2015年02月24日

◆年来の思いが叶いました!

浅野 勝人 (安保政策研究会理事長)
  

北京大学で講義をはじめてから、いずれ中国で講義に関する自著を出版したいと思うようになりました。北大生(中国では北大といえば北京大学のこと)に講義する意味は、それなりに貴重ですが、中国社会の中では知的レベルの高い極一部の特定の人たちだけに話すことの限界を感じていたからです。

幸い、一昨年11月、「北京大学講義録 日中反目の連鎖を断とう」がNHK出版から刊行されて、日本の読者には、ある日本人講師が中国のエリートたちに、どんな内容の講義をしているか知ってもらう機会を得ました。だから余計に中国の人々にも伝えたいと願うようになりました。

かれこれ1年前、日本記者クラブから「著者と語る」のゲストに招かれた折、記者会見に来ていた在京中国人特派員が著書に感動して、中国で出版する手助けをしたいと申し出てくれました。

渡りに船となって、北京大学講義録の中国語版が民間最大手の人民出版社から刊行される機会が訪れました。

北京大学講義録については、講義の度ごとに、翻訳をNHK文化センターで中国語講座の講師をしていた李梅女史にお願いしていましたから、翻訳本の原型はすでに存在していました。

ですから、早期の出版が可能と期待していたのですが、簡単ではありませんでした。北大での講義に当たってお世話いただいた滕軍博士(女性教授)の教室、300人の学生にかなり突っ込んだ話をするのと違って、一般の人民(市民)の目に留(と)まる著書となりますと中国側はひどく慎重になります。

もっとも人気作家の村上春樹や東野圭吾の翻訳本はたくさん出版されています。

ところが、日中双方のナマの政治情況に触れて批評をした「政治向き著書」は、先方の説明ですと、戦後70年、初めての事だそうです。(ホントかどうかわたしにはわかりません)従って、勢い神経過敏になるわけです。

中国側編集者から書き換えの要求が随所に出てまいりましたが、私は書き換えには一切応じませんでした。書き変えたら、大学でウソの講義をしたことになります。

ただ一切拒否では、出版拒否となります。何度もやり取りをしながら、中国側の求める部分削除について、やむなしと判断した点に限って応じることで妥協点を見出すよう努めました。中国側も最小限の削除で折り合うよう努力してくれました。

どうしても根本的な食い違いを克服できなかったのは、予想通り教育問題でした。反日教育を是正しない限り、真の相互理解には至らないという私の主張に対して「愛国教育はしているが、反日教育はしていない」の一点張りの中国側との間では、とても折り合いの付く議論にはなりません。

出版断念か、削除かの判断に迫られました。

結局、第6章:「不可欠な反日教育の是正―反目の助長より協調の推進」を無数に書き換えることを避けて、全文削除に応じました。代わりに、日本語版にない最新の講義「昭和天皇とケ小平の会見」を掲載することし、その中での削除は3行に留めました。

それなりに考えた末、次に続く若い政治学者のために「中国で生きた政治ものを出版した」風穴を開ける現実的な途を選択しました。

批判は幾らもいただきますが、お互いの建設的バトルはこれからです。入口で門を閉ざす愚は避けたつもりです。

10ヶ月におよぶ研鑽の結果、今年1月に刊行されたのが「北大演義録 融冰之旅」です。

人民出版社の編集者が付けた著書の題名「融冰之旅」とは「氷を溶かす旅」の意味です。なんとロマンあふれるタイトルでしょうか。しかも日中にかける私の思いに適(かな)っています。さすが、漢字のお国柄です。
 
残念ながら、販売は中国本土だけで、日本では入手できません。
但し、日本語版の「北京大学講義録 日中反目の連鎖を断とう」(NHK出版:1,600円+税)をご購読いただいていない方は、是非、この機会にお読みいただいて厳しいご批判を賜りたいと存じます。

ネットでアマゾンから取り寄せるか、お近くの書店に注文して下さい。(2015/2月22日)
(北京大学特任講師、元内閣官房副長官)




この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック