2015年06月09日

◆国民説得に通年国会で対処せよ

杉浦 正章
 



会期内衆院通過は困難に
 

学生時代憲法の講義に出ると常にガラガラだった。なぜかというと、大教授は古びたコクヨの帳面を毎年読み上げるだけだったからである。コピーが100円で出回っていたから、それがあれば期末試験などわけなくクリアできた。今度の衆院憲法審査会でもきっとその古びた帳面が使われたに違いないと思いたくなる。


とにかく憲法学者らの論議は浮き世離れしている。3人とも東・南シナ海の緊迫や北朝鮮のどう喝などはどこかの宇宙の出来事であり、憲法解釈とは関係ありませんと考えているに相違ない。国の安全保障、国民の今そこにある生命の危機など、とんと考えが及ばない。にもかかわらず権威主義の上から目線で、「法的安定性を揺るがす」「海外に戦争に行くのは憲法違反」などと違憲論を宣う。


しかし、違憲を決めることができるのは、最高裁だけである。ちゃんと憲法81条に「最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である」と書いてある。発言は自由だが、上から目線で国会に“指示”してもらっても困るのだ。


その最高裁は砂川判決で1959年「自国の存立に必要な自衛措置は認められる」とした。だから政府の集団的自衛権の限定行使に当たっての3要件も「日本の存立が脅かされ、国民の生命、自由、幸福追求の権利が根底から覆される明確な危険」を前提にしているのだ。


簡単に言えば憲法学者は憲法に「戦争が発生したら日本人は死ね」と書いてあると思っているに違いない。こういう浮き世離れした学者が戦後幅を利かせてきた。その最たるものが圧倒的に憲法学者の間で流行していた「自衛隊違憲論」だったが、古い帳面はいつの間にかこっそりと書き換えられてその記述は消されているようだ。


こういう非現実的学者は米国ではほとんど存在しないが、存在すれば「研究室で冷めたピザでも食べていろ」と言われるのがオチだ。


ところがこういう学者をこともあろうに自民党が参考人に選定したことは、大失態であり安保法制におけるプロパガンダ戦の初戦に完敗したことを物語っている。それも最初に頼んでことわられた京大名誉教授・佐藤幸治は、自民党が推薦した早大教授・長谷部恭男に勝るとも劣らない安保法制反対論者だった。


東京都内で、「憲法の、根幹を変えてしまう発想は英米独にはない。日本ではいつまでぐだぐだ言うのか、腹立たしくなる」と講演、憲法の解釈変更での安保法制の整備を違憲と主張している。要するに学者を選んだ審査会の筆頭幹事・船田元は「状況を掌握出来ないことにおいて確信犯的」であったことになる。


自民党挙げて怒りまくっているのはもっともだ。船田も浮き世離れして、今国会で何が起きているかが分かっていないのか。


4日の審査会では民主党の辻元清美が姿を見せ、あれこれささやいていたというから、敵ながらあっぱれな狙いを付けていたことになる。自民党の審査委員は「安保法制のことは全然念頭になかった」と述べるが、憲法学者の多くが安保法制違憲論であることを、知らないわけではあるまい。


「奇襲」を受けたのは「ノーテンキ審査会」(自民党幹部)であった事が最大の原因だ。辻元はしてやったりと意気揚々とテレビに出て、とうとうと「安保法制違憲論」を展開していた。


しかし「朝鮮戦争の時集団的自衛権を認めていたら日本は確実にに戦争に巻き込まれていた」と発言したことは語るに落ちた。朝鮮戦争勃発時に発足したのは警察予備隊であってまさに吉田の言う「戦力なき軍隊」だ。米国もそのような足手まといのものを当初から使う気などなかった。辻元はその場しのぎのレッテル貼り質問が多く、はったりばかりで憲法学者同様に不勉強がすぐにばれる。


それにしても、朝日の報道ぶりはどうだ。まさに鬼の首を取ったような紙面展開だ。「憲法解釈変更再び焦点」「安保法制問われる根幹」と社是にのっとるかのごとく、“反対闘争”紙面作りに余念がない。


しかし考えても見るがよい。たった3人の学者が、安保特別委とは疝気筋の憲法審査会で予定にない発言をしたからと言って、これが全てを決めるのか。法制の根幹が問われるのか。憲法学者の発言などは現状認識のない床屋談義に毛の生えたようなものだ。


その証拠に今後特別委で推進派の憲法学者が見解を述べても、大きく取り上げるマスコミはないのである。朝日を先頭にしたマスコミの偏向的“癖球”は、今後どんどん投げられると用心しておくべきだ。ただ好むと好まざるとにかかわらず、この種のレッテル貼り型安保論争では国民の誤解を解くのは容易ではあるまい。衆院で審議機関のめどとしてきた80時間の確保は不可能となりつつあり、会期内の衆院通過は困難な情勢だ。


そこで一策がある。田中角栄は「国会議員は高い給料をもらっているのだから一年中働け」と通年国会を提唱した。ここは当初予定していた8月上旬までの会期延長を一挙に大幅に伸ばすのだ。まだ強行採決で対応しようとせずに、一部野党の「数国会にまたがる論議」を考慮して、年末までか晩秋までの大幅会期延長で対応するのだ。それほどの大法案であることは間違いない。


長時間徹底的に論議して、国民に突撃ではなく、国会論議を通じて「誠意を持った説得」をするのだ。説明の果てに生じた採決強行は黙認される。審査会の失態は長期戦でカバーした方がよい。

       <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)
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