2015年07月29日

◆民主の“大衆動員”違憲論争が空振り

杉浦 正章



自民、極東安保環境の激変を浮き彫り


大向こううけを狙う民主党の安保法制での“違憲プレーアップ作戦”は、前日の参院本会議質問に続いて特別委員会でも行われた。質問に立った福山哲郎は、焦点を違憲の指摘に絞るという事前の党内幹部の打ち合わせ通りに質問を展開。田中内閣当時72年の政府見解について、当時の法制局長官・吉國一郎が「集団的自衛権の権利は行使はできない」と答弁した点を取り上げ、安保法制が合憲であるとの支えにはならないと強弁した。


しかし、この質問設定には、集団的自衛権にもフルサイズの行使と限定行使があることを見過しており政府側から指摘されて、空振りに終わった。


真の安保論争でなく世論うけを狙う違憲論争でデモ動員の得点を稼ぐという邪心丸見えの民主党の作戦は、福山が横畑を「虚偽答弁だ」「辞任せよ」と激昂すればするほど、政府の冷静なる反論の妥当性が浮かび上がった。


そもそも72年の見解がなぜ出来たかというと、ベトナム戦争の最中であり、首相・佐藤栄作とこれを継いだ田中角栄は、米国からベトナム戦への軍事協力を内々求められていた。田中は、これを憲法上出来ないとして断る手段に使ったのである。


安倍が答弁で「吉國長官は国際情勢から考えて出来ないと判断した」と答えたとおりである。72年見解は「わが国は国際法上いわゆる集団的自衛権を有しているとしても、国権の発動としてこれを行使することは、憲法の容認する自衛の措置の限界をこえるものであって許されない」と集団的自衛権の行使を否定している。


以後政府の集団的自衛権の解釈は、世界各国の常識であるフルスペックの集団的自衛権の行使の否定となった。しかし安倍内閣は昨年7月1日の閣議で極めて限定された形の集団的自衛権の行使を可能とする閣議決定を行った。


もともと72年見解は「国際法上集団的自衛権を有していることは、主権国家である以上当然」としており、これに準拠して憲法9条に抵触しない範囲での限定行使の法制化に踏み切ったのだ。


したがって福山質問は当時の見解と現在の政府見解の違いがフルスペックであるか限定容認であるかという決定的な核心部分を無視したものである。


しかし福山は横畑が「72年当時は集団的自衛権の限定的行使を考える人がいなかった」と説明しても頑迷に受け入れない。安倍が「国際環境の変化を考え、行使できる集団的自衛権の概念がある」と述べても、認めず、当初の幹部会の“作戦”どおりに執拗なまでに延々と神学論争にもならない主張を繰り返した。


狙いは何処にあるかと言えば、紛れもなく「大向こううけ」である。国会質問は新聞報道でも、テレビでも、たとえ質問者の質問内容が荒唐無稽(むけい)であっても、その発言はそのまま報道される。視聴者や読者は民主党の指摘が正しいかどうかは判断する能力を持ち合わせないまま、決めつけ発言に合点してしまう傾向がある。


これを利用しようというのが民主党のやり口だ。しかし、時がたつにつれて、理解が深まるのは、安保条約改定と同じだ。安保問題は分かるまでに時間がかかるのだ。国の安全保障に無知なる憲法学者の主張が「曲学阿世」なら、福山質問は「曲政阿世」に他ならない。


憲法違反論にここまでこだわるのは、安保論争を行えば党内は、元国家戦略相・前原誠司など右派が基本的に集団的自衛権の行使容認論であり、分裂を恐れれば憲法違反問題しか追及のより所がないからであろう。本来なら対案を出して論争を挑めば説得力も一段と増すが、対案作成能力はなく、党内左派はこれを許さない。


一方で自民党のひげの隊長・佐藤正久の質問は、独特の明るさで極東の安全保障環境の激変を浮き彫りにした。政府側の答弁も従来国名を名指しで「脅威」を指摘することに及び腰であったが、安保法制がなぜ必用かの論拠の具体的明示に方向転換した。


とりわけ佐藤と防衛相・中谷元との、おそらく事前調整済みのやりとりで、微に入り細をうがって中国と北朝鮮の軍事展開の現状を説明した。中谷は「中国は海洋での活動の質、量を急速に拡大しており、非常に危険だ」と言い切り、プラットホームの軍事転用の可能性が強いことを明らかにした。


また外相・岸田文男は北朝鮮情勢について「北の指導者はこれまでとは違う。自分の叔父を処刑している」とあえて金正恩の「異常性格」に言及、核ミサイル攻撃の可能性もちゅうちょなく発言した。


安倍は北からの防衛について「日米ともイージス艦を日本海に配備してデータリンクが可能だ。その一角が北に崩されると防衛に穴が開く。集団的自衛権の行使はわが国を守るためであり、40年前の政府解釈になかった条件に必然的に直面している」と述べ、環境激変に応じた抑止力の必要を強調した。


安保法制の根拠の明示に踏み切ったこうした政府の姿勢は、民主、共産両党などの卑劣なる「戦争法案」「徴兵制」などのレッテル貼りに対抗するものであり、時間はかかるが必ず有効に作用するだろう。

     <今朝のニュース解説から抜粋>  (政治評論家)
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