2015年06月23日

◆「安倍ちゃんの緑陰政談」がよい

杉浦 正章



国民の安保理解度を上げる方策


国会が大幅に延長され、安保法制をめぐる審議は佳境に入るが、このまま一定期間を置いて採決へと突撃したのではおそらく国民の理解度は不十分であり、政権にボディーブローとして利いてくる。これに対応するには国会論議を重ねるだけでは足りない。既存メディアに頼らない首相・安倍晋三自身による、国民の理解を広げるための直接的な語りかけが必用だ。


ここはフランクリン・ルーズベルトが1933年に開始した「炉辺談話」を踏襲する必要がある。当時普及したばかりのラジオを使って直接肉声で語りかけた大統領からの“伝達革命”は、ルーズベルトの暖かい音声と語り口により爆発的な人気を呼び、折からの世界恐慌克服への道を開いた。


現在の伝達方法は言うまでもなくFacebookかYouTubeであろう。これにより安保法制が国民の「80%」に理解されていない現状(読売世論調査)を打開する努力を誠実かつ信念を持って行うのだ。朝日の調査でも首相の説明が「丁寧ではない」が69%であり、それなら丁寧に説明すれば良いのだ。


安保法制が国民に理解されない最大の原因は単純だ。「難しい」からに他ならない。


NHKの日曜討論で視聴者からの声を紹介したが、22歳の女性は「安保環境の変化の根拠が分からない。攻め込まれているわけではないのに」と素朴な質問をしている。この程度の理解レベルの国民をを対象に、安倍自身が平易な言葉で懇切丁寧に説明するのだ。もちろん何も知らない憲法学者にも分かるように説得しなければならない。


驚いたことに慶応名誉教授の小林節は首相補佐官・礒崎陽輔とのテレビ対談で「国際法は理解している」と述べながら、国連の「集団安全保障」と集団的自衛権を混同、磯崎に「関係ない」と指摘されて「あそうなの」と言っている。


続く発言も「軍事貢献しない大国があってもいい。世界は戦争しすぎで日本は超然としていていい。平和の国があることを認識させれば良い。戦争にかかわらない。それが専守防衛だ」と宣うた。学生が喜びそうな一国平和主義の最たるものだ。


こういう俗塵を寄せ付けぬ「象牙の塔の大先生」や、「三百代言」として歴代内閣の言うがままに憲法を解釈してきた元内閣法制局長官にも分かりやすく説明して、優しく導き、国民全体の理解を高めるのが政治の基本なのである。


現在は日々の新聞を読むだけで、ひしひしと安保環境の変化が分かる国民と、分からない国民に分かれていく傾向が強まっている。分かる国民はいいが、分からない「80%」をどうするかだ。


誰でも知っているようにオバマはルーズベルトの炉辺談話方式を選挙戦に取り入れ、インターネットで直接米国民に語りかけ、圧勝に導いた。大統領就任後も炉辺談話を継続した。


翻って安倍政権の「広報」をみれば、もっぱら安倍が記者会見で説明したり、国会答弁をニュースで聞くことに主力が置かれており、これに頼っている。しかし記者会見のやりとりに国民がついて行けるかと言えば、国民のレベルで質問をしないから、まず素人には分からない。


ましてや国会の質疑は、野党の思惑が絡む上に、重箱の隅をつついて政府から「失言」を取り出したり、挑発質問を重ねて、安倍を怒らすなどの戦術を使うから、これに視聴者は目を奪われて、本論が脇に行ってしまう傾向が強い。


とりわけ記者会見の報道は、首相の「本意」と逆のコメントを付けて報道するマスコミが新聞テレビの半分以上は存在する。これはマスコミの習性であって、サソリが刺さないと思う方がおかしいのだ。


佐藤栄作が最後の記者会見で、記者を会見場から追い出してテレビに向かって独演をしたのは7年8か月の在任期間、積もり積もったマスコミへの不満の爆発であり、同情できる。


岸信介は安保条約批准をめぐって内閣記者会から会見拒否された。このためNHKを使って国民に思いを伝達しようとしたが、NHKは応じず野党との座談会にとどまった。


そこで安倍が行うべきは「攻め込まれてもいないのに」という若い女性や国民の素朴な批判に、FacebookかYouTubeを介して語りかけるのだ。この種の素朴な疑問を至急かき集めて、懇切丁寧に説明するのだ。


といってもその内容は素人が作ったようなものではいけない。電通など専門家と相談して、一般国民が理解しやすい演出の伴った完璧なものでなければならない。


かつて記者会見でチャートを使ったが、分かりやすい画像や映像を使った説明もいいだろう。言葉も平易でなければならない。佐藤は不人気で「栄ちゃんと呼ばれたい」とぼやいたが、幸い安倍は「安倍ちゃん」と呼ばれている。だから「安倍ちゃんの炉辺談話」でいくのだ。暑ければ「安倍ちゃんの緑陰政談」でもよい。


時には対談相手を選んでもいいし、オバマのやったように市民数人を前にした討論形式でも良い。FacebookやYouTubeはテレビ番組のように一過性ではない。電車の中でOLやサラリーマンが好きな時間に見ることも可能だ。


時間は長くとらず、20分くらいで数回続ければ見やすい。時期は7月の衆院採決前までに行うことが好ましいだろう。


このネットの炉辺談話は事前に記者発表して、日時を国民に知らせることを徹底する必要があることは言うまでもない。テレビのスポット広告も「安保が分かる安倍ちゃんの緑陰政談」と、どんどん活用するのだ。

      <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)
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