平井 修一
ウクライナ元首相、ユーリヤ・ティモシェンコが「プーチンの野望」を告発している「プーチン大統領はEU解体を目指している」(東洋経済3/8)が興味深い。
<顔をマスクで覆い、軍隊バッジを取り外したロシア軍部隊がクリミアに侵攻して以来、ほぼ1年を経て、新たなウクライナ停戦合意がミンスクで署名された。この間、何千人ものウクライナ人が殺害され、さらに何十万人もの人が自国内で避難民と化した。
ロシアがウクライナを編入する企てを表明した頃、私は投獄されていた。ヤヌコーヴィッチ前大統領はクレムリンと協調しており、私の幽閉生活は、彼の追放を要求する何百万というウクライナ人の勇気のおかげで終了した。
しかし、獄中生活が終わったのは、母国に対する戦争が始まったからで、自由の身になったとはいえ、後味の悪いものであった。
*ドンバスは依然として爆撃を受けている
ミンスク合意が、2014年9月に現地で結ばれた合意とは違って成功するという、見込みのない希望を持たずにはいられない。ドンバスの住民は、依然として包囲されロシア軍部隊らの爆撃を受けており、正常な生活を取り戻す必要がある。
クレムリンに約束を果たす意志があるかどうかの判断材料として、ウクライナ初の女性戦闘機パイロット、ナディア・サフチェンコ氏をロシアが解放するか否かがある。彼女は2カ月超にわたり、私が投獄された理由よりも滑稽な罪での、明らかに不当な投獄に抗議するため、ロシアでハンストを行っている。
ウクライナとそのパートナーは、最新のミンスク合意が破綻した際の、明確な戦略と行動計画を準備しておく必要がある。これには、ウクライナ軍に対する大規模な防衛支援が含まれる。
法の支配を真剣に考えるならば、ハーグの国際刑事裁判所において、クレムリンの指導者たちについて、数多くの戦争犯罪、および彼らの軍隊がウクライナで起こした人道に対する罪で裁くべきである。クリミア侵攻以来、ロシアは継続的かつ深刻に、国連憲章や数多くの国際条約、国際人道規範に違反している。
ウクライナでの激震は、欧州に延びる危険な断層線もあらわにした。プーチン大統領は、ウクライナが、西側を混乱させ分割に至らせる理想的なツールであることを見いだした。
実際にこの1年われわれは、欧州が武力侵略行為に対し、明確な対決姿勢をとるのに難渋している様子を信じがたい思いで見てきた。マレーシア航空17便の、反政府勢力支配地域上での撃墜(この行為で搭乗者298名全員が死亡)がなかったとしたら、米国および欧州連合(EU)が経済制裁プログラムに同意したかどうか、疑わしい。
ロシアが露呈した第1の断層線は、欧州における旧ソビエト圏の国々に見られる。ポーランドやバルト諸国など、一貫してロシアの行動を非難し、しっかりとした対応を要求している国がある。しかし別の国では、指導者たちは早々にロシアの侵攻やクリミアの併合を弁護し、あるいは単にロシアは強力すぎて太刀打ちできないと主張した。
*欧州でも同様の動きか
そして、欧州でも同様の動きが生まれている。大陸のユーロ懐疑政党の左派・右派双方が、EUが解散したら設立しようとしている反自由主義政権のモデルとして、プーチン大統領の権威主義的ナショナリズムを支持している。
実際、クレムリンはこれらの政党の多くに資金提供をしている。そして欧州の政府は、プーチン大統領がEU解体のために、支持をカネで買っていることを、手放しで認めているように思える。
ギリシャの財政的問題ではなく、ウクライナで起こることが、欧州および環大西洋連合が持続できるか否かの究極のテストである。ウクライナから延びる断層線は、欧州での戦後の和平および繁栄を支えてきた、根本的な価値を台なしにするものだ。
ウクライナの和平が成し遂げられない場合、われわれの国境をはるかに越えて、こうした価値自体の解体が引き起こされる。そして、分断された西側諸国は持ちこたえられない。今が行動を起こす時である>(以上)
プーチンと習近平、それにISは世界秩序を乱す「3悪」だ。西側世界は彼らに対して正しく反発し、嫌悪し、包囲し、制裁し、警戒し、いざという時に備えなくてはならない。
“世界の警察官”は昼寝をしているから、我々は結束して「3悪」に向かうしかない。プーチンに対してはEUや北欧同盟で、習に対しては日本が豪印アセアンと軍事同盟を結び、警察官を叩き起こして対処していくほかない。
平和を祈ったところで戦争、紛争、衝突は避けられない。避けたければ攻撃力=抑止力=集団安保を高めるしかない。これがリアリズムだ。日本が誇る最新鋭の潜水艦やミサイルを各国に配備すべきだ。時間の猶予はない。今年こそ「3悪」を殲滅しよう。嫌なことは来年に持ち越すべきではない。(2015/3/8)