2015年06月06日

◆赤の広場で 届け「お客さまの声」

黒川 信雄



「その話、“お客さまの声”に書いてもらえませんか?」

若い男性客室乗務員は私にそう言った。出張から帰任する際の飛行機の中での出来事だ。

あるロシア系の航空会社を利用したが、乗務員の少なさに驚いた。エコノミークラスでは130人超の乗客に、わずか2人で対応していた。食事の配膳は当然遅く、不満げな客もいたが、20歳前後の若い男性乗務員と、少し年上の女性乗務員は黙々と作業を続けていた。

水をもらいに行った際、つい声を掛けたくなった。「以前から2人での業務ですか?」と聞くと、彼は「しばらく前からです」と答えた。昨年末のルーブル暴落などで海外旅行客が急減して、航空業界は一気に冷え込んでいた。

私が「少ない人数でよく対応されていますよ」と言うと、彼は思い切ったように、乗客の感想として一筆書いてほしいと頼んできたのだ。快諾し、希望に応じて日本語でも書いた。彼は日本語が書かれている様子を初めて見たといい、日本のスポーツカーが大好きだと語ってくれた。

 今のロシアの不況の原因はもっぱら政治にある。若い彼らはその被害者に思えてならなかった。あの“声”が少しでも彼らの社内評価を上げてくれていればと思った。
産経ニュース【外信コラム】2015.6.5
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