2015年06月05日

◆誰しもが納得する談話を

加地 伸行 


安倍晋三首相閣下。近く御(ご)発表予定の戦後70年談話案は、目下、鋭意御検討中と存じます。

就きましては、老生、一案を本紙を通じまして献呈申しあげます。民間草莽(そうもう)の身の粗文でありますが、御高覧を切望いたしております。

草案の方針は2点。第一点は国民の誰もが納得すること。

いわゆる右も左も老いも若きも男性も女性も、誰しも(あえて言えば、広く中韓さえも)が納得する文章にすることである。もちろん、村山談話、河野談話を越えてである。これは至難の業(わざ)である。

そこで、老生、熟考の末、結論を得た。すなわち、あえて日本国憲法の前文から文章を採(と)り、それを踏むことにしたのである。

改憲論争はあるが、それは近い将来の別の問題。現下では、日本国憲法という〈国憲を重んじ国法に遵(したが)う〉(教育勅語=ちょくご=のことば)ことに対して、誰しもが同意する。少なくとも単に否定することはできない。とすれば、条文は別として、前文を踏むのは妥当である。ただし、必要なことばを加えた。その箇所は傍線付きで印字してあるので注意されたい。

第二点は東洋的格調が漂うこと。となると、結びは、東北アジア儒教文化圏に共通の古典を引用すべきであろう。

例えば、『論語』八●(はちいつ)篇にある逸話。過ちを犯した弟子に対して、孔子はこう諭(さと)した。

「できたこと(成事=せいじ)はしかたがない。すんだこと(遂事=すいじ)は注意しない(叱らない)。過去(既往=きおう)はとがめない」と。

これは表現を3度変えて温かく諭した、心に響くことばである。中韓の心ある人ならば、必ず受けとめうるであろう。

以下、その草案である。

日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたって 自由のもたらす恵沢を確保し、自衛を除き、政府の行為によって再び戦争が起ること のないようにすることを決意し、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇 高な理想を深く自覚するのあっ
て、平和を愛する近隣諸国民の公正と信義を信頼し て、われらの安全と生存を保持しようと決意した。

われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思う。

また、われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認し、かつ、いずれの国家も、自国のこと のみに専念して他国を無視してはならないのであって、政治道徳の法則は、普遍的な ものであり、この法則に従うことは、自国の主張を維持し、他国と対等関係に立と うとする各国の責務であると信ずる。

日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成いたしたい。

『論語』に曰(いわ)く、「成事は説(と)かず。遂事は諫(いさ)めず。既往は咎(とが)めず」と。
 
●=にんべんに分の刀を月に

(かぢ のぶゆき 立命館大フェロー)

産経ニュース【古典個展】2015.5.31
              (採録:松本市 久保田 康文さん)

        
          

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