Andy Chang
7月19日、国民党の党大会で総統選挙に立候補した立法院副議長・洪秀柱がたったの5秒でシャンシャン拍手で正式に国民党総統候補となった。総統選挙の候補者選びは重大事項なのに全体拍手で通ったとは中共独裁政権の選挙に似ている。国民党にしてみれば他に候
補者が居ないから拍手通したのだが、洪秀柱では勝てないと全員が思っているのに他の候補者がいないとは情けない。
この結果で台湾の次期総統は民進党の蔡英文と國民黨の洪秀柱のどちらが勝っても女性総統が誕生するのは間違いないと各国のメディが報道した。
●台湾の政党の色分け
アメリカでは政党の分別を動物で表し、民主党は驢馬、共和党は象党色で代表される。台湾の二大政党の政争は「藍緑之争」とも呼ぶ。国民党は親中路線で藍または濃紺が代表色で、民進党は独立路線で緑色が代表色である。政党に属していない一般人でも個人の政治観点によって色分けする。
また親中派でも濃紺色の深藍と空色の浅藍、独立派には濃緑(深緑)と新緑色(浅緑)と4種の区別をつけている。
その他の政党にも色分けがあり、親民党は橙色、新党は黄色、台聯党はベージュ色である。台湾は主として国民党と民進党の二大政党だから、小政党の色分けには深浅の区別はない。つまり台湾の政治は統一と独立の選択で、藍緑之争が主題である。
赤色は共産主義の色だから使わない。しかし国民党は台湾で最大政党だから常に紺色を使うが、統一路線を表すため、長年使っている国民党員の紺色のヴェストに赤い襟をつけていた。つまり國民黨は「隠れ共産主義」である。
●空色を使った国民党
今回の国民党大会で特に目立ったのは、国民党が従来の濃紺色を捨てて党員一同が空色のシャツを着ていたことだ。つまり国民党は選挙に際し従来の親中路線を隠して中間路線を表す空色(浅藍)を使うことにしたのである。これは画期的な変化である。
これまで台湾の選挙で国民党は優勢だったから一貫して濃紺色で過ごしてきた。ところが去年11月の市町村選挙で惨敗してから台湾人の独立意識が強くなり、今回の選挙で親中路線の濃紺を使えばまた惨敗すると予想されるから空色を使うのである。
しかも國民黨候補の洪秀柱は強硬な親中派であり、小粒な唐辛子と呼ばれる刺激的発言や失言が多く、最近中華民国を無視した発言もあったので党内の人気もイマイチである。民意調査では蔡英文に20%以上の大差をつけられている。国民党が中間路線の空色を使う
のは無党派の選民の票に期待しているわけだ。濃紺から空色への変化は統一意識を隠すためである。
馬英九が総統になってから強引に中国との統一を推進してきたが、去年のヒマワリ学生運動と市町村選挙に敗北してようやく台湾人の反中国意識が明確になり、中国側も台湾併呑を隠すようになった。
中国の南シナ海や尖閣諸島付近での暴挙が相次いで報道され、台湾人民の独立意識が高まった。だから国民党は今回の選挙に空色を使うことにしたのである。
●青緑色を使った民進党
民進党も中間色と称して青緑色を使ったことがある。2007年に民進黨の総統候補者となった謝長廷は、青緑色のジャケットと三角形の青緑色の旗を使って選挙に乗り出し台湾人の反感を買った。緑の政党を代表する候補者が緑でも藍でもない色を使ったからである。
この時私は「紅組と白組が競争している運動会で、一方の隊長が赤でも白でもないピンクの旗を掲げて出たら、観衆は誰に応援すればよいのか」という記事を書いた。
国民党が濃紺でなく青色を使うのは同色系統だから理解できるが、緑の代表が新緑色ではない青緑色を使うのは外道である。また民進黨の中間路線は台湾人民に不評で民進党に批判的な人が多いのも当然である。
それでも謝長廷は中間路線を捨てず、数年前は相手に招待もされずのこのこと中国を訪問して習近平に逢おうとしたが相手にされなかった。謝長廷は中国に朝貢したに等しい。こんな輩が民進党の幹部に何人も居るから人民は民進党を信用しないのだ。
●独立派と合作を渋る民進党
民進党は正統な緑色政党ではないと言う人がいる。藍緑闘争とは統一を独立の闘争であるが民進黨は独立を言わなくなったから緑色政党と言えない。独立を主張しないでも民進党は人民を代表しているのかと疑問を持つ人は多い。蔡英文は現状維持を主張しているから
独立は主張していない。しかし現状維持はアメリカの主張であり国民党も(別の意味で)現状維持を主張している。独立を主張すればアメリカの支持は得られないから独立派は候補者を出せないのだ。
独立願望の人民にしてみれば民進党が政権を取る方が国民党よりましだと思う。しかし民進党が政権をとっても現状維持でば独立はできないし、民進党がやがて独立を推進するかも疑問である。民進党の内部には謝長廷のような中国の属国になる野心を抱いている人が
いるのだから、安心できない。
今回の選挙で大切なのは誰が総統に当選するかより、民進党派と独立派の連合が立法院(国会)で過半数を取ること、過半数を取れなければ蔡英文が当選してもレイムダックになる。
民進党は過半数を取るだけの候補者が居ないで苦労している。そこで独立派の第三党連合ができて、代表的人物である游錫コン氏が民進党の困難な選挙区に候補者を出そうと提案した。游錫コンは元民
進党の幹部で誠実で知られた人物である。彼の提案は独立派が民進党の候補と争うのでなく、民進党が困難な選挙区を「譲ってくれ」と提案しただけなのに民進党は合作を渋っている。このような民進党の狭量と傲慢が人民の支持を失う結果となっている。
●統一と独立と現状維持
国民党は「92共識」と呼ぶ中国と中華民国の現状を続ける政策を取る。民進党は(アメリカの支持のもとに)台湾当局が中国とは違う政府を維持する政策である。そして台湾人民は選挙で国会を制した政権が独立を推進ることを願っている。
現状維持は暫定的なものでしかない。民進党の中間路線は台湾が現状維持で満足するが、中国は台湾併呑を主張し、台湾独立も中華民国との共存も反対である。統一と独立は共存しない。
現状維持は永続しない。いつかは統一と独立の闘争が起きる。独立はアメリカの援助が必要だが、アメリカは台湾人の独立運動に参与しない。台湾人民の覚醒と努力が最重要である。
25[AC論説] No.551 (2015/07)