を失いかねないから、尖閣の実効支配は不可欠だ」と思っている。

だから軍事ライター氏の上記の言葉には驚いてしまった。氏のプロフィールには「特に記事は新中国で評価され、TV等でも取り上げられているが、筆者に直接発注がないのが残念」とあった。中共の代弁者みたいだ。

松島悠佐・防衛研究所代表取締役(元中部方面総監)の論考「尖閣諸島の戦略的な価値」(2012/4/19)から。

<多くの国民にとって尖閣諸島は遠い無人の離れ島であり、何故そんなところが問題になるのかがなかなか理解できないことも事実である。

防衛システム研究所では、平成22年9月に起きた漁船衝突事件の直後に「尖閣諸島が危ない」(内外出版)を刊行して、尖閣諸島の戦略的意義を指摘してきたのだが、重複を厭わず要点だけを書いておく。

尖閣諸島は台湾や先島諸島から約200キロも離れ、中国本土からは400キロ以上も離れた小さな無人島だが、軍事戦略的には非常に大きな価値がある。

中国は、既に数年前から「日本列島〜南西諸島〜台湾〜フィリピン」を「第1列島線」として定め、他国の侵入を阻止し東シナ海〜台湾周辺〜南シナ海の海洋支配を確実にする体制を作ろうとしている。

東シナ海の大陸棚は中国にとって「絶対確保海域(核心的利益)」であり、自ら制海権を保持し日米軍の活動をいっさい排除したいと思っている。それが、「anti-access/area-denial(接近阻止・領域拒否)」と呼ばれる作戦である。

これに対しアメリカは、世界の警察軍として現在でもインド洋や中東やアフガンなどにグローバルな作戦を展開しており、そのためには東シナ海・南シナ海を自由に航行することは必須の要件であり、中国による同海域の覇権、まして進入阻止などは容認できることではない。

中国が米軍の侵入をあくまで阻止するような行動に出れば、米軍は安全な航行路確保のための作戦を発動することになるだろう。

「第1列島線」を巡る中国の封鎖作戦とアメリカの打通作戦の主要な係争海域となるのが沖縄・宮古海峡の周辺である。

そして、この海峡を制する重要な海域は「沖縄諸島」「先島諸島」ならびに「尖閣諸島」の三つの地域である。沖縄諸島は現在でも南西諸島防衛の中心として日米の主要な基地があり、ここを日米がしっかりと確保している以上、中国軍は手を出せないだろう。

先島諸島には、現在宮古島に航空自衛隊のレーダーサイトがある以外には軍事基地はないが、宮古島・石垣島・与那国島などには住民が居住しておりわが国の生活圏になっている。

海峡争奪戦が現実化してきた頃には、わが国としても警備部隊を配置する等の措置を採り、警備体制を強化することになると思われるが、今すぐ中国が侵攻するような暴挙に出るとも思えない。

となると、残るのは尖閣諸島である。

現在は小さな無人島であり、占拠占領も比較的に容易な上、海峡を牽制下に入れる作戦においては、非常に大きな価値がある。

要図(略)を見れば明らかなように、沖縄諸島・先島諸島・尖閣諸島のすべてを日米両軍がしっかり押さえてしまえば、中国が企図する沖縄・宮古海峡の封鎖作戦はまず不可能になる。

海峡の封鎖作戦をするためには海域を哨戒する海空の部隊が安全に行動し、必要に応じて機雷を撒いて海峡を封鎖するなどの作戦を行なわなければならないが、その作戦基盤となる要域を確保しておかなければならない。

必要性と可能性から考えれば、中国としてはまず「尖閣諸島の確保」が絶対の要件となり、それを振り出しに、海峡支配の態勢を固めてくるだろう。

尖閣諸島を手に入れた後は、それを梃子にしてジワジワと先島諸島に圧力を加え、宮古列島・八重山列島の周辺海域を牽制下において、やがて先島諸島を支配する行動に出ることが予測される。

南シナ海における西沙諸島や南沙諸島もそのような手法を繰り返して手中に収めた。

このような作戦を展開して、尖閣諸島・先島諸島を支配下に治めれば、沖縄諸島を日米が抑えていても、沖縄・宮古海峡の封鎖作戦に相当の効果を期待できる。

勿論、第1列島防衛線における「接近阻止・領域拒否」作戦を完成するには、沖縄諸島も手中に収めなければならない。このことについては、3月に掲載した「沖縄を再び戦場にしないために」の拙論に書いたが、それは中国にとってもアメリカと正面から対決する次世代の作戦になるだろう。

中国は遠大な目的を完成するために、将来の布石として今実行可能な作戦をじわじわと進めてくるのが常道であり、しかも時間をかけてじっくりと作戦を展開してくる。

今は、まず尖閣諸島を手に入れる作戦に焦点が当てられていると見るべきだろう。

このような中国の手法から判断すれば、わが国としては中国海軍を尖閣諸島周辺から排除して、領海主権を確保しておくことは、将来に禍根を残さないために極めて重要な「必成目標」の作戦である。

政府は「わが国としては尖閣諸島に領土問題は存在しない」などと言っているが、理論と建前はそうであっても、実体論としては領土問題が起きているのであり、それを蔑ろにすると、将来南西諸島が戦火に見舞われることにもなりかねない。

尖閣諸島の戦略的な価値は大きい。わが国の領土主権と防衛にかかわる大きな問題を含んでいるからである>(以上)

要は東シナ海と太平洋の制海権、制空権の要衝が尖閣周辺だということだ。強奪に向けて中共は着実に駒を進めている。

「中国軍、尖閣から300キロの沿岸部にヘリ発着場 外務省認める」(日経1/28)から。

<【北京=島田学】中国外務省の華春瑩副報道局長は28日の記者会見で、中国軍が沖縄県・尖閣諸島の北西約300キロにある浙江省沿岸部の南〓(鹿の下に几)島に軍事用ヘリコプターの発着場を建設中とされる問題で「島は中国の領土内にあり、正常な建設活動だ」と述べ、発着場の建設を認めた。

尖閣諸島への軍事作戦の備えだとの見方があることには「深読みや臆測をすべきでない」と述べるにとどめた。

南〓島の軍事施設を巡っては、国際軍事情報大手IHSジェーンズが人工衛星の画像で確認したとしている。現時点で戦闘機などが発着できる滑走路はなく、軍事用ヘリの発着場とみられる>

ヘリから特殊部隊が尖閣に上陸、重火器や資材も揚陸する可能性がある。周辺は200隻の海上民兵が展開し、海保、海自の接近を阻むだろう。しっかり備えなければならない。(2015/2/20)
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