2015年03月18日

◆「戦力あれど、戦意なし」

宮崎 正弘
 

<平成27年(2015)3月17日(火曜日)通巻第4490号>  

 〜ミャンマー軍機が越境し中国雲南省に爆弾、4、5人が死亡
  中国側は「戦力あれど、戦意なし」を徹底するとしたが。。。〜


その昔、日本財界の或る大物氏。日本から北京に呼ばれた宴席で美女を斡旋されそうになったときに言った。

「戦意あれど、戦力なし」。

折から全人代開催中の3月13日、中国雲南省とミャンマーの国境地帯、 臨槍市郊外のサトウキビ畑で作業中の農夫らが、投下された爆弾により13人が死傷するという事故があった。死者は4人とも5人とも言われる。

コーカン族の武装ゲリラを追跡中に越境した「ミャンマー軍機」が爆撃したと中国が発表した

ところがミャンマー政府は16日になって、「ミャンマー国軍は領土保全と中国との友好関係を尊重し、ミャンマー領内での活動を維持するよう指示されていた」とする声明を出し、爆弾事件への関与を否定した。

その一方、「中国国民に死傷者が出たことに深い遺憾の意」を表明しつつも、「中国側と協力して調査を行う」という方針を打ち出した。 

爆撃された中国雲南省西部一帯は大東亜戦争中、インパールの闘いで日本軍が基地とした拉孟に近い場所に位置し、革命後は国民党残党の拠点ともなった。高陵と霧の深い山岳、絶壁がつづき、少数民族のなかでもイ族、ワ族が住む。

筆者も拉孟から騰越周辺を取材したことがあるが、国境に近くなると検問があり、パスポート提示、住民等はIDカードを見せる。「国内国」の扱いである。国境パトロールの兵士等は機関銃で武装していた。

ミャンマー側はミートチナ(中国名は「密支那」)を拠点にシャン族が多いが、雲南との国境にはコーカン族(中国名は「果敢族」)が住んでいる。コーカン族は、中国系であり、明朝末期に中央を追われ、この辺疆へと流れついた。一族の長は楊一族で、一帯で麻薬の原料となるケシ栽培で生計を立ててきたとも言われる。

そしてコーカン族の過激派が組織する「ミャンマー民族民主同盟軍」は2000名から4000名のメンバーが中国製の武器で武装している。戦闘員には中国人も加わっているとミャンマー側はみている。

中国世論は爆撃事件に一斉に反発し、「ミャンマーを撃て」「血には血を以て」などと勇ましくも好戦的な意見が並び、「懲罰を加えるべきだ」とする要求がネットに溢れた。

しかしながら北京では全人代開催中だったことも手伝い、氾長龍・軍事委副主任はミャンマー国防軍総司令のミン・アウン・フライン(中国の表記は「敏昴莱」)に電話して厳重抗議し、「二度とこのようなことがないようにと伝えた。

ミン国防軍総司令は北京を訪問して習近平と面会したことがある。


▼中国・ミャンマー戦争にまで発展するか?

中国雲南省の国境周辺には装甲車、高射砲移動トラック、空輸された兵士に満ちあふれ、いまにもミャンマー侵攻を崩さない構えである。付近はミャンマー側にはシャン族が多い。ワ族も混じり、雲南省は中国最大のワ族集中生息地帯。

このワ族という少数民族はそれでも合計120万人ほどおり、クメール系で色浅黒く、つい先ごろまで首狩りの習慣があった。

コーカン族と同じくケシ栽培に従事してきたため、勢力を争いを繰り返している。このためワ族の過激派も武装している。中国製武器が多い。

とはいえ山岳地帯で、峻険な山稜と獣道しかなく、戦車が通過するには困難をともなうため、中国側が攻撃にでなければ、本格的戦争には至らないだろうと観測筋は読んでいる。

まさに冒頭にのべた財界人とはあべこべで、「戦力あれど、戦意なし」である。

それでなくとも前年11月のアジア首脳会議がミャンマーの首都ネピドーで開催された折、出席した李克強・首相は参加国から四面楚歌、ミャンマーの対中感情の冷たさを認識してきたばかりだ。

そのうえミャンマーの南北を縦断するガスパイプラインは793キロ、雲南省へ繋がりガス輸送が始まっている。

3年前にミャンマーが西側の制裁を解かれて以来、中国が建設していた水力ダムは工事が中止されたままだ。

中国は対ミャンマー感情の国内的爆発をいかに抑制できるか?
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