2015年04月14日

◆安保、普天間、首相談話で保革激突

杉浦 正章




選挙圧勝を背景に法制は8月上旬に実現へ
 


焦点の北海道と大分の知事選で自民党が勝ち、41道府県議選で自民党が24年ぶりに総定数の半数を超える1153議席を獲得したことは、紛れもなく「自民圧勝・民主惨敗」の構図が統一地方選でも3回の国政選挙同様に維持されていることを物語る。


首相・安倍晋三は自信を持って後半国会に臨むことになるが、勝ってかぶとの緒を締めるのは政治の常識。安保改定以来半世紀ぶりの安保法制にむけてふんどしを締め直して望むべきであろう。


安保闘争と比較すれば野党および革新勢力の衰退は目をおおわんばかりのところに来ているが、国会の内外であい呼応、沖縄の普天間移転、戦後70年の首相談話とも連動して、政治状況が保革激突の様相を示すことは間違いない。
 

まず、対米関係も絡んで複雑多岐にわたる政治日程を大きな鳥瞰図で見ると(1)安倍は26日から訪米(2)ワシントンでの日米外務・防衛閣僚による2+2で27日に日米防衛協力の指針(ガイドライン)を決定(3)5月15日をめどに政府が安保法制関連法案を国会に提出

(4)会期を8月上旬まで40日間程度延長した上で、6月下旬に安保法制の衆院通過を目指す(5)8月下旬に同法制成立(6)8月15日の終戦記念日に安倍が「首相談話」を発表ーとなる。
 

まず安保法制の重要ポイントを抽出すれば、最大の着眼点は密接な関係のある他国が攻撃を受けた場合に反撃する集団的自衛権の限定行使が可能となることだ。


与党内で具体的な法制の詰めが14日から行われるが、公明党が「歯止めがなくなると」して国連決議を必要条件とすることと国会の事前承認を基本にするという2点にこだわっている。


この内、国会の事前承認は公明党が「例外なく事前承認」を主張しているが、国会閉会中などを考慮して自民党は反対。結局、事前承認を「基本とする」という線で妥協の方向のようだ。国連決議についても、対中抑制を目指す法制に、中国の拒否権行使が行く手を阻んでは元も子もなくなるわけであり、自民党は応じまい。公明党の国連至上主義はいかにも古い。


むしろ北大西洋条約機構(NATO)の要請などにも応じる流れが出てきている。例によって公明はワーディングでメンツを立てれば納得せざるを得ない流れであろう。


ここでも自民党の選挙圧勝は大きい。確かに自衛隊の出動は首相の裁量に委ねられるケースが濃厚となるが、安倍は「かつての湾岸戦争やイラク戦争での戦闘、大規模な空爆や砲撃を加える行為に参加することは、自衛のための必要最小限度を超える。憲法上、認められない」と述べ、集団的自衛権の行使を限定容認する新3要件に基づき、戦闘には参加しない考えを繰り返し表明しており、これが最大の歯止めと言えよう。
 

焦点のガイドラインは、1997年の改定以来となるが、同年の改定は朝鮮半島有事が核心部分であった。今回はよりグローバルな日米同盟への深化を基調とするものになろう。


朝鮮半島有事に加えて中国の東・南シナ海への膨張路線と軍備拡張を背景に、対中抑止力を前面に打ち出す方向となる。新ガイドラインは、ミサイル防衛などに当たる米艦船への給油などの支援を平時から可能とし、武力攻撃に至らない「グレーゾーン事態」での協力もうたう。


日本に直接の武力攻撃がなくても、要件を満たせば集団的自衛権を行使し、武力攻撃を受ける米艦を防護することも盛り込む。さらに中国の人工衛星破壊実験やサイバー攻撃を念頭に、宇宙空間・サイバー分野の協力強化も打ち出すことになろう。
 

ここで問題になるのは日米ガイドラインが安保法制に先行して決定されることである。民主党代表・岡田克也が「憲法解釈の変更を前提にしたガイドラインの見直しは、大変な問題であり、アメリカとの合意の前に国会での説明責任を果たすべきだ。」と指摘しているが、スジ論としてはその通りであり日程に矛盾がある。


しかしそれ以上に悩みを抱えるのが民主党だ。政調会長・細野豪志が左右の対立が著しい集団的自衛権行使問題について「党内の見解は5月中旬にずれ込む」と先延ばし発言をしていることが物語るように、政府を突く以前の問題として、党内問題があるのだ。


とりわけ安保法制で旧社会党系議員の発言力が増しており、保守系と正面衝突すれば分裂もないとは言えない。岡田は党内分裂を避けつつ、政府を追及するという“また裂き”に遭っているのが実情なのである。したがって、腰は定まらず、安保法制はその意味からも勝負が付きつつあると言ってもよい。
 

しかし反安倍派は、河野洋平が14日、中国首相・李克強と会談するが、驚いたことにこの会談に同行している沖縄県知事・翁長雄志が同席する。東シナ海で傍若無人の振る舞いをしてる中国首相の意図は日本分断にあることは間違いないが、二人の会談は、いかにも政府に対する当てつけめいており、不愉快極まりない対応だ。


昔の右翼なら「売国的行為」と言うところだろうが、筆者ですら「邪道」と呼びたくなる。このように内外を巻き込んだ反対勢力の動きは今後8月の首相談話までの間、様々な形で噴出すると政府・与党首脳は覚悟しておいた方がいい。


テンションが飽和状態に達すると、左右両翼の跳ね上がり的な暴力行為や、安保闘争のように死傷者が出る可能性も排除できず、安倍は重心を低く保って言動に注意した方がよい。こうした不測の事態が邪魔をしない限り、結局8月初旬には安保法制は実現する見通しだろう。

      <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)
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