2015年03月11日

◆不気味な「ボリュームゾーン不況」

平井 修一



マクドナルドの苦戦が著しい。1月の既存店売上高は前年同月比28.7%減となり、小生が経営者なら「ギャーッ」と悲鳴を上げて卒倒するところだ。前年を下回るのは13カ月連続だという。ケンタッキーフライドチキンもここ数年、右肩下がりだとか。

若い頃はマックもケンタも好きで、子供を連れてよく行ったものである。「マックでお昼にしよう」と買い物に付き合わせたのだが、中学生になるともうこのエサでは引っかからなくなってしまった。

以来ご無沙汰気味だが、チキンはコンビニで温かいものを売っているし、ハンバーガーはトーストサンドで代替できるから不自由はしない。それにしてもマックの落ち込みは激しすぎる。世の中は不景気なのか、それとも飽きられたのか。

2月の景気ウォッチャー調査(内閣府)によると、現状判断DIは、前月比4.5ポイント上昇の50.1となった。 家計動向関連DIは、小売関連が上昇したこと等から上昇した。企業動向関連DIも雇用関連DIも上昇した。先行き判断DIも前月比3.2ポイント上昇の53.2となったから、「景気は、一部に弱さが残るものの緩やかな回復基調」(同)ということだろう。

それならマックは飽きられたということなのか。週刊現代3/14日号「『ボリュームゾーン不況』とは何か?いま、この国の経済が大きく変わろうとしている」が示唆に富むというか、何やら不気味かつ不吉だ。以下引用する。

<いま経営者たちは新しい問題に頭を抱える。たとえヒット商品を生み出しても、その寿命が極端に短期化しているため、従来のビジネスモデルがまったく通用しなくなってきている。

商品のライフサイクルの短さは、「電気製品であればもって一年、食品などはせいぜい数ヵ月でヒット商品の寿命が終わってしまうほど」(企業のマーケティング事情に詳しいコア・コンセプト研究所代表の大西宏氏)。しかもそうしたブームの超短期化が、最も需要が豊富なマス市場、つまりはボリュームゾーンで巻き起こっているから、ただ事ではない。

そうした巨大市場で、昨日まで売れていたヒット商品がまったく売れなくなるという事例が最近頻発。

たとえば、日本マクドナルド。いままさに「リュームゾーン不況」に足を取られ、苦境にもがいている。客離れが止まらない同社の大不振は、昨年夏に発覚した期限切れ鶏肉問題が原因と言われるが、本質は違う。同社社員が言う。

「これまでうちは、チーズバーガーなどの定番の主力商品を大量に販売することで成長してきた。ところが最近は、そのボリュームゾーンの嗜好が飽きられているのです。

前社長の原田泳幸さんは『お客に常に驚きを与えろ』と声を大にして、『メガマック』など次々と奇抜な新商品を出すことでお客をどうにかつなぎとめていた。しかし、現在のカサノバ社長が時代のスピード感についていけなくなると、一気に不振に落ち込んだ。そうなると定番商品からも一気に客が引いていった。

消費者の飽きが早くなったのと同時に、一度離れたお客を取り戻すのがこれまでの何倍も難しくなっている。だから、一度始まった客離れはどんどん加速し、悪循環が止まらないのです」

企業幹部たちが「売れ続ける商品などない前提でビジネスをやっている」と口を揃えるように、企業にとって厳しいのは、「ボリュームゾーン不況」に対抗する術がないことにある。

元ジョンソン・エンド・ジョンソン社長で国際ビジネスブレイン代表の新将命氏も言う。

「この時代の『勝ち組企業』は『価値組企業』。新しい価値を提供し続けなければ生き残れない。ヒット商品が出たら、すぐに次のことを考えなければならない。経営者が安心している暇など、1秒もありません」

そもそもヒット商品の寿命の短期化はいまに始まったことではない。年々、ジワリジワリと進んでいたが、ここへきて一気に加速してきたのにはワケがある。「消費の『コンビニ化』が拡大しているのが大きい」と、セブン-イレブン・ジャパンOBで法政大学大学院教授の並木雄二氏は言う。

「いま消費者にとって一番身近な消費の場所はコンビニですが、そのコンビニは毎週新商品を100アイテムほど投入するほどの『改廃』を頻繁に行っています。

コンビニとしては新しい商品を常に入れ続けないと消費者に飽きられるからやっているわけですが、消費者はこのコンビニ消費に日常的に触れる中で、新しい刺激がないと満足しなくなってしまった。

コンビニが与えてくれる新鮮さを、ほかのあらゆるものに対して求めるようになってきたことが『ボリュームゾーン不況』の背景にあると思います」

より速く、より多くのヒット商品を生み続けることでしか生き残れない厳しい時代が幕を開けた。しかも、「『ボリュームゾーン不況』はまだ始まったばかり。これからますます深刻になっていく」とエコノミストの吉本佳生氏は指摘する。

「ボリュームゾーン不況がどんどん広がっていく中で、企業間の競争はますます熾烈になっていきます。これからは体力を奪われた企業から順に新しい商品を作る力がなくなっていくでしょう。

そうなると、消費者からすれば、いまはたくさんの選択肢から商品を選べる状況にありますが、その選択肢が減っていくことになる。結果として、魅力的な商品が減ることになるので、消費者はますますモノを買わなくなる。

そしてそれが経済全体を冷え込ませ、ますます企業は体力を奪われるという出口のない負の連鎖に入って行くわけです。企業にとっても、消費者にとっても、日本経済全体にとってもマイナスのことですが、もうその連鎖は始まってしまっている」

商品の寿命が短くなるにつれ、企業の寿命もどんどん短くなっていく。ひいてはそれが、日本経済全体の寿命を蝕んでいく。突然巻き起こった市場の激変は、いま日本経済の根本を大きく揺さぶろうとしている>(以上)

小生は物欲があまりない、と言うか、買い物が苦手であり、たとえば発泡酒ならコレ、ワインならコレと決めており、非常に保守的だ。逆にカミサンは新しいものに飛びつく。飛びついても長続きしないで、1週間後には他のものに浮気する。買い物に刺激を求めているのだろう。

この浮気性にボリュームゾーンがズブズブにはまっており、企業はそれに右往左往させられているというわけだ。「常に驚き」を与え続けないと客が離れていく。

メーカーにとって店舗の棚に商品を置いてもらわなければ話にならないから、ライバルとは棚争奪戦“スペース戦争”を繰り広げることになる。店舗としては売れるもの、儲かるものを置きたい。新商品が出ると刺激を求め
る浮気者が手を出すから売れる→スペース拡大→さらに売れる→定番になる。

これが理想なのだが、定番にならずに短期で飽きられて売上が減少し、またぞろ「新商品開発→売れる→スペース拡大→飽きられる」を繰り返すことになる。まるでシーシュポスの神話だ。

無駄と言えば無駄、虚しいと言えば虚しい。しかし、それを続けないとトップグループから脱落し、やがては倒れてしまう。資本主義の新たな成長 or 存続モデルを高3レベル以上の識者には提案してもらいたいが、今どきピケティに感動している程度では所詮無理か。異才、出でよ!
(2015/3/10)

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