平井 修一
北朝鮮では数年前から交易市場が増えており、それなりに市場経済が発展しているようだ。「ドンシュ/金主」と呼ばれる新興富裕層も増えて、中にはメイドを雇う者もいるとか。最近では不動産投資も活発になっているそうだ。
北と中共は今は政治的には“政冷”だが、貿易額は減っていない。最近では北はロシアとの貿易を増やし始めたという。デイリーNK7/22「北朝鮮、市場でロシア製品が急増中…中国産を超える勢い」から。
<これまで、北朝鮮の市場を占領していた中国製品が徐々に姿を消しつつある。金正恩第一書記が進める「国産品愛用運動」が功を奏したのかと思いきや、実はロシア製品に取って変わられただけだった。
北朝鮮国内の内部情報筋は、米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)に「思った以上のスピードでロシア製品が中国製品を追い越しつつある。中国製よりも質がいいからだ」と語る。
両江道の情報筋によると、昨年12月から、ロシア製が市場に現れはじめたという。製品は、サラダ油、小麦粉、粉ミルク、砂糖、ドライフルーツ、医薬品などがメインだ。
恵山の市場では中国製の4.7リットル入りのサラダ油は中国人民元で45元(約900円)だが、ロシア製は5リットル入りで43元(約850円)。「値段も安く質もいい」と評価は高い。
小麦粉1キロは、中国製が6元(約120円)、ロシア製は2.8元(約56円)と倍以上安い。小麦粉に関しては(品質は)中国製に軍配は上がるが、味が極端に変わるわけではないとのことだ。
慈江道の内部情報筋も、「今年1月からロシア製のサラダ油、砂糖、小麦粉が出回り始めて、今では中国製を追い出してしまった」と伝える。
さらに、北朝鮮国内産のお菓子も市場から消えつつあると伝えている。かつては「リョンモッ会社」「金カップ体育人総合食料工場」製のお菓子が多く売られていたが消えてしまい、今では「松濤園総合食料工場」製のお菓子しか見られず、それすらも市場から姿を消しつつあるという。
金正恩第一書記は、国産品愛用を提唱しているが、住民は「国産品を愛用せよという中央の指示は、中国製を追い出してロシア製に入れ替えるための言い訳だったのか」と政府を非難する。
さらに、国産品がない状況について次のように皮肉を言っているという。
「国産品は自分の体ぐらいだ。すでに愛用しまくっている」>(以上)
北朝鮮は今年は干ばつで食糧不足が懸念されているというが、本当なのかどうかは分からない。国連から食糧援助を引き出すために「深刻だ」と騒いでいるのかもしれない。ちなみにできるだけ多く援助してもらおうという作戦のために、北の人口は増えてることにしているとか。
<[ソウル6/22ロイター]この100年で最悪の干ばつに見舞われ、農作物に甚大な被害が出ていると伝えられる北朝鮮。しかし、同国に芽生え始めた市場経済や農民が個人的に作る作物のおかげで、1990年代に見舞われたような壊滅的な飢きんにはならないとみられる>
北のことはよく分からないが、市場経済がしっかり根付いてきたことは確かだろう。それが政治体制変革に繋がるわけではなく、むしろ新興富裕層が増えることで経済が活性化され、国民の不満が和らぎ、独裁政権の安定化が進むかもしれない。
そうなれば南北朝鮮の統一はあり得ないことになる。中露は米軍と直接対峙を避けるために、地政学上、北朝鮮を必要としており、北は中露を両天秤にかけながら必要な物資を得ていけばよく、韓国と統一したところで体制崩壊のリスクしかないからだ。
金王朝は開国・改革開放=外資導入さえしなければ半鎖国状態でしばらくは延命するかもしれない。韓国紙・中央日報7/1/はこう報じた。
<片手に核を握った金正恩時代の北朝鮮は、もう一つの手では「経済発展」を図っている。中国で定期的に北朝鮮関係者に会う対北朝鮮消息筋は「北朝鮮が貧困で崩壊するという期待は捨てるべき」とし「もう現実的な対北朝鮮政策を探さなければいけない時」と指摘した>
手詰まりなのは北ではなく、むしろ韓国のようだ。(2015/7/23)