2015年05月12日

◆「殺さない」戦争は可能か

平井 修一



20年ほど前だが、グアムで観光ネタを取材していた際に「ジャングル戦争」というのがあった。敵・味方に分かれ、制服であるジャンパー、ヘルメット、ゴーグルを装い、エアガンで撃ち合うのだが、弾に塗料が塗られており、当たれば一目瞭然になって、審判から死傷者として退場させられるのだ。

実にバカバカしいが、人気だという。皆、結構真剣に汗だらけになりながら戦うそうだ。「遊びと人間」とか「ホモルーデンス」を読むと、戦争も一種の遊び、ゲームだとある。

部谷直亮氏の論考「日中戦争を回避する秘密兵器は『電子レンジ』離島防衛を考える(第6回)」(JBプレス5/6)を読んで、「ジャングル戦争」を思い出した次第。以下、氏の論考の一部。

<高名な戦略家であるエドワード・ルトワックによれば、少子化と高齢者以外の死亡がまれになったことで、今や戦闘で生じる兵士の戦死が先進国の社会では受け入れがたいものになっていると指摘します。

要するに“病死が相次ぎ、そして子供が多いような社会”と、“高度な医療により老人しか死なず、子供が少ない社会”では、「戦死」に対する衝撃が大きく異なるということなのです。

それゆえに、先進国の社会においては、(戦争での)死傷者に対する許容度が低下しており、その戦術レベルに過ぎない、若干の死傷者の存在が、世論に重大な出来事として衝撃を与え、ひいては戦略レベルである政治に大きな影響を与えてしまうのです。

*中国でも見られる同様の傾向

このように、現代戦においては、ちょっとしたイベント、特に死傷者が世論に大きな衝撃を与え、政策決定者に変更を迫る(のです)。

実は中国もこうした傾向と無縁ではないのです。そもそも、構造的に日本以上の急激な速度で少子化が進み、ある種の言論統制下ではありながらもテレビメディアが発達し、インターネット人口は、なんと6億人を超えています。

そのために非致死性兵器が重要です。つまり、大音響や皮膚に痛みを発生させる電磁波等を使った兵器で、これによる不法に侵入してきた勢力の無力化が必須でしょう。

既に実用されているのもあれば、かなり開発が進んでいるものもありますので、以下でご紹介しましょう。

最初は、海自や海保の一部でも導入されている「LRAD」(Long RangeAcoustic Device)です。

これは要するに、耐え難い指向性の大音響で相手を撃退するというもので、イラクにおける米国の使用を皮切りに、我が国ではソマリア沖の海賊対策、捕鯨船に対するシーシェパード等で有効な成果を上げているとされます。

このLRADは、中国の海警の複数の艦艇にも装備が進んでいるとされ、対抗する意味でも、より多くの海保や海自への調達が望まれるところです。ただし、LRADは聴力障害をもたらす可能性があるので、使用が難しいでしょうし、威力として決定的ではない面があります。

こうした問題を解決できると思われるのが、マイクロウェーブ波を利用した「ADS(Active Denial System)」です。俗な言い方をすれば、「電子レンジ砲」と言うべきでしょうか。

ADSは車載型、もしくは航空機搭載型を想定しており、95ギガヘルツのマイクロウェーブ波を照射することで、紙3枚程度の皮膚下に焼けるような痛みを発生させる装置です。つまり500メートル程度の射程の電子レンジを照射することで、火傷のような錯覚を抱かせ、暴徒やテロリストを無力化するというものです。

注目すべきは、辛口の防衛問題記者を含む1万300人以上のボランティア被験者を、耐え難い痛みを発生させて無力化したにもかかわらず、健康被害を引き起こさなかったことです。

1999年、2007年に第二度の火傷を起こした以外は相手を傷つけていないことです。その意味で、より強力に(敵を)無力化でき、しかも健康被害を起こさないという観点で音響兵器よりも有効でしょう。

ただ、ADSは2010年にアフガンに短期的に配備されましたが、結局、政策担当者がタリバンのプロパガンダに利用されることを恐れ、使用されずに本国送りとなりました。その意味では、まだまだ実戦での使用は難しい面があるかもしれません。

が、ADSは、大使館警備に責任を持つ海兵隊、特に前総司令官のエイモス大将が特に熱心な推進者だったこともあり、現在もテストが継続しています。例えば、2013年9月にも、上陸用舟艇から小型ボートへの照射実験が行われ成功しており、技術的に確立しているのは事実のようです。

であるならば、我が国としては導入を検討しても良いかもしれません。少なくとも上陸した相手勢力に小銃弾を叩きこむよりは、エスカレーション防止の観点からは、はるかによい手段でしょう。

しかも、カタログスペックとしては劣るものの、中国は「Poly WB-1」という名称の同様のシステムを開発中です。対抗手段として用意しておく必要があります。少なくとも、先方と同様の非致死性装備での殴り合いの方が、非致死性装備の相手を致死性装備で叩きのめし、それをプロパガンダに利用され我が国が孤立化するよりも望ましいでしょう。

*米国は専用の部局を設けて取り組んでいる

本稿では、現在の戦略環境が、ちょっとした死傷者でさえ世論の激しい反応を生み、それが戦略レベルに大きな影響を与えてしまう構図があり、中国もそうした法則が当てはまることを指摘しました。そして、そうである以上は、非致死性兵器を導入すべきであると論じました。

ただし、あくまでも一例としてLRADや、それより望ましいものとしてADSを取り上げましたが、「これをとにかく採用すべき」というような、兵器に限った話をしたいわけではありません。

本稿の趣旨は、多様な非致死性兵器を備えておくことが、離島防衛を穏やかに解決できる一助であり、そのために様々な非致死性兵器の研究開発、海保・海自・陸自への装備、そして在来兵器との組み合わせを含めたドクトリン研究が必要だと主張するものです。

そして、それが離島防衛に際して「日中の全面的な武力衝突」を回避する大きな要素にもなりうると指摘するものです。

米国防総省では、非致死性兵器について専用の部局を設け、多種多様な「敵を傷つけずに無力化する装備」に取り組んでいます。我が国も優先的に取り組むべきではないでしょうか。

離島防衛に必要なものとは、もう少し高い烈度を前提とする装備と運用、もしくは今回指摘したような非常に低い烈度での装備や運用だと考える次第です>(以上)

まったく軍事技術はすさまじい速度で革新されている。ドローンは今や当たり前になったし、これからは鉄砲玉が敵を追いかけるのだという。「動く標的を自動追尾、『かわせない銃弾』の実験に成功 米軍」にはびっくりした。

<(CNN4/30) 米国防総省の国防高等研究計画局(DARPA)は、自動追尾機能を搭載した50口径の銃弾を、動く標的に連続して命中させる実験に成功したと発表した。

この自動追尾弾はDARPAが開発を進めているもので、50口径の銃弾に組み込んだ光センサーによって標的を追いかける仕組み。標準的なライフル銃を使用した2月の実射実験では、動いたり身をかわしたりする標的に対し、極めて高い精度で連続して銃弾を命中させることに成功したという。

DARPAが公開した映像からは、銃弾が標的を追って空中で大きく方向転換する様子が確認できる。

DARPAは声明を発表し、自動追尾弾を使えばたとえ初心者でも動く標的を狙撃できると述べた。つまりこれからは、射撃の腕前に関係なく銃弾を命中させることが可能になるわけだ。

DARPAのプロジェクト責任者は「かつて不可能と思われていたことを実証した。これを突破口に、将来はあらゆる口径の自動追尾弾を実用化できるだろう」との見解を示した>(以上)

確実に殺す致死性兵器、絶対に殺さない非致死性兵器、硬軟を使い分けての戦争。実にややこしい。

この際、ゲームで決着をつけたらどうか。勝てば係争地で3年間、施政権をGET、その後に住民投票で評価する。NONなら敗者復活で同じく3年間、施政権をGET・・・国連監視のもとにこれを繰り返していけば、そのうちに着地点が見つけられるのではないか。血が流れ、廃墟になるよりもよほどいいと思うのだが。(2015/5/7)

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