2015年03月21日

◆西側の団結に亀裂が入る?

宮崎 正弘
 

<平成27年(2015)3月20日(金曜日)通巻第4493号>  

 〜米国の「失望」表明、これから西側の団結に亀裂が入る?
 英国の「アジアインフラ投資銀行」への参加に米国は「怒り」を露わに〜


 中国主導の「アジアインフラ投資銀行」に英国が参加表明したことは「事件」であり、米国のウォール街は「怒り」に包まれたという(英紙ガーディアン)。

同じく英紙「フィナンシャルタイムズ」は、米国オバマ政権に「失望」が広がっていると報道した(19日付け)。

同じ失望でも首相靖国参拝への「失望」事件と。シティの中国政策への急接近への怒気を含んだ「失望表明」との間には強いニュアンスの差違がある。

対照的に中国語の媒体は「英国の決断」などとし、同行に加わらない日米に冷淡な分析をしている。中国としては政治的得点になる。

英国はすでに2年前からシティで人民元取引をみとめ、同時に中国国債も取引されている。おなじくフランクフルト市場でも。

これは「ウィンブルトン方式」と言われ、市場関係者からみれば「貸し会場ビジネス」である。

つまり有名なテニスの世界大会を開催し、たとえイギリス選手の活躍がなくとも、集まってくる人々(外国籍の)が落とすカネが魅力であるという意味である。

こうした文脈からいえば英国のアジアインフラ投資銀行に参加表明も、そこにシティとしてのビジネス拡大の可能性を見たからであり、対米非協力への傾斜という政治的思惑は薄い。

したがって英国にとってはオバマ政権の反発は意外のことだったと考えられる。

イタリアとフランスの参加表明はユーロが米ドルよりも強くなれば良いという斜に構えた動機であり、また加盟すれば幾ばくかの情報が取れるという打算に基づく政治的行動だろう。

さて中国のアジアインフラ投資銀行だが、日本の新聞をみると英国につづきイタリア、フランスなども参加に前向きだから韓国も最終的には加盟するのではないかという報道が目立つ。

あたかも「乗り遅れる日本」という錯誤的な焦燥を演出し、脅威視しているようだ。しかし、そんな必要はまったくない。


 ▼アジアインフラ投資銀行はブレトンウッズ体制への挑戦になるか?

米国は嘗て宮沢政権のおりに、日本が設立を目指したAMF(アジア通貨基金)を構想の段階で横合いから強引に潰したように、中国主導のドル基軸に挑戦するような国際機関の動きには警戒している。

基本的動機は戦後の世界経済を牛耳るブレトンウッズ体制(つまり世界銀行・IMF体制)に中国が挑戦してきたと認識するからである。

しかし米国は中国の動きを牽制したが、潰そうとはしなかった。それだけ日本は押さえ込める自信があっても、中国を制御する政治力は、もはや米国にはないということでもある。
 
そもそもアジアインフラ投資銀行を設立する中国の思惑は(1)人民元の拡大と(2)アジアにおける人民元の覇権、(3)中国主導のアジア経済訂正の確立という、金融帝国主義であり、南シナ海での侵略行為によって四面楚歌となった政治状況を、カネを武器に主導権の回復を狙うものである。

インフラ整備に悩むアセアン諸国ならびにインド経済圏は喉から手が出るほど欲しい資金を中国が供与してくれるのなら政治的行動は抑える。露骨なのはカンボジア、ラオス、タイ、インドネシアなどだ。つまり反中国でまとまりつつあったアセアンの団結への動きを、中国は攪乱しているのだ。

そうはいうものの新銀行は貸し付け条件も金利の策定方法も、審査方法もまったく白紙の状態であり、基本的に銀行のガバナンスを知らない国が国際銀行業務をスムースに展開できるのか、どうかが疑問視されている。

あまつさえ人民元の拡大を狙う同行の資本金が米ドル建てという不条理に対して納得できる説明はない。くわえて同行の本店ビルは北京で建設が始まったばかりで、どう最速に見積もっても2017年度ごろに完成である。

そのうえ資本金振り込みにも至っておらず、拙速の開業があっても2016年、そのころに中国の外貨準備が潤沢のママであろうか?

         
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック