2015年04月29日

◆つつじとさつき

渡部 亮次郎



今は都立猿江恩賜公園の躑躅(つつじ)の豪華さに酔っているが、私はこれでも20代の終わりごろ、三鷹で皐月(さつき)の盆栽作りに夢中になっていたことがある。

当時は花の色香よりも木が曲がりくねって生長してゆく様に魅かれた。花が終わったらすぐに剪定にかかり、薬剤散布もちゃんとやらなければ油虫が花の芯を食ってしまって咲くべき来春の花が咲かない。

だから忙しい政治記者の手には負えなくなって横浜の知り合いに全部くれてやったが、彼は手入れをし過ぎてすべてを枯らしてしまった。水のやりすぎによる根腐れ病を起こしたのかも知れない。

私に盆栽造りを奨めてくれたのは河野一郎氏の側に秘書官みたいにして付いていた藤尾正行代議士。選挙区の栃木県鹿沼まで招待してくれた上に何十鉢の皐月の盆栽を貰って下さったのである。

躑躅(ツツジ)の花には薔薇(バラ)や牡丹(ボタン)の花のような豪華さはないが、庶民的で親しみのもてる可憐さがある。そのような点にひかれてか,古くから世界各地で多くの園芸品種が育成されている。

冬にも枯れない常緑性ツツジの園芸品種は日本,落葉性ツツジの園芸品種はヨーロッパで育成されたものが多い。

日本で造られたツツジの園芸品種は、ケラマツツジからヒラドツツジ、サタツツジが、ヤマツツジからキリシマやクルメツツジなどが、マルバサツキからサツキの各園芸品種が育成されているように,日本固有の野生種を利用しての品種改良が行われてきた。

一方,ヨーロッパでは中国産、日本産やアメリカ産のジャコウツツジ,カフカス産などから各園芸品種が改良されているように,他の地域から導入されたツツジの野生種をもとに品種改良が行われている。

現在世界のツツジの園芸品種の総数は2000以上にのぼるものとみられ,栽培が容易であるため庭園用,鉢植え用として広く利用されている。

今後,より耐寒性,耐暑性の品種,あるいは花色が黄色や青色のツツジ園芸品種が育成されるならば,さらに利用されるようになるであろという。

ヒラドツツジは長崎県平戸市の旧武家屋敷の裏庭に植栽されている大型ツツジの中から選抜されたツツジとその近縁種の総称で,直径10cm前後の大輪の花をつけ,葉や樹姿も大型となり,平戸市内にある古木では高さ4m以上に達するものがある。

南九州から沖縄にかけて自生しているケラマツツジを母体に,モチツツジやキシツツジ,リュウキュウツツジが自然交雑してできたものである。

花色は紅,紫,桃,白と多彩であり,早く育つので公園や街路植栽用によく利用されている。耐寒性が弱いので利用は西日本が中心になるが,オオムラサキのような耐寒種もこの仲間に入る。


キリシマ R. obtusum Planch. は,小輪で濃紅色の花を数多く咲かせる。枝がよく伸び背の高い樹姿となるので,公園などに植え込むとたいへん美しい。

また,枝が伸びる性質を利用して,枝物として生花材料として利用されることも多い。鹿児島県の霧島山に自生するヤマツツジから江戸時代に品種選抜されたもので,日本の園芸ツツジ栽培の草分けとなった品種である。

クルメツツジは,キリシマと鹿児島県南部に自生するサタツツジを親に,江戸時代末期に久留米で品種改良されたツツジである。小輪で多花性,枝があまり伸びないのでコンパクトな樹型になり,花時には樹冠一面が花でおおわれるようになる。

花色は赤,白,桃,紫,淡紫,絞りなどと多彩で非常に派手な色彩のツツジであるため,公園や庭木としての利用が多い。大正年間にウィルソンE.H. Wilson によってアメリカに導入されて以来,ヨーロッパ,アメリカでもクルメ・アザレアの名で広く利用されている。

ミヤマキリシマ R. kiusianum Makino は九州の1000m以上の高山にだけ自生している極小型のツツジで,花の直径は2cm内外,枝は短くつまり,ツツジ類中ではもっとも小型の部類に属する。

可憐な花型とコンパクトな樹姿から小盆栽として利用される場合が多いが,耐寒性もあり庭木としても利用できる。ヨーロッパではダイヤモンド・アザレアとして近年注目をあびるようになっている。


リュウキュウツツジ R. mucronatum G. Don は日本に野生のあるキシツツジとモチツツジの間の雑種性のツツジとみられる。たいへん丈夫で,耐湿性,耐寒性があるため,江戸時代からリュウキュウツツジの名で栽培されてきた。花色は白であるが,近縁種には淡紫のもの,絞りのものもある。

皐月(サツキ 陰暦5月のこと)はツツジの仲間であるが,江戸時代からツツジと区別されてきた。花型,樹姿にそれほど差はないが,花の時期がサツキは5〜6月でツツジより際だって遅いのが特色で,サツキの名もこれにちなんでいる。

西日本各地に野生しているサツキと吐菓喇(とから)列島(九州南端から約130キロ南にある火山島群)付近に野生しているマルバサツキの交雑によって品種ができたもの。

両親の形質が対照的であるため,サツキの園芸品種は変異の幅がたいへん広く,サツキ愛好熱の高まる一つの理由になっている。

花色は紅紫,桃,白のほか,絞り花や底白花など,変化のおもしろ味があることや,樹姿,葉姿の均整がとれて美しいことから盆栽としてよく利用されている。

また,刈込みにも耐える性質をもっていることから,庭園用樹としても利用が盛んである。

ところでツツジの繁殖は一般に挿木による。常緑性ツツジはほぼ一年中挿木できるが,地温が15〜20℃の季節がいちばん早く発根する。ツツジは陽光を好むので,日当りのよい場所に植えるのがよい。

水はけが悪いと根腐れを起こしやすい。酸性土壌を好むので,植え穴にはピート,腐葉土などの有機質を多量に混入するのがよい。花芽は7〜8月に分化するので,それ以後に刈り込むと翌年の花が咲かなくなる。

剪定(せんてい)は花後すぐに行うのがよい。肥料は油かすを株の周辺の地表に置肥するのが安全で,化学肥料は根を傷めるおそれがある。ダニ,グンバイムシなどの害虫や褐斑病の発生がよくみられるので,5月から9月までは定期的に薬剤散布を行うとよい。

参考:平凡社『世界大百科事典』 2008・4・17
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