永冶ベックマン啓子
今から352年前の1690年(元禄3年)、オランダ商館付の医師として、ドイツ人エンゲルベルト・ケンプファー(Engelbert Kaempfer 1651~1716)は、シャム(タイ)を経由して日本に到着、約2年間長崎の人工の出島に滞在した。
その頃ドイツは、魔女狩りの横行する暗い時代で、身内が魔女裁判で殺されている経験を持つ。ドイツの中西部ノルトライン・ヴェストファーレン州、州都デュッセルドルフ)のレムゴーに牧師の息子として生まれ、博物学、医学、哲学、歴史、外国語など幅広く学んでいる。“ケンペル”はオランダ語になる。
当時、彼は2回江戸参勤も経験して、徳川綱吉にも謁見している。精力的に資料を集め「日本誌」が後に英語、フランス語、ドイツ語で出版され、ゲーテやカント、モンテスキュー、ヴォルテール達、ヨーロッパの知識人も多く愛読し、後の19世紀のジャポニズム(日本趣味・日本心酔)へと発展していく。
ケンプファーは、既に絶滅していると考えられていた「銀杏の木」を日本で見つけて1693年持ち帰り、ヨーロッパの学問界では、これこそ当に「生きた化石」と感動された。
銀杏は、2億5千年前から地球に存在し、地球最古の植物とも言われ、広葉樹でも針葉樹でもないが、驚異の原始の生命力を持ち、あの広島でも生き残った。
ドイツ人、フィリップ・フランツ・フォン・シーボルト(1796〜1866 ヴュルツブルグで生まれ、ミュンヘンで没す)が140年後に日本へ渡るが、ケンプファーの影響を多く受けていた。その間には、医師であり、植物学者であつた
スウエーデン人カール・ツンベルグ(1743〜1828)が出島に滞在していた。
先日、サッカー競技場・ベンツアレーナの視察の帰り、シュトウットガルトの公園で銀杏の大木に出合い、懐かしい日本人に出合ったような思いになった。ハイデルベルグの古城の庭にも、植えてある。
現在は、多くの植木屋さんで銀杏の小さな鉢植えも売られているが、Ginkgo/ ギンコーの名前でドイツ人にはアルツハイマーの医薬品として有名になっている。処方箋なしでも、薬局で誰でも購入できる。
認知症は基本的には原因不明で治療不可能と以前は考えられていたが、あくまでもこれは病気で、確かに85歳以上で多く見られるが、単なる老化現象ではなく、近い将来には治療法が確立するだろうとも考えられている。
ドイツでは40年程前から銀杏葉の抽出物の薬理作用に注目され研究が始まった。メンタルへの効果が認められ、特に脳の血行増進作用で記憶力、集中力、思考力が向上したと多くの論文が発表されている。
脳細胞の発電所と言われるミトコンドリアを活性化させるので、脳に新しいエネルギーを与える事が出来、耳鳴りや耳の雑音、めまいなどの老化現象にも良く、足の血行も良くなり、情緒も安定してバランスが取れ、ストレスをコントロールする事が可能となる。
従い、認知症の初期進行防止、進行を遅らせる効果がある事が知られている。
飲み始めて2〜3週間で効果が出始めて、6〜10週間で効果が安定する。(これは、記憶力が悪くなったと嘆いた筆者の父が呑んで見て、確証した。)
高度な技術開発で何と27段階もの製造工程を経て、銀杏葉から特殊な抽出物を獲得し、シュワーベ博士は、EGb761 R の名前 で、パテントを取得した。
120mgの小さな錠剤に続き、最近240mgの錠剤が新しく出ている。
品質が一番高く、医薬品としてドイツで認められているものは、植物性栄養素・色素成分フラボノイド群を24%以上、香り成分のギンコライド(テルペノイド)を66%以上含んでいて、アレルギー物質のギンコール酸の含有量が5ppm以下であると言う条件を満たしている。
最高の原料も、土壌開発から栽培まで独自の方法で1ヘクタールに2万5千本植えられている広大な農園を持ち、機械で緑の葉を採取して使用されている。
ギンコール酸は、湿疹や呼吸困難、下痢、腹痛、頭痛などのアレルギー症状を来たす場合があるので、5ppmと言う安全基準が設けられている。
(お茶として葉を煮詰めると、この基準以上のギンコール酸が出る事があるので注意、品質が良くないものも日本には多い)
急速に高齢化社会化している日本にこそこういう品質の高い物が必要だが、日本ではサプリメントとなるので輸入は困難。個人輸入は可能。
ながやベックマンけいこ(ミュンヘン在住) 再掲