2015年04月02日

◆米国の親中派も批判に乗り出した

宮崎 正弘
 

<平成27年(2015 )4月1日(水曜日)通巻第44502号 >

〜米国の親中派もそろそろ中国評価の矛を収め、批判に乗り出した。
   キッシンジャー、アイキャンベリーにつづきシャンボー教授も〜

▼「中国共産党は崩壊する」と予測する有名教授はハト派の親中派だった

親中派の論客として知られ『トウ小平伝』も書いたデーヴィッド・シャンボー(ジョージワシントン大学教授)は大胆にも中国共産党の崩壊を予測し、「ウォール・ストリート・ジャーナル」(3月6日)に寄稿した。小誌でも真っ先に伝えたが、その詳細を紹介する。

中国に衝撃と反発を運び、「環球時報」は、痛烈にシャンボーを批判した。中国はキッシンジャー、ブレジンスキー、エズラ・ボーゲルらとともに、シャンバーを親中派学者として優遇し、北京の国際シンポジウムにも何回か招待してきただけに、裏切り、あるいは変節と受け取ったからだ。

彼の「中国共産党崩壊」論の概要次の通りで、中国共産党が統治の破綻を示す五つの予兆をシャンポーは指摘している。

第一は体質的な腐敗である。絶対的権力は絶対的に腐敗するというのは歴史の真理、はじめから予測されてきた。

加えて中国は秦の始皇帝以来、汚職はDNAである。

党幹部ならびに富裕層が海外へ資金持ち逃げ、子弟等の海外逃避が続いている。賄賂で得た不正資金を香港やマカオで、あるいは上海経済特区などで資金洗浄(マネーロンダリング)して、海外へ逃し、「外国籍」の資金に化かして中国に還流させる。これが熱銭と呼ばれ、株式、不動産投機に熱中する。

子女を海外へ留学させ、家人を送り込み、あるいは愛人に海外で出産させ、たとえば米国の国籍を取得させる。万一の逃亡先をこうして長期的計画のもとに、多くが工作している。

愛国を強調する人たちにこの傾向が強い。

このことが意味するのは、共産党の将来が不安でたまらないのだ。つまり、党独裁体制はそろそろ終わりだぞ、という認識が普遍的になっている証拠だとシャンバー教授は示唆するのである(そんなこと、拙著で過去20年、筆者は口すっぱく言ってきたが、アメリカ人学者はいまごろになって気がついたのかな?)。


▼ゴルバチョフとは対極の路線を走る習近平だが、終着駅は同じ「崩壊」

第二に習近平のゴルバチョフとは対極の路線が結果的に同じ地点(つまり党の崩壊)へ向かわせるとソ連崩壊との対比と類似である。いやシャンボー教授の「崩壊論」の特色はこのポイントにあると言って良いかもしれない。

習は「ソ連の崩壊は政治改革と情報公開が元凶で、中国はそうした愚策を採らない」として政治改革を徹底的に拒否し、情報管理の強化に乗り出した。政治的抑圧を強化し、メディアを規制し、ネット監視を強め、知識人への締め付けなど多角的な言論統制を展開した。

2013年4月に中国共産党中央弁公庁は「現在のイデオロギー領域の状況に関する通報」(いわゆる「9号文件」)を通達したが、これは西側の「普遍的価値」の否定だった。

「憲政民主主義」「市民社会」「報道の自由」「新自由主義経済」などを論じてはならないとして、天安門事件後に西側が仕掛けた「中国に民主化」を促したキャンペーンに対して、江沢民政権が「和平演変」(社会主義体制を切り崩す陰謀)として警戒したように、西側の価値観が中国で普及することを極度に懼れている。

▼習語録はうずたかく積まれ、無料なのに党幹部学校の書店でも誰も持ち帰らない

第三に中国共産党の「宣伝工作」(プロパガンダ)が中国国内にあってさえ効果を失っている事実をシャンボ―教授があげている(そんなこと、言わなくても、反日のはずの中国人観光客が蝗の大群のごとく日本にやってきて爆買いする様を目撃すれば、中国の宣伝は効果を挙げていない現実は子どもでも諒解できる)

習近平が唱える「愛国主義による中華民族の復興が中国の夢である」という虚ろなスローガンを無邪気に受け入れ、信奉する人々はもはや存在しない。

追従組がいくら宣伝しても、本気で宣伝しているわけではなく、聞く側もまったくしらけている。そうした状況をシャンボー教授は「裸の王様」と揶揄した。

というのも、彼は北京の中央党校校内の書店で山積みとなっていた習近平「大衆路線」を宣伝する無料の冊子を誰も持ち帰らない風景を目撃したからだ。

第四に習近平政権が力点をおく「反腐敗キャンペーン」だが、従来の教訓が示すように、成功する見込みは殆どない。

一党独裁体制の弊害、透明性を欠いた経済運営や、会社情報操作、政府が統制するメディアや、法治の欠如が原因だが、それだけではない。

反腐敗キャンペーンと喧伝しながらも、その標的が偏っている。

すなわち習の権力闘争が密接にからむ反腐敗キャンペーンは江沢民元主席に連なる人々を選択的に追及しているため、かえって政治的軍事的なリスクが高まるという危険性がある。

中国のゴッドファーザーでもある江沢民元主席は胡錦涛政権の10年間「院政」を敷いたが、いまだに健在である。

他方、習が自派閥を持たず、権力基盤を強固としていない段階で守旧派、最大利権集団の上海派を標的としたことは、無謀ともいえる。

江沢民に習近平が挑むのは危険を増大させる(シャンバー教授は明言していないが、軍クーデタ、暗殺というシナリオがある)

第五に経済構造の歪みである。

国有企業再編は遅々として進捗せず、改革の進展を阻む党機構と利益集団、すなわち国有企業や地方の党幹部が妨害に出てくるだろう。

鉄鋼、セメント、電解アルミなどの在庫が示すように、余剰生産能力の効率的再編が進まず、3月の全人代がはじめて言及したのは「銀行とて倒産することがある」として銀行の預金者保護のペイオフを導入する政策変更があった。これから中国の銀行の倒産も開始されるだろう。
 
これらが、いまの中国情勢をさらに複雑にさせ、状況は混交し、やがて共産党の支配体制を終焉に導くことになる

「共産党の統治に対して中国の民心がすでに離れつつあることを考えれば、中国共産党の終盤は近い」と同教授はウォールストリート・ジャーナルに寄稿したのだった。
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