2015年06月17日

◆相互理解深化が日中を打開 A

浅野 勝人 (安保政策研究会理事長)
 

それが端的に表れるのは歴史認識の食い違いです。

おおむね「植民地支配と侵略」「戦時下の慰安婦問題」「政府首脳の靖国参拝」「領土問題」に絞られます。

日本の大学でこんなやり取りがありましたので、ご紹介します。

マスコミュ二ケーション概論の授業で、日中問題に関する討論の際、複数の女子学生から同じ趣旨の質問が出ました。

「靖国神社に祀られている戦争で犠牲になった身内や知人のご冥福をお祈りすることに対して、中国や韓国から抗議を受けるのは内政干渉ではないですか。何が問題なのか理解に苦しみます。

国の命令で仕方なく戦争に行った犠牲者です。それに侵略戦争をしたのは私たちではありませんから、私たち世代の行動を制限されるのは不愉快です」 

概ねこんな趣旨の疑問です。
 
浅野教授は次のように説明しました。
まず、何が問題なのか混同しているので整理しましょう。
@ 中国も韓国も政府首脳以外の日本国民が靖国神社に参拝することについては、ひと言も文句を言っておりません。まったく自由なのは当然のことです。
A それでは、政府首脳とは誰を指すのか整理しておきます。原則として首相、外相、内閣官房長官です。現内閣では副総理も含まれると考えられます。
B なぜ、政府首脳の公式参拝に抗議するのか、祀られている側に一連の戦争を決断、決定、推進したA級戦犯14人が合祀されているからです。日本国を代表する政府首脳が、戦争責任を負う国家指導者に手を合わせることは侵略戦争を肯定すると映るからです。
C だから、政府首脳、特に総理大臣の公式参拝には、侵略を受けた中国、韓国だけでなく、多くのアジアの国々、アジア・太平洋戦争で10万人余の戦死者を出したアメリカも強い拒否反応を示します。

D イギリスは軍人約3万人、オランダは軍人2万7.600人が戦死 ( 読売新聞、「検証 戦争責任 U」) していますから、同様の見解に立っています。日本に着任したキャロライン・ケネディ大使が、靖国神社を避けて、真っ先に無名戦士をお祀りした千鳥ヶ淵戦没者墓苑に花束をもって参拝に出向いたのは重要なシグナルです。
E 昭和天皇は、戦後、毎年、靖国参拝を続けておいででしたが、1978年に戦争責任者のA級戦犯が合祀されてからは参拝を控えられました。「戦争を肯定する」と世界各国から誤解されるのを避けるご配慮であったためと思われます。89年に即位した今上天皇も昭和天皇のご判断を踏襲されて靖国神社には参拝されておりません。

F 愛国心とは、自らの国を大切に育み、他国から侵略を受けたら、命を賭して戦う決意です。他国から侵略されたら、76才の私は鉄砲を担いで最前線で戦います。おそらく何方(どなた)の決意にも負けることはありません。とても大切なことは、愛国心の中には自国が犯した過ちを率直に認める勇気が高い位置を占めている点です。

それを重く受け止めている河野談話や村山談話が、近隣アジア諸国だけでなくアメリカやヨーロッパの国々でも至極当然な日本の歴史認識として受け入れられている理由です。

この説明に学生は全員納得して異論も質問も出ませんでした。

お互いを攻撃し合う後ろ向きの議論は、もういい打ち止めにして前へ進みましょう。これは日中双方に当てはまることです。

今年(2015年)3月に来日したドイツのメルケル首相は、安倍首相との首脳街談で「過去の総括が和解の前提になっている」と述べ「断ち切るとは過去を認めること。過去を清算して初めて未来を語ることが出来る」と指摘しました。

まるで私たちが諭されているみたいな思いがいたしました。ナチズムを全面否定し、ナチスと決別した国家指導者のことばは自信に満ちています。


理解し合うという事は、理屈や感情や立場の違いが交錯しますから、簡単なようで難しい命題です。

ちょうど男女の仲のようにすれ違うことが間々(まま)(ときどき)あります。私は、結婚して50年の金婚式を終えたのに、いまだ相互理解の途上にあって、情けなくなります。だからといって、お互いに努力を怠ってはいけません。


中国政府が直面している課題は、
徹底した汚職・腐敗の摘発と地方政府改革の抜本的断行。

一刻の猶予も許されない環境汚染の解決。

土地バブルの崩壊に伴う経済・財政・金融の構造転換。

クリーン・エネルギーの確立と食の安全。

貧富の格差、地域格差の是正と失業対策。

医療改革と高齢社会における厚生福祉政策の推進。

何れも、これまでに日本政府が取り組み、すでに解決したか、もしくは引き続き努力中の課題ばかりで、問題を共有しています。 (続く)

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