2015年07月28日

◆民主党、代表質問で「対案」なし露呈

杉浦 正章



首相、修正に前向き姿勢


良識の府だけに参院での政策論争の深まりを期待したが、本会議の質問を見る限り、野党の追及は衆院の二番煎じの感が濃厚だった。とりわけ民主、共産両党は、正攻法では首相・安倍晋三の理論武装の壁を突破出来ずに、もっぱら、国会外のデモをにらんでレッテル貼りと“揚げ足取り”と敵失を突く作戦に終始した。


とりわけ民主党の北沢俊美が「国民の求めているのは対案でなく廃案」と発言したが、これほど民意を愚弄した言葉遊びはない。新聞の論調、テレビの論議や世論調査で国民世論の動向が民主党に「対案」を求めていることを無視した発言でもある。


これでは先が思いやられる。今日28日からの特別委員会の論議もレベルが衆院以下の二戦級、三選級にならないように期待したいが、来年の参院選を控えて無理か。


野党の追及姿勢の焦点は、いかにデモを扇動するかに“腐心”した様子がありありと出た。


北沢発言の「対案でなく廃案」はまるでデモのキャッチフレーズだ。産経の調査で民主支持層の73・3%が「対案を提出すべきだ」と回答、自民党支持層の61・5%、公明党支持層の59・1%も対案を出すべきだとしていることを無視している。他社の調査も同様な傾向だ。


一方朝日の調査で自民党が31%の高支持率を維持しているのに対して、民主党支持率が9%にとどまり、産経に到っては民主党支持率が減少していることが何を意味するかだ。これは衆院での民主党が大向こううけする政権追及に終始し、デモを扇動したものの、肝心の民意は期待通りに動いていないことを意味している。


つまり、民主党の敵失追及姿勢が空回りしていることの左証でもある。28日付朝日によると民主党の幹部の1人が「法案の『絶対反対層』は共産党に取られ、『容認層』は自民党に取られている」とぼやいているそうだが、同幹部は実に正直だ。民主党は“もがく”わりに、効果が出ていない。


共産党の市田忠義の質問でも「憲法違反の戦争法案は明確。軍事対軍事の悪循環が最も危険」とまるで55年前の安保改正時と同様にソ連や中国側に立ったような質問を繰り返した。反論するまでもないが筆者に言わせれば「軍事対抑止」の好循環を作り出すのが安保法制だ。


それにつけても市田の質問は声やトーンまで委員長・志位和夫とそっくりなのはどうしたことか。昔全体主義を書いた小説「マリオと魔術師」(トーマスマン)を読んだことを思い出した。


答弁では維新の小野次郎の質問に対して安倍が「衆院での修正協議は共通の理解を得られた。協議は継続される。良い結論を出すために、しっかり議論し可能な限り一致点を見出すようお互い努力すべきだ」と修正に前向きな姿勢を改めて打ち出したのが注目された。


最近公明党の支持母体・創価学会婦人部を中心に党の安保法制に対する姿勢への批判が高まっており、自民党の一部にはこれが公明党の離反を招いて、廃案になりかねないとの警戒感が生じている。首相発言について自民党筋は「安倍発言は公明党への“けん制”と見られなくもない」と漏らしている。


公明離反に維新の取り込みで対処しようとする思惑があるというのだが、筆者はそうとも思えない。代表質問の公明党・荒木清寛の質問には“とげ”があるようには見えなかった。学会大事の公明党のことだから用心は必用にしても、まずこの時点での「裏切り」はあり得ないだろう。


そこで今後の展開だが、公明離反による「廃案」を論外とすれば、与党過半数による強行採決か、時間切れで60日ルールによる成立への2択しかないだろう。


まさかの解散は支持率の流れから見て、小泉の郵政解散のように圧勝というわけには行くまい。安倍はここは我慢すると思う。今後、民主党の戦略は衆院と同様に、憲法違反論に加えて失言などで敵失を突く戦術しか見出せないと言ってもよい。


そのきっかけにしたいのが、首相補佐官・磯崎陽輔の「法的安定性は関係ない」発言だ。憲法解釈を軽々に変えないことが、「関係ない」と受け取られ、枝野は鬼の首でも取ったかのように「法の支配という観点から行政に携わる資格はない」と罷免を要求したが、どっちもどっち、目くそ鼻くその議論だ。


それでは「戦争法案」「徴兵制」のレッテル張りはいいのかと言いたい。新聞も枝野の声高な期待のようにまともに「罷免要求」などしていない。


こうした民主党の姿勢に対して、代表質問で自民党の山本順三が「野党各党は『戦争法案』『徴兵制につながる』などと情緒的議論に終始した。それこそが国民に法案の中身が伝わらない原因」と断定したが、見事であった。


党内対立で「対案」も出せない民主党は千載一遇の「追い風」に、帆を膨らませて快走する状況にはとてもない。

      <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)
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