2015年02月25日

◆狙い安倍リビジョニストプロパガンダ

杉浦 正章



中国「鉄面皮」な歴史認識戦のキックオフ
 


中国南宋末の禅僧・虚堂智愚の語録に「鉄面皮」があるが、中国の戦後70年を巡る反日プロパガンダはこのあつかましい「鉄面皮」で始まった。


国連安保理における外相・王毅の発言を分析すればするほど矛盾撞着、唯我独尊に満ちている事が分かる。王毅の最大の狙いは、首相・安倍晋三を名指しこそしないが歴史修正主義者と印象づけ、米欧諸国にある「安倍リビジョニスト論」の付和雷同を狙った“多数派工作”であろう。


日本は国連大使・吉川元偉が日本の立場を述べたが、官房長官・菅義偉が「国益をかけてしのぎを削る場面」と位置づけた割には「紳士的」であった。即座に反論すべき問題もあった。今後この「歴史認識戦」はヒートアップする一方だが、王毅発言には、歴史の初歩を知らないか、あえて無視した「隙」がいくらでもある。


王毅発言の核は「反ファシスト戦争での歴史の事実は明らかだが、いまだに真実を認めたがらず、審判を覆そうと試み、過去の侵略の犯罪をごまかそうとする者がいる」という部分だ。この「者」が一体誰かだが、どうみても安倍への狙い撃ちだ。


「審判」とは東京裁判かサンフランシスコ平和条約を指すのであろうが、もっと広く歴史修正主義を言おうとしているのでもあろう。米国にはニューヨークタイムズ、ワシントンポストなどリベラル系マスコミを中心に安倍をリビジョニスト(歴史修正主義者)と見る風潮があり、国務省の報道官あたりもこれに引っ張られる傾向を示している。安倍の靖国参拝を契機にその傾向は強まっている。王毅の狙いはここにある。


しかしヒットラーのユダヤ人虐殺がなかったような主張をするリビジョニストと、安倍を同一視する米マスコミは勉強が足りない。


たとえば従軍慰安婦の強制連行を安倍は否定してきたが、昨年朝日の大誤報露呈が物語るものは戦後に創作された話が、あたかも「正史」であるかのように認識され、それを否定する者が「歴史修正主義者」のレッテルを貼られる傾向である。これはおかしい。まず反論の第一はここにあるべきだろう。
 

次ぎに王毅は「私たちは国連憲章の精神に忠実に従うだけでなく、時世に沿って行動した。戦後70年間、国連の創設メンバーで、安全保障理事会の常任理事国の中国は、常に国連憲章の精神に従い、国連の役割を支え、平和と安定を守ることに尽くしてきた」と言明したが、これこそ盗っ人猛々しい発言だ。


まず第一に中国共産党政権は国連創設のメンバーではない。中国が台湾を追放して国連の代表権を得たのは、筆者がニューヨーク特派員であった1971年である。国連創設は1945年であり、71年の国連総会決議までは中華民国が代表権をもち、安保理常任理事国であった。だから台湾まで怒っている。


国防部の報道官は中国共産党に対し「抗日戦争の主役は、国民党が主導した中華民国軍だったという歴史に向き合うべきだ」と発言している。たしかに日本は蒋介石には負けてポツダム宣言を受諾したが、中共に負けた覚えはない。


そもそも中国は国連を敵に回して戦争をした国なのである。52年の朝鮮戦争勃発に際して国連軍による朝鮮半島統一に介入、国益のために半島を分断した張本人ではないか。「国連憲章の精神に忠実に従い」と言うが、同憲章前文の核心部分は「共同の利益の場合を除く外は武力を用いない」である。


ところが中国の関係した戦争は数知れない。1949年にウイグル侵攻、1950年にはチベット侵攻、1952年には朝鮮戦争に介入、1959年のチベット蜂起を鎮圧、1962年にはチベットからインドに侵攻して中印戦争、1969年には中ソ国境紛争、1979年ベトナムに侵攻して中越戦争、1984年には再びベトナムと中越国境紛争、1988年にベトナム支配下のジョンソン南礁を制圧した。


そして現在の東・南シナ海への進出だ。戦後これだけ好戦的な国があるだろうか。一方日本の自衛隊は他国に向けて一発の弾も撃っていない。中国が国連憲章無視国家なのである。
 

その中国が「戦後の国際秩序に挑戦しているのは中国でなくて日本である」というプロパガンダを戦後70年を機会に展開するのは鉄面皮も極まった愚挙である。日本を精神的におとしめ、民族の誇りにダメージを与えようとしているのが、70年キャンペーンの本質そのものなのである。


もちろん日本を弱らせて、海洋進出を容易にするという、長期戦の魂胆が見え見えな粗暴さでもある。今後中国はロシアや韓国と組んで反日歴史認識戦を展開する。


中国は今年を「世界の反ファシズム戦争と中国人民の抗日戦争勝利の70周年」と位置付けている。そのキックオフが23日の安保理だったのだ。


9月3日を「抗日戦争勝利記念日」、12月13日を南京事件の「国家哀悼日」として、大規模な反日キャンペーンを展開する。5月9日にモスクワ「赤の広場」で行われる軍事パレードには国家主席・習近平が出席、北京でも9月3日に軍事パレードが行われる。


共産党機関紙「人民日報」は「パレードで中国の軍事力を示し、日本を震え上がらせる」などと“脅迫”している。


日本としては中国のプロパガンダに後手後手に回らずに、あらゆる手段を講じて、「正しい歴史認識戦」を展開する必要がある。政府が対外発信を目指して五百億円の予算を計上したのは当然の対応である。夏の「安倍談話」も過去にとらわれるのはほどほどにして、新機軸の言論戦という位置づけが必要であろう。

     <今朝のニュース解説から抜粋>   (政治評論家)
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