2015年05月12日

◆統合大阪は「代都」を名乗れ

佐藤 鴻全


−大阪都構想成立時のメリットと危険性−

●大阪府市統合は、犬猿の仲で同様な箱モノを作りまくった失敗を考えれば、恐らく二重行政解消によるメリットがデメリットを上回ると思われる。

●また、リニア新幹線で東京−名古屋間に後れを取れば致命傷となり、名古屋−大阪間同時開通には統合による経済力・政治力・交渉力UPが必要だろう。

●しかし、一国に「都」が二つあるのは、究極的には「国家分裂」を招きかねない。 将来大阪が首都になってもよいが、それまでは東京のバックアップ機能の充実に注力し、それに相応しい「代都」を名乗るのが適当だ。

◆大阪府市統合◆

今月17日に、橋下徹大阪市長が主導する、大阪市を解体して5つの特別区に再編する「大阪都構想」の賛否を決める、大阪市内の有権者約211万人を対象とした住民投票が投開票される。

政令指定都市の廃止を問う全国初の住民投票で、賛成票が反対票を上回れば、2017年4月に大阪市を廃止し、公選区長と区議会をそれぞれ持つ 特別区に分割することが確定する。

事前の世論調査では反対の方が上回るが、仮に賛成派が巻き返して成立した場合のメリットと危険性について以下論考する。

(なお、余談だが筆者は関西には多少の縁はあるが、大阪市民ではなく大阪都構想の当事者ではない)。

先ず、デメリットとして、特別区設置に掛かる初期費用として新庁舎の整備費やシステム改修費など約600億円掛かり、職員数の約200人増員 が必要である事などが挙げられている。

また、東京23区の住民が東京都全体の約7割を占めるのに対して、大阪市の住民は大阪府全体の約3割を占めるに過ぎず、予算の財布が同じとなり、旧大阪市の税収が大阪府全体にも使われる事に納得が行かないという意見もある。

これらは、一つ一つは尤もな事ではある。

しかし、大阪府と大阪市の関係が他の政令指定都市と道府県の関係に比べて格段の犬猿の仲であり、同様な箱モノを作りまくった失敗や、その他協調性・調整無き行政を続けてきた弊害を考えれば、恐らく二重行政解消によるメリットがデメリットを上回ると思われる。

また、2027年とされる東京−名古屋間のリニア新幹線開業に名古屋− 大阪間開業が後れを取れば、大阪および関西全体の盛衰にとって致命傷となる。

これを避け同時開通を実現するためには、統合による経済力・政治力・交渉力UPが必要だろう。

普通に考えれば、府と市が割れたままではこれらの力は生まれて来ず、JR東海や国・東京・名古屋等に対して、十分なバーゲニンングパワーを持ちえないと思われる。

◆「大阪都実現」の危険性◆

「大阪都構想」は、現下の住民投票には含まれないが、上述した府市統合と、大阪府から「大阪都」への自治体名称変更の2つの部分に分けられる。(府市統合実現を受けて、名称変更には別途国の法改正が必要。)

「大阪都」の誕生で、一国に「都」が2つ生まれる事は、究極的には将来に国家分裂を招きかねない。

上述の府市統合が奏功し大阪のパワーがUPした場合、また逆に府市統合が実現すれども例え上手く機能せず大阪が衰退した場合も、「大阪都」の名称は大阪人および関西人の心理の中に健全な自立性を超えて、東京に対する過剰な対抗意識と日本国に対する帰属意識の希薄化を招くだろう。

「国家分裂」とは我ながら如何にも極端な表現だが、こうした大阪人・関西人の自画像・アイデンティティの隙を突いて他国が経済力・その他の力を駆使し策略を巡らして来た場合に、国家としての足並みの乱れは十分に起こり得るだろう。

現に沖縄に於ける中国の関与を見れば、筆者は究極の形も可能性無きとはしない。

「大阪都構想」は、橋下徹氏の情念の中から湧き出たものである事は衆目の認める所だ。

その情念には、関西人である事を含め氏の来歴に由来する様々なものが混在していると思われる。

よくも悪くも凡そ人は、情念が無ければ大きな事は成し遂げられない事は確かではある。

橋下氏が「大阪都」の名称にどの程度の拘りを持っているのかは、正直よく分からない。

住民投票のため、分かり易くするためと大阪人の心を擽る単なる看板として使っているだけかも知れない。

また、住民投票の結果、大阪府市統合が実現したとしても、「大阪都」への名称変更の法改正が国会で通る事は現時点では考え難い。

しかし、橋下氏の属する維新の党が国政に於いて、例えば有事法制賛成とバーター取引で自民党に「大阪都」を飲ませた場合に、実現してしまう可能性はある。

橋下氏は、最近の討論会や演説で、大阪を日本の2つ目のエンジンとしようと呼び掛けている。

大阪を東京が大災害に襲われた場合のバックアップ機能にしようとも主張している。

これは、特に富士山噴火や大震災の可能性が指摘される昨今、国家の存続に資する不可欠な考えだ。

将来、大阪が東京に代わって首都になってもよいし、上述の大災害の蓋然性 を考えれば、その可能性は決して絵空事ではない。

しかし、それまでは東京のバックアップ機能充実に注力し、大阪はそれに即した自画像・アイデンティティを持つべきで、筆者はそれに相応しい「代都」を名乗るのが適当だと考える。

橋下氏が主張する「日本をツインエンジン体制とする」事が、もし国家分裂をもたらすものなら、我々国民は全力でこれを潰さなければならない。

橋下氏の真意を問う。

◆◆ <補足> ◆◆

なお、別途橋下氏は都道府県を廃止して道州制を導入する事を主張しており、氏の経済ブレーンである元財務官僚で経済学者の高橋洋一氏は、消費税の道州税化と道州毎の税率選択を提唱している。

これについて、筆者は地域の主体性と広域行政の必要性には同意しつつも、それは市町村の基礎自治体の財源・権限強化と広域調整機能の強化によって行うべきだと考える。

都道府県を廃止して道州制を導入した場合、地域への帰属意識は分裂混乱すれども道州に収束するのは難しいし、仮に都道府県を残して道州制を導入した場合、地方自治が3階建てとなってしまい屋上屋を重ねる結果に終わる。

また、道州制によって生まれる国に対する強力な遠心力は、特に大震災や他国からの侵略を含む有事の際に弊害をもたらすだろう。

筆者は、地方自治と国政の関係のデザインには、遠心力と求心力のバランス・適正な相互牽制機能構築の視点が不可欠と考える。

なお、消費税の道州税化と道州毎の税率選択は、EU各国間での輸出入手続きに準じた事務が不可欠であり、膨大な行政コストと民間負担をもたらす。

高橋洋一氏には、これらを踏まえた自説精査を求めたい。


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