2015年04月13日

◆「大阪都構想」はどうなる?

早川 昭三


統一地方選前半戦の大阪府・大阪市議選は12日に投開票した。大阪市を廃止して五つの特別区を新設する「大阪都構想」の賛否を問う住民投票を5月17日に控え、各党・各候補はその是非をめぐって激しい選挙戦を繰り広げた。

府市両議会で第1党の大阪維新の会は議席を増やして都構想実現に弾みをつけて、橋下代表の野望を実らせるか、それとも議会過半数を超える「反都構想結束の野党各党」が大阪維新を敗退させ 大阪維新の野望を棚上げさせるのか、その審判が迫られせる選挙戦であった。

開票の結果、大阪維新にとっては両議会で第1党の議席数は維持出来たものの、「反都構想結束の野党各党」との拮抗には勝てず、目標としていた過半数には届かなかった。

維新は、大阪市を廃止して五つの特別区を新設する「大阪都構想」実現を叶えるため、この大阪府・大阪市議選で野党結束を潰し、議会を制圧する過半数を超える議会体制を確立したかったのだが、できなかったのだ。

橋下氏が政治生命を賭けた「都構想」実現の夢は、停滞した。5月17日の住民投票を待たずして、いち早く「都構想」へ反対の住民意思のつよいことが、この結果で改めて事前に事実上示されたことになる。

一体、どうして大阪住民は、橋下氏の掲げる「都構想」の実現をさせようとしなかったのか。

はっきりしている事は、橋下氏の目指す「都構想」によって、住民が如何なるメリットがあるのか、一向に分からなかったことに他ならない。

橋下氏の街頭演説を聴いた知人は、下記のように感想を述べていた。

< そもそも、「都構想」が実現すれば,大阪府と大阪市の二重行政が解消されて,行政が効率化され,コストが縮減できるとしているが、そんなことはない。

「都構想」が出来ると、二重行政の解消というような「メリット」が生まれる可能性だけでなく、新たな「非効率」が産み出されるという驚くべき「デメリット」が生ずるリスクが強く懸念される。

そもそも、都構想が出来れば、大阪市という「1つの役所」が解体され,特別五区の「5つの役所」が出来あがり、それを通して行政コストがかえって高くなってしまう、ということが懸念されるのだ。

なぜなら5区役所に、各5区議会運営を始め、総務部等の重要部を作らざるを得ない結果、純粋に「5倍」ものコストがかかってしまうことになる。これは考えてみれば当たり前の事だ。>と述懐する。

加えて、<民間ビジネスの世界では「別々の会社を合併することで、効率化を図る」ということが行われているが、今回の大阪市の五分割案は、そうした効率化の取り組みの「真逆」の取り組となっている。今回の都構想は、正に「非効率化」「効率悪化」を引き起こす側面を、明確に持っている。>とも付け加える。

別の「反維新」の立場に立った別の友人は、こう述べた。

< そもそも、今は「大阪府・大阪市」の二重行政が問題だと言われているが、その都構想が実現してしまえば、驚くべき事に「大阪府・プチ大阪市役所(一部事務組合)・特別区」という三重構造が現れてしまう。

かつてならこういう、モメ事は起きるはずはなかった。なぜなら、大阪市内の行政には、たった一人の「大阪市長」というリーダーがいたから収められた。

ところが、「都構想」が実現し、大阪市が解体されて5つの特別区に分割されれば、そんなリーダーが不在となり、互いに利益の異なる5人の特別区長というバラバラのリーダーが存在することになる。

その区長は、それぞれの区民の選挙で選ばれた人達だから、選挙民の付託がある以上、選挙民の利益を最大化するために、他の区民の利益が損なわれようとも、自分の区民の利益を強く主張する局面は、必ず訪れる。つまり、異なる区同士の間に「利害対立」が生まれるだろう。

恐るべき混乱に陥るであろうことは必至だ。ところがそこに、5特別区の間の調整に大阪府が介入してくるとなると、話はさらにややこしくなっていく。

すなわち、ここに大阪府の存在も考慮に入れれば、あっというまに何ともややこしい「三重構造」が生まれることになる訳だ。>、以上。

結局、一体何のために分割するのかと云う事になる。これについて、下記のような意見も強く聴かされた。
<大阪市民はこれまで,一つの大阪市役所だけおカネを払えば,水道や下水やゴミ収集などの仕事を「一括」してやってもらえた訳だったが,これから5つの特別区と,一つのプチ大阪市役所(一部事務組合)に、おカネを払わないと行けなくなるのも決定的。

一部事務組合というプチ大阪市役所とは、この「独立後も、経費節減のために、共同利用するためにおいておく、昔の家の一部」というものなのだ。

つまり「都構想」は、行政の仕組みから考えれば、「5人家族で一つの家に暮らしていた」(現状の大阪市)のに、これからは「5つのアパート」(特別区)と「1つの共同利用のための家の一部」(一部事務組合)との、6つを利用して暮らすようにする、という話なわけだ。

もうこうなれば常識的に考えて市民へのサービスレベルが下がってしまうのは必至。

しかも、これから5人は対等の立場なので、その「元々住んでいた家」をどのように管理するのかで、モメることも、必至だ。モメるということは、行政コストが増えるということなのです。(そもそも、時間がかかってしまえば、それだけで、行政コストがかかってしまう。)

つまり、様々な行政サービスの手続きが「複雑化」してしまうことは必定だ。

こうして行政サービスが複雑化し、行政コストが上がると、結果的にサービス水準が低下することが懸念されるわけで、それと同時に、その行政コストをまかなうために、様々な料金が値上がりしていく可能性も、当然でて来る。

もちろん一寸先は闇、未来を断定的に論ずることはできないが、以上の意見の大要は、いろんな行政の手続きが「三重化」して複雑化すること、そしてその結果として、行政サービスが低下し、様々な公共料金が高まる深刻なリスクが生まれることは決定的である。

ましてや、特別区民のために使われるべき2200億円のおカネが、大阪府によって別の項目(大阪府の借金返済や、他の自治体のインフラ整備、まちづくり等)に「流用」されてしまう訳だから、行政サービス低下と、各種公共料金の値上げという「最悪の事態」が生ずる可能性は、ますます決定的なものだ。

「都構想」の是非を考える場合、こうした「デメリットのリスク」についても、しっかりと吟味し、考慮し、総合的に判断していくことが不可欠ではないかと深刻に考えた。だから、橋下代表の「都構想」の考えは、全く分からなかった。>以上

藤井聡 (京都大学院 教授)の見解も参考にしたが、維新に対する「都構想」実現の意味不明を述べる知人らの意見に、筆者も同感した。

となれば、地方選挙に敗れれば大阪市長を辞任すると、橋下氏は言及していたが、この結末は一体どうなるのだろうか。

「敗北」だとは思っていまい。議会大一党を維持できたにだから「勝利」したと思っているだろう。

しかし「都構想」の実現が野党各党の結束で阻まれるとなれば、「5月の世論調査」の行く末も懸念せざるを得まい。

橋下氏は、今後どのような「都構想」実現進路を選択するのだろうか。(了)


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