2015年08月09日

◆自民党は河野洋平氏の国会招致を

阿比留 瑠比


自民党の「日本の名誉と信頼を回復するための特命委員会」(中曽根弘文委員長)が7月28日、河野洋平元衆院議長が宮沢喜一内閣の官房長官当時に慰安婦問題に関して行った発言を、「重大な問題」だと指摘する提言を安倍晋三首相に提出した。

提言は、河野氏が平成5年8月、軍や官憲による慰安婦募集の強制性を認めた「河野談話」を発表した際の記者会見での次のやりとりを特に問題視している。

記者「強制連行があったという認識なのか」
河野氏「そういう事実があったと。けっこうです」

それまで政府内では「強制連行が行われたことを示す資料はない」との認識が共有されており、河野談話にも強制連行という言葉は出てこない。にもかかわらず、河野氏はその一線をなぜか踏み越え、強制連行を認めてしまったのだ。

提言はこの事実関係を踏まえた上で、河野氏の発言についてこう結論づけた。

「あたかも強制連行があったかのような事実に反する認識を、韓国をはじめ国際社会に広めた大きな原因になったと言わざるを得ず、重大な問題である」

この自民党の指摘は重い意味を持つ。なぜなら、河野談話発表時の河野氏は、官房長官であると同時に現職の自民党総裁でもあったからだ。自民党は、自党の過去のトップによる「大失敗」(政府高官)が現在に至るまで大きな禍根を残していることを、公的に認めて表明したことになる。

そうであるならば、けじめを付けるために、自民党が率先して河野氏を国会に呼んで事実関係を証言させるべきだろう。何かの意図があって強制連行を認めたのか、あるいは単に口がすべったのか−。

安倍首相も提言を受け取り、中曽根氏らにこう述べている。

「提言をしっかり受け止める。誤った点は直さなければならない」

もちろん、参考人招致を受けるかどうかは河野氏の自由だが、まさか逃げることはあるまい。河野氏は7月22、23両日付の朝日新聞朝刊ではロングインタビューに答えて健在ぶりを誇示しており、国会に出てこられない理由はないはずである。

河野氏は、23日付朝日では、現在の自民党における安全保障論議のあり方や、安保関連法案を批判していた。

「私の現役時代、怖い先輩が多くいました。大平正芳、宮沢喜一、伊東正義、後藤田正晴−−。彼らは、戦争でギリギリの場面を見たり体験したりした世代です。彼らには譲れぬ一線がありました。(中略)当時と比べると、現在の議論はいかにも軽く感じます」

現在78歳の河野氏は、終戦時にはまだ8歳だった。そこで、さらに年配のハト派政治家らの名前を持ちだして自己正当化を図ったのかもしれない。

自民党の中堅・若手議員の現実的な安保論議について、「戦争を知る世代として言うが」という反論しにくい一言で封じ込めてきた現在89歳の野中広務元官房長官の手法と、どこか似ている。

そんなことを考えていたらその数日後、安保関連法案に賛成する95歳の女性読者からはがきが届いた。そこにはこうしたためられていた。

「私は戦前、戦中、戦後とずっと身にしみて国家のあり方を経験してまいりました。『国の守り』は必要です。『戦争』と『防備』(の違い)をはっきり認識してほしい。戦争を知らない頭でっかちの偉いさんには困ったものですね。まったく」

必ずしも河野氏らを指して書いたものではないのだろうが、河野氏に読ませたいものだと思った。(論説委員兼政治部編集委員)産経ニュース【阿比留瑠比の視線】15.8.3



この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。


×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。